離職票が届かない! 1か月たってももらえないときの対処法
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兵庫労働局が公表する「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和3年度に労働局へ寄せられた自己都合退職についての相談は1402件あったということです。退職後、雇用保険の受給手続きを行いたい場合は、離職票が必要ですが、会社が発行する書類であり、一般的に離職したのち郵送などで労働者のもとへ届きます。
しかし、なかには離職票が届かない、会社が離職の交付をしてくれない、届いたが離職理由が異なっているといったトラブルも発生しています。
そこで、本コラムでは、そもそも離職票はどのように発行されるのか、そして会社から離職票が届かず手続きが進められない場合はどうするべきなのかについて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
1、離職票はなぜ必要なのか
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(1)離職票とは
離職票とは、雇用保険の失業給付を受給するときに必要な書類で、退職後に会社が交付するものです。離職票には、退職理由・過去半年間の給料・出社日などが記入されていて、この情報を元にハローワークが失業給付を決定します。
離職票がなければ失業給付金を算定することもできないため、給付を受けることができなくなってしまいます。
なお、離職票は失業手当の受給に必要な書類ですので、転職先が決まっているなどで、失業給付を受給する予定がない人には必要のない書類です。 -
(2)離職票の発行~失業給付申請までの流れ
離職票は「離職票I」と「離職票II」の2種類がありますが、失業給付に必要な書類は「離職票II」です。離職票Iは、手続きが完了したのちに発行されます。
では、離職票がどのような流れで発行されるのかを確認していきましょう。
●離職票IIの発行
退職の意思を受けた会社は、退職日または退職日前に離職票IIを発行します。離職票IIには、賃金や離職理由などが明記されています。
離職票IIは、退職する労働者が署名する欄があります。会社側から確認を求められるので、離職理由などの内容に食い違いがないかをしっかりと確認し、問題がなければ署名します。これらの手続きは、対面で行われるケースと、郵送で書類が送られてくるケースがあります。
●会社がハローワークで手続きを行う
退職者の方が署名した離職票IIを受領(じゅりょう)した会社は、ハローワークで手続きを行います。書類等に不備がなければ、離職票I(雇用保険被保険者資格喪失確認通知書)が発行されます。
●会社から離職票が郵送される
離職票Iが発行されたら、会社は直ちに離職票Iと、処理済みの離職票IIを退職者に郵送します。
●ハローワークで手続きを行う
退職者は、会社から離職票Iと離職票IIが届きしだい、ハローワークで各種手続きを行うことができます。
2、会社から離職票が届かないのは違法?
離職票は、退職者全員に発行するケースと、希望があった場合にのみ発行するケースがあり、会社ごとに対応は異なるでしょう。
ただし、退職者が会社に対して離職票を請求した場合、会社は交付する義務があります(雇用保険法 第76条3項)。
交付を拒んだ場合は、雇用保険法 第83条4項の規定により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が課せられます。
なお、退職時は離職票が不要であったものの、後日必要になった場合は、会社へ発行を求めることができます。ただし、失業給付を受け取る期間を遅らせたとしても失業給付が受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
3、離職票が届かなかったときの対処方法について
会社は、退職の翌日から10日以内に雇用保険の資格喪失手続を行わなければならないとされていますので(雇用保険法7条)、離職票が手元に届くまで、10日~2週間ほどかかるのが一般的であると言われていますが、ハローワークの混雑状況や会社側の人手不足などが理由となり、多少遅延することはあるでしょう。
そのため、離職票が届かない場合も、直ちに会社が違法だと判断するのは早計です。
しかし、3週間~1か月程度経過しても会社側から一切連絡がなく、離職票も届かない場合は次のような対処が必要になります。
●会社に確認する
まずは会社へ連絡し、離職票の交付状況を確認します。会社が必要書類をハローワークへ提出するのを忘れている、ハローワークから届いた離職票を退職者に郵送するのを忘れているなどが考えられます。
単純な人的ミスであれば、すぐに離職票が交付されるでしょう。
●郵送時の紛失がないかを確認
離職票は各種手続きに利用する重要な書類ですので、会社側が送付しているにもかかわらず離職票が届かない場合は、郵便局や運送業者へ確認を実施するのが賢明です。
●ハローワークから会社に催促してもらう
会社が離職票を交付してくれない場合は、まずはハローワークへ相談すると良いでしょう。ハローワークは事実を確認した上で、会社へ督促を行ってくれます。
●労働基準監督署に相談する
ハローワークからの督促を無視するなど、会社の誠意ある対応が見込めない場合は、労働基準監督署へ相談するのも一案です。労働基準監督署は、違反などが疑われる企業に対して、捜査を行う権限を有しています。法令に違反していることが客観的にみても明らかな場合、積極的に対応を進めてくれることが期待できます。
4、離職票の離職理由に納得がいかない場合は?
離職票を催促して、やっと交付の手続きが進んだとしても、離職票に明記される「離職理由」が事実と異なっているといったケースがあります。
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(1)離職理由とは
離職票で選択される離職理由は、①事業所の倒産等によるもの②定年によるもの③労働契約期間満了等によるもの④事業主からの働きかけによるもの⑤労働者の判断によるもの⑥その他と分けられていますが、俗に「会社都合退職」「自己都合退職」等と呼ぶこともあります。
会社都合退職は、倒産や解雇などによる退職を指すことが多く、一般的に「特定受給資格者」の対象となることから特に「会社都合」という表現がなされているようです。
一方、自己都合退職(自主退職)とは、自らの都合により退職届を提出し、退職した場合のことを指すことが多く、このような場合には残念ながら「特定受給資格者」の対象にはなりません。
では、なぜ離職理由の違いが重要になるのでしょうか。続いて、その違いを解説します。 -
(2)会社都合退職と自己都合退職の違い
会社都合退職と自己都合退職の違いは、失業保険の受給条件にあります。
失業保険を受け取るための書類である離職票上の記載が、いわゆる自己都合退職か会社都合退職かによって、失業保険の金額や期間が異なります。
具体的には、会社都合では最短支給開始日が7日後である一方、自己都合退職では給付制限期間が3か月あり、その後の支給になります。また、自己都合退職の場合、給付期間は最長でも150日間ですが、倒産や解雇による会社都合退職の場合は、最長330日間です。
このように、大きな違いが生じるので、離職理由は非常に重要と言えます。
なお、被保険者であった期間などによって受給条件は異なります。ご自身の詳細な受給条件については、ハローワークなどに確認すると良いでしょう。 -
(3)離職票の離職理由に納得できないとき
会社都合で退職したにもかかわらず、離職理由が自己都合になっているときは、会社へ申し入れを行い、訂正してもらう必要があります。
単純に、担当者の勘違いやミスであれば、すぐに修正をしてもらえるでしょう。しかし、なかには後々不当解雇として訴えられるリスクを減らすためなど、会社側の都合で意図的に自己都合退職としているケースもあります。そのような場合、会社側が素直に修正に応じる可能性は低いと考えられます。
会社へ申し入れをしても応じてもらえない場合は、ハローワークに「異議申し立て」を行うことが可能です。ただし、申し立てを行えば、必ず退職理由が変更されるわけではありません。客観的にみても、会社都合で退職したことが明白であることを証明する必要があります。そのため、事前に証拠を準備した上で申し立てを行うことが大切です。 -
(4)弁護士に相談する
会社側が、離職理由の変更に応じないケースや、そもそも離職票の交付を拒んでいるようなケースでは、弁護士へ相談することをおすすめします。
退職した会社に申し入れを行うのは、精神的なストレスが大きいものです。円満な退職ではなかった場合、なおさらでしょう。
また、ハローワークや労働基準監督署に提出する証拠の準備など、慣れない手続きは時間がかかります。せっかく新しいスタートを切ろうとしても足を引っ張られてしまい、就職活動などにも影響を及ぼす可能性があります。
弁護士であれば、状況に応じた的確な助言やサポートができるだけではなく、あなたの代理人として会社と交渉することも可能です。
不当に離職票を交付しなかったり、離職理由を改ざんしたりする会社の場合、不当解雇や未払いの残業代などの労働問題が隠れている可能性もあります。会社の対応に対して疑問や不審な点を感じた場合は、まずは弁護士へ相談するのが得策です。
5、まとめ
退職や失業保険の手続きについては複雑な点が多くあるものです。会社の言い分に押され、不利益な内容のまま手続きを進めてしまったというケースは少なくないと考えられます。しかし、失業給付は、労働者がしっかりと働いてきたことに対する補償であり、失業給付が正しく受給できるように手続きを進めるのは、会社の義務です。
離職票が発行されない、正しい離職理由が記載されておらず、修正に応じてもらえないときは、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスまでご相談ください。労働問題の対応実績が豊富な神戸オフィスの弁護士が、労働者の方を全力でサポートします。一日も早く、新しい生活をスタートさせるためにも、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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