ゴルフ中の事故で損害賠償請求は可能? 神戸オフィスの弁護士が解説

2019年12月13日
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ゴルフ中の事故で損害賠償請求は可能? 神戸オフィスの弁護士が解説

平成23年、兵庫県のあるゴルフクラブで、カートが転倒して、3人が死傷する事故が起きました。同じ年には、大分県の別のゴルフクラブでも、同様の事故が発生しています。

このように、楽しいはずのスポーツが一転して危険な事故につながることは多々あります。ゴルフは特に硬いボールを高速で飛ばす競技のため、誰かが打ったボールが前方にいた人物にぶつかったとしたら、怪我をしてしまうのは必至です。過去にはゴルフボールが頭部にぶつかって死亡した事故事例もあるため、たかがスポーツと軽視することはできません。

冒頭のカート事故のように、プレー中以外の時間でも、何が起きるかは誰にもわからないのです。しかし、もし事故にあったとしても、誰にどのように責任を求めればいいのかわからない方が多いのではないかと思います。
そこで本コラムでは、ゴルフプレー中にほかのプレーヤーが打ったボールが自分に当たってしまった場合に、責任を問う方法について解説します。

1、ゴルフ場での事故事例

  1. (1)ゴルフという競技の基礎知識

    ゴルフは年をとっても続けられる、健康的なスポーツというイメージをお持ちの方も多いでしょう。また、趣味だけではなく、仕事の付き合いなどでも有効活用されている方もいらっしゃるかと思います。

    しかし、その一方で、ゴルフは危険なスポーツであるという側面も持っています。ゴルフは硬い球を高速で長い距離を飛ばすスポーツのため、周囲の人間にぶつかってしまえば大怪我をさせてしまうことが避けられないからです。

    このため、ゴルフをする際はマナーを守って、怪我をしないよう、十分気を付けてプレーすることが大前提となります。

  2. (2)ゴルフをプレーする上でのマナー

    前述した注意点をもとに、スポーツではルールやマナーが作られています。

    ゴルフは、基本的には前方直線の方向にボールを打ち出すスポーツです。そのため、前方に他のプレーヤーがいる場合のショットは厳禁となっています。同時に、ショットするプレーヤーの前方に出ることもまた禁止事項であり、これは双方とって当然の安全確保のマナーとなっています。

  3. (3)事故事例

    前述のマナーを守らなかったために、損害賠償命令が下された裁判例があります。

    平成25年4月、岡山地裁では、ゴルフプレー中に同伴プレーヤーが打ったボールが左目に当たって失明した事故について、裁判所は同伴プレーヤーとキャディー、さらにゴルフ場の運営会社に対して総額4400万円の賠償金の支払いを命令しました。(岡山地裁平成 25年4月5日判決)

    これは被害者が自分の打ったボールの行方を確認するために前方に出て生じた事故でしたが、加害者はその状況を知っていたにもかかわらずショットをしたという事情がありました。さらに、プレーヤーに帯同するキャディーが事故当時帯同していませんでした。キャディーは、プレー中の安全確認を行いながら必要に応じて注意喚起する義務を負っているにもかかわらず、キャディーによる注意喚起がなかったのです。そのため、キャディーとキャディーを雇用するゴルフ場運営会社の責任も問われることとなりました。

2、ゴルフ事故の損害賠償責任

取り上げた事例では、多くの関係者にそれぞれの責任が問われていました。そこで、誰がどのような責任を負うのか個別に見ていきましょう。

  1. (1)加害者の責任

    ボールを打ったプレーヤーに、まず事故の責任が求められています。

    ゴルフは、前述したように、危険と隣り合わせのスポーツです。ですから、プレーヤーには自身の技量に応じて、周囲にも最大限の注意を払ってプレーをする責任があるといえます。

  2. (2)被害者の責任

    被害者にも過失があった場合は、交通事故のように過失割合が認められて「過失相殺」となり、損害賠償額が少なくなるケースがあります。

    事例のように球を打とうとしているプレーヤーがいるのに、その前方に立って怪我をした場合などです。つまり、被害者もゴルフマナーやルールを守ってプレーしていたか、自らの危険を回避するように注意をしていたかが問題になるのです。

  3. (3)キャディーの責任

    ゴルフ場で同伴するキャディーには、競技者の安全を守る義務があります。同伴者の行動や周囲の状況を観察して注意喚起し、また、ルールやマナー違反などがあれば注意しなくてはなりません。

    これらを怠って事故が起きた場合、キャディーに対しても損害賠償を求めることができます。

  4. (4)ゴルフ場の責任

    ゴルフ場には、使用者として従業員であるキャディーを教育、監督する責任があります。また、ゴルフ場の設備や構造に問題があって事故が起きた場合は、ゴルフ場の管理責任(民法715条・使用者責任)を問うことができます。

    このように、ゴルフボールがぶつかった事故の責任は、それぞれの過失の割合に応じて負うことになります。

    なお、先述した損害賠償請求事件の岡山地裁判決では、次のように過失の割合が認定されました。

    • ボールを打ったプレーヤー(加害者)は6割
    • ボールがぶつかったプレーヤー(被害者)は3割
    • 注意喚起を怠ったキャディーは1割
    • キャディーの指導監督を怠ったゴルフ場の運営会社はキャディーと連帯して責任を負う

3、ゴルフ事故は早急に弁護士に相談を!

もし、ゴルフプレー中に他のプレーヤーが打ったボールがぶつかって怪我をしてしまった場合は、そのプレーヤーやキャディー、キャディーを雇用しているゴルフ場の運営会社に対して損害賠償請求をしていくことになります。

その際は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。費用はかかりますが、それ以上の大きなメリットがあるからです。

  1. (1)責任を正確に算定できる

    ゴルフ事故における損害賠償では、個々のプレーヤーの技量、その場における注意義務、コースの形状など、さまざまな要因を把握した上で責任の割合を算出します。しかし、加害者の保険会社が相手になると、不当に低い額を提示してくるケースもあります。

    そのような場合でも、損害賠償請求の経験が豊富な弁護士に一任することで、これらの責任を正確に算定し、できる限り補償額を減額されないように交渉することができます。

  2. (2)交渉や書類作成をすべて委任できる

    ゴルフ事故で怪我を負った場合、頻繁に外出して証拠を集めたり、書類としてまとめたり、相手方と直接交渉することは、大きな負担になるでしょう。相手方が弁護士を立てていればなおさらです。

    弁護士に依頼することで、すべての手続きを委任することが可能です。弁護士はあなたの代理人として直接交渉をしたり、事務手続きを進めたりすることができます。自分で直接交渉をするより、精神的にも楽ですし、手間もぐっと軽くなります。

  3. (3)訴訟手続きも任せられる

    示談交渉がうまくまとまらない場合は、損害賠償請求訴訟を提起することになります。自分で民事訴訟を起こすこともできますが、平日の日中に開かれる法廷に自ら出廷することは大きな負担になります。これらを弁護士に一任すれば、訴訟の代理出廷や相手との交渉などをすべて任せることができます。

    損害賠償請求事件についての知見が豊富な弁護士であれは、交渉段階から適切な対応を行うことができます。相手方にもよりますが、スムーズな早期解決に至ることが期待できるでしょう。多少費用がかかったとしても、特に相手方が弁護士を立てている場合は、早い段階であなたも弁護士に相談することをおすすめします。

4、まとめ

ゴルフ場においてプレーヤーが打ったボールがぶつかってしまった場合の、損害賠償請求について解説しました。ゴルフ事故では、プレーヤー個々の技量やキャディーの安全への配慮に不足がなかったかなど、さまざまな要因を緻密に計算して責任の割合を算定します。ご自身や近親者のみであれば、相手方との交渉や訴訟を適切に進めていくことは非常に難しいものです。事故に巻き込まれてしまったときは、早急に弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスでは、ゴルフプレー中の事故を含め、損害賠償事件の解決実績が豊富な弁護士がお悩みを解決するために尽力します。ゴルフ事故でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています