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内定取り消しが認められる正当な理由とは? 過去の裁判例も解説

2023年02月09日
  • 労働問題
  • 内定取り消し
  • 正当な理由
内定取り消しが認められる正当な理由とは? 過去の裁判例も解説

神戸市では、令和2年3月25日に新型コロナウイルスの感染拡大の影響により内定取り消しを受けた学生を対象として、1年間の任期付き職員100人の募集を行いました。新型コロナウイルスという不可抗力によって内定を取り消された学生を救済するための試みです。

厳しい就職活動を勝ち抜き、希望する企業から採用内定通知をもらうことはとても喜ばしいことです。しかし、近年では、企業側の経営上の理由から、内定が突然取り消されてしまうという事例も増えてきています。

基本的に、内定者は、就職を希望する企業から採用内定通知をもらった後は就職活動を辞めてしまうでしょう。そのため、突然内定を取り消されてしまうと、他の就職先を見つけることも困難になり、その不利益は非常に大きなものとなります。

本コラムでは、過去の裁判例をふまえながら、内定取り消しが認められる正当な理由について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、内定の取り消しが認められる正当な理由

まず、法律において内定取り消しがどのように扱われるのか、内定取り消しの正当な理由が認められるのはどのような場合であるかについて、解説します。

  1. (1)内定取り消しとは

    「内定」は、法律上原則として、「始期付解約権留保付き労働契約」として扱われます。
    たとえば、新規卒業予定者の内定を例にすると、大学を卒業して就労を開始する時期である4月1日を労働契約の効力発生始期として、それまでに卒業できなかった場合、病気・けがにより勤務が難しくなった場合には解約することができる、という条件で労働契約が成立したものと考えられています。

    このように、内定の段階で始期付解約権留保付きという条件が付いているものの、会社と内定者との間には労働契約が成立しています。
    そのため、内定取り消しの有効性は、法的には解雇と同様の枠組みで判断されるのです

  2. (2)内定取り消しが認められる正当な理由とは

    内定取り消しは解雇に準じて考えることになりますので、解約権留保の趣旨や目的に照らして客観的合理性があり社会通念上相当と認められる場合でなければ、内定取り消しは認められません。
    企業側が内定取り消しをすることができる正当な理由としては、以下のものが挙げられます。

    ① 内定者が資格要件などを満たしていない
    企業が新規卒業予定者を採用する際には、大学や専門学校を卒業することを前提にしています。また、仕事をするにあたって特定の資格が必要な業種については、入社日までに資格を取得していることを見込んだうえで、採用しているでしょう。

    したがって、「大学や専門学校を卒業することができなかった」「資格を取得することができなかった」という事情がある場合には、企業側は内定を正当に取り消すことができるのです

    ② 内定者が傷病などによって働けなくなった
    健康診断で病気が発見されて、病気の治療のため仕事をすることができない健康状態になったことは、内定取り消しが認められる正当な理由となります。

    もっとも、傷病の程度が軽微である場合には、稼働できなくなるという程の影響はないと考えられます。そのような場合の内定取り消しは、認められない可能性が高いでしょう

    ③ 内定者が虚偽の申告をしていた
    企業は、就職希望者から提出された履歴書や面接の結果をふまえて、採用内定通知を出します。
    限られた資料から就職希望者の適性を判断する必要があるため、履歴書の最終学歴、職歴、資格などに虚偽の記載があった場合には、内定者の適性判断を誤るリスクがあります。

    採用にあたって重要な経歴について内定者が虚偽の申告をしていた場合は、内定取り消しが認められる正当な理由になります

    ④ 内定者が反社会的な行為をした
    内定者のなかには、内定後に犯罪を行って逮捕される者がいます。また、逮捕までは至らなくても、SNS上で問題発言をして炎上するなどのトラブルを起こす者もいるでしょう。

    このように内定者が反社会的な行為をし、それによって、企業のイメージを著しく毀損するなどの事情が生じた場合は、内定取り消しが認められる正当な理由となる場合があります

    ⑤ 業績悪化により整理解雇が必要になった
    内定を出した当時には予測することができなかった深刻な経営不振に陥った場合には、業績悪化を脱却するために人件費の削減の一環として、内定取り消しが行われることがあります。

    このような場合には、整理解雇に関する要件を満たす場合に限り、内定取り消しが正当に認められます

2、内定の取り消しが認められないケース

以下では、内定取り消しが認められないケースについて解説します。

  1. (1)内定者の妊娠・出産

    男女雇用機会均等法9条4項では、女性労働者が妊娠をしたことを理由とする解雇や、出産したことを理由とする出産後1年以内の解雇は無効であると定められています。
    内定取り消しは、解雇と同様に扱われることになりますので、内定者が妊娠・出産をしたことを理由に内定取り消しをすることは認められません

  2. (2)内定者が信仰している宗教

    どのような宗教を信仰するかについては、個人の自由に委ねられています
    内定後に特定の宗教を信仰していることが明らかになったとしても、それ自体は本人の能力や資質とは無関係な事情であるため、宗教を理由として内定取り消しをすることはできません。

  3. (3)水商売などのアルバイト経験

    内定者がどのようなアルバイトをしていたかについては、採用面接時に質問をすることやエントリーシートでアルバイト経験の記入欄を設けることによって明らかにすることができます。

    たとえば内定者が学生時代に水商売などのアルバイト経験をしていたという事情は、内定当時に知ることができなかった事情とはいえません。そのような理由から内定を取り消すことも、認められないと判断できるでしょう。

  4. (4)社風に合っていない

    内定者が社風に合っているかどうかについては、採用面接によって認識することができる事情です。

    そのため、内定者が社風に合うかどうかは、内定当時に知ることができなかった事情とはいえず、そのような理由から内定を取り消すことは認められません

3、内定の取り消しを巡る裁判例

以下では、採用内定の取り消しをめぐる代表的な裁判例について紹介します。

  1. (1)大日本印刷事件(最大判昭和54年7月20日)

    ① 事案の概要
    新規卒業予定者であるXは、Y社に応募して筆記試験や面接試験の後、採用内定を得ることができました。
    Xは、採用内定を得たことからそれ以降の就職活動を中止していたところ、突然Yから採用内定を取り消されてしまいました。
    Xは、Yの内定取り消しは解雇権の濫用であると主張して、雇用関係の確認などを求めて訴訟を提起したのです。

    ② 判決の内容
    裁判所は、Yの採用内定通知によって、就労始期付解約権留保付きの労働契約が成立したものと判断して、採用内定期間中に解約権を行使することができるのは、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であり、採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨や目的に照らして、客観的合理性を有し、社会通念上相当である場合に限られるとしました。
    そして、Yが採用内定を取り消した理由として挙げた、Xのグルーミー(陰気)な印象という事情は、採用内定当時にわかっていた事情であることから内定取り消しをすることができる正当な理由にはあたらないと判断したのです。

  2. (2)インフォミックス事件(東京地決平成9年10月31日)

    ① 事案の概要
    Xは、別の会社に勤務していたものの、Y社の採用面接を受けた際に、マネジャーとして入社するように強く勧められました。
    Xは、Yからのヘッドハンティングを承諾し、YからXに対して採用内定通知が送られたため、Xは当時勤めていた会社に対して退職届を提出しました。
    しかし、入社予定日の直前に、Yから業績が大きく下回ったため配属予定の部署がなくなったとして、Xの採用内定を取り消す旨の通知がなされました。
    Xは、Yの内定取り消しは解雇権の濫用であると主張して、地位保全などを求めて仮処分の申し立てをしたのです。

    ② 判決の内容
    裁判所は、採用内定を就労始期付解約権留保付きの労働契約が成立したものとしました。
    そして、企業が経営悪化などを理由にして内定を取り消すことが認められるのは、整理解雇の有効性に関する以下の要素を考慮したうえで、解約権留保の趣旨や目的に照らして、客観的合理性を有し社会通念上相当である場合に限られる、としたのです。

    • 人員削減の必要性
    • 解雇回避努力義務
    • 被解雇選定の合理性
    • 手続きの妥当性


    本件事案では、内定取り消しが入社日のわずか2週間前であったこと、既に当時勤めていた会社を退職して後戻りができない状況であったことなどから、労働者に著しく過酷な結果を強いるものであるとして、採用内定取り消しは無効と判断されました。

4、不当な理由で内定の取り消しを受けたら弁護士に相談しよう

内定先の会社から内定を取り消された場合には、まずは、弁護士に相談してください。

  1. (1)内定取り消しの有効性を判断してもらえる

    内定が出されることで、内定者と内定先の会社との間には、条件付きではあるものの労働契約が成立します。
    内定取り消しは、既に成立した労働契約を一方的に終了させるものであるため、解雇と同様に厳格な要件でその有効性が判断されることになります。

    したがって、内定先の会社から内定取り消しを受けたとしても、その理由によっては、内定取り消しの無効を争うことができる可能性もあります
    ただし、内定取り消しの有効性は、専門家でなければ判断が難しい場合もあります。
    まずは弁護士に相談して、法律の専門知識に基づいた判断を求めてください

  2. (2)内定取り消しの撤回を求めて会社と交渉をしてくれる

    内定取り消しに正当な理由がない場合には、内定先の会社に対して、内定取り消しの撤回を求めて交渉をしていくことになります。
    しかし、一個人が企業に対して交渉を進めることは困難である場合が多々あります。
    会社との交渉は、弁護士に依頼するようにしましょう

    弁護士に交渉を任せることによって、専門的な知識と経験に基づいて不利なく交渉を進めることができ、内定者自身の精神的負担も大幅に軽減されることになります。
    交渉で解決することができない場合でも、裁判などの法的手段によって解決を図ることを検討できます。
    裁判の際にも弁護士の協力は不可欠となるため、早い段階から弁護士に相談してください

5、まとめ

就職を希望する企業から内定を受けた場合、多くの人は、それ以降の就職活動を辞めてしまうことになります。
既に他の企業から内定を受けている場合でも、第1希望の企業から内定を受けることができた場合には、他の企業の内定を辞退するでしょう。
したがって、内定先から突然内定取り消しをされてしまうと、内定者には甚大な不利益が生じることになるのです。
取り消しの撤回を求めたり不利益を回避したりするために、早い段階から弁護士に相談するようにしましょう。

内定取り消しによりお困りの方は、ベリーベスト法律事務所オフィスまで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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