私道トラブルの対処法|知っておきたい通行権や私道の権利

2021年11月18日
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私道トラブルの対処法|知っておきたい通行権や私道の権利

神戸市が公開している『令和元年 建築着工統計調査』によると、2019年中に神戸市内で着工された住宅の総数は8440件でした。その内訳は、一戸建てが3156件、長屋建てが378件、共同住宅が4906件となっています。

一戸建て住宅などの不動産を購入する際に注意したいのが、周辺の道路が私道というケースです。私道は公道とは異なり、他者の所有権等の権利が及んでおり、通行などを巡ってトラブルが生じるリスクがあります。

万が一、私道を巡るトラブルに巻き込まれてしまった場合は、お早めに弁護士へご相談ください。この記事では、私道トラブルの対処法について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、公道と私道の違いとは?

道路には、大きく分けて「公道」(道路法上の「道路」)と「私道」の2種類があります。

両者の違いは、所有者が誰であるかという点です。それに伴って、通行が認められている人の範囲にも違いがあります。

  1. (1)所有者の違い

    公道を所有しているのは、国や地方公共団体です。たとえば、国道は国、県道は県、市道は市が、それぞれ所有しています。
    これに対して私道の多くは、個人や民間の団体が所有しています。

    一団体や個人の私有地が、道路(私道)として使用されるに至る経緯はさまざまです。
    単に、事実上道路として使用されているだけの場合もあれば、位置指定道路などのように建物を建築する際に、建築基準法との関係で道路として取り扱われている場合もあります(建築基準法第42条第1項第2号、第5号)。

  2. (2)公道は誰でも通れるが、私道の通行は原則として許可が必要

    公道については、一般の交通のために使用することを目的としているので、基本的には誰でも通行することが認められています。
    一方私道は、あくまでも民間の個人や団体の所有物であるため、所有者に許可された人以外は基本的に通行できません。

2、私道に関する代表的なトラブル例

前述したように、私道は公道とは異なり、誰でも自由に通行できるわけではありません。そのため、さまざまなトラブルの要因になり得ます。
私道に関連して生じることが多いトラブルの代表例をご紹介します。

  1. (1)所有者が私道の通行を妨げている

    私道上に、所有者が車を停めたり、バリケードのようなものを設けたりして、他の人の通行を妨げるケースがあります。これまでは通行できていたのに、ある日突然所有者が通行を妨害し始めたという場合は、所有者と通行人の間でトラブルになる可能性があるでしょう。

    私道は民間の団体や個人の所有物なので、基本的には所有者や権利者(以下「権利者等」と言います。)が自由に利用することができ、誰に通行を認めるかも所有者等が決めることができるのが原則です。

    ただし、私道が建築基準法上の道路に該当する場合は、私道上に建築物や擁壁を突き出して建築・築造してはならないとされています(建築基準法第44条第1項)。

    また、次のようなケースでは、通行人に私道の通行権が認められる可能性があります
    通行権を有する者は、所有者等に対して、私道の通行を妨げないように請求することが可能です。

    • 公道に通じない土地、いわゆる袋地の所有者が、公道に至るため必要最小限の範囲でその袋地を囲んでいる他の土地を通行する場合
    • 所有者等と通行人に間の契約により、通行地役権その他の通行権が設定されている場合
    • 通行人が長年私道を通行しており、所有者もその事実を認識しているなど、黙示に通行権が設定されたと認められる事情がある場合
    • 通行人が、私道を通行しなければ日常生活に支障を来す一方で、通行を認めることにより所有者の被る損害が軽微である場合
    • など
  2. (2)建物新築時に、所有者が私道の通行や掘削を認めない

    マイホームの新築などを計画する場合、完成する建物に上下水道やガス配管などを引き込むための掘削工事等が必要となります。

    建物敷地が公道に面している場合には、行政の許可を得て公道部分を掘削すればよいでしょう。しかし、建物敷地が私道に面している場合には、工事に伴う通行や掘削等につき、原則として私道所有者等の許可を得る必要があります

    私道所有者等にとっては、私道の掘削等によって被る損害はほとんどないケースが大半です。
    しかし、なかには私道の掘削を許可しなければ建物を建てることができないという弱みに付け込み、許可を出す条件として高額の金銭を要求するケースや、工事の騒音などを理由に工事を拒否するケースなどがあります。

    所有者等の承諾を得ないままに掘削を行うことが、法律上可能な場合もありますが、私道所有者等とのトラブルはできれば避けたいところです。
    そのため、マイホーム等の敷地を購入する段階で、私道に関するトラブルが発生するリスクがないかどうか、よく検証しておくべきでしょう。

3、私道の通行トラブルは警察の管轄外

私道に関する通行トラブルが発生した場合、警察に介入してもらって解決しようと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、暴力沙汰などの例外的場合を除いて、私道のトラブルに警察が介入する可能性は低いと考えられます。

  1. (1)私道に道路交通法は適用されない

    私道に所有者の車が停まっていて通行できないというのは、私道に関するトラブルのもっとも典型的なパターンです。この場合、駐車違反で取り締まってほしいと考えるかもしれませんが、私道に道路交通法は適用されません。

    道路交通法の適用対象は、次の通りです。

    【道路交通法 第2条第1項第1号】
    • 道路法に規定する道路
    • 道路運送法に規定する自動車道
    • 一般の交通の用に供するその他の場所


    これらはすべて「公道」であり、一般の交通用として扱われない私道については対象外です。

    駐車違反などは道路交通法により取り締まられます。私道に道路交通法が適用されない以上、私道に車を停めている所有者等を取り締まることはできないのです。

  2. (2)私道トラブルは民事上の問題|当事者同士で解決するしかない

    私道に関するトラブルは、『私道を自由に管理・処分できる所有者等』と『私道の通行について利益を有する通行人』の間で発生する権利の衝突であると整理できます

    権利同士の対立は、刑法によって裁かれるべきものではなく、民事上の手続きによって解決されるべきものです。
    警察は『民事不介入』の姿勢をとっているため、私道に関するトラブルのように、民事上の手続きによって解決すべき問題に介入することはないと認識しておきましょう。

    もちろん、私道のトラブルに関連して、相手方から暴力を振るわれたり、脅されたりした場合には、すぐに警察へご相談ください。

4、私道トラブルに遭った場合の対処法

私道に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合は、弁護士に相談しながら、協議や法的手続きによる解決を図ることが最善といえます。

  1. (1)弁護士に相談する

    まずは、私道の通行等に関して、どのような権利を主張できるのかについて、法的な検討を行うことが大切です。検討結果によって、その後の協議や法的手続きに臨む方針が変わってきます。

    弁護士にご相談いただければ、私道の利用状況や過去の所有者とのやり取りなどに照らして、主張可能な権利内容を精査することが可能です
    トラブル解決への第一歩として、まずはお早めに弁護士へご相談ください。

  2. (2)私道所有者と協議を行う

    法的な権利関係に関する検討が済んだら、私道所有者との協議を開始しましょう。

    私道の通行などを認めてほしい旨をお願いすることになりますが、所有者から拒否されることも十分考えられます。私道を通行する必要性が高い場合には、一定の通行料の支払いを提案するなど、所有者にとって受け入れやすい条件を提示することも視野に入れて対応しましょう。

  3. (3)必要に応じて調停や訴訟を利用する

    私道の所有者がかたくなに通行などを認めないなどの場合には、民事調停や訴訟などの法的手続きを利用して、私道トラブルの解決を図りましょう。

    民事調停では、調停委員の仲介の下で、当事者間で和解の落としどころを探ります。
    これに対して訴訟では、私道に関する通行等の権利を、証拠によって立証することが必要です。

    民事調停・訴訟のいずれを選択する場合でも、準備や期日出席について煩雑な対応が求められます。有利な結果を得るためにも、弁護士のサポートを得ながら入念に準備・対応を進めることが得策です。

5、まとめ

購入した土地が他人所有の私道に接している場合などには、私道に関するトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
私道トラブルは、権利関係が不明確な場合が多いため、トラブルの解決までに時間がかかることも少なくありません。できる限りスムーズにトラブルを解決するためには、弁護士へ相談することをおすすめします。

安心した生活を取り戻すために尽力しますので、私道に関するトラブルなどにお悩みの方は、お早めにベリーベスト法律事務所 神戸オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています