離婚慰謝料と養育費は別のもの? 離婚時に請求する方法と注意点
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令和元(2019)年の人口動態統計によると、兵庫県内における同年中の離婚件数は9143件で、そのうち神戸市内の件数は2610件でした。
離婚の際に支払われる金銭としては、「慰謝料」というイメージを強くお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、離婚の際にやり取りされる金銭の項目には、他にも財産分与・婚姻費用・養育費などがあります。これらは離婚慰謝料とは別物であり、特に養育費については、長期間にわたって支払いが行われる重要な項目です。
しかし、なかには離婚慰謝料と養育費を混同して考えてしまっているケースや、本来支払われるべき養育費が、離婚慰謝料と相殺されてしまっているケースなど、正しく支払いを受けられていない事例が見受けられます。各項目の意味や相場を正しく理解して、相手に対して適正な請求を行うことが重要です。
本コラムでは、離婚慰謝料と養育費の違いや、それぞれの金額相場・請求方法などについて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「令和元年保健統計年報」(兵庫県))
1、離婚慰謝料と養育費は別物
まずは、離婚慰謝料の基本的なポイントを確認しつつ、養育費との違いを解説します。
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(1)離婚慰謝料とは?
離婚慰謝料とは、離婚の原因を作り出した側が、相手に対して支払う金銭で、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償としての性質を持っています。
つまり、離婚慰謝料は常に発生するわけではなく、請求できるのはあくまでも配偶者に不法行為があった場合に限られます。
離婚慰謝料を請求できる具体的なケースや金額の相場については、後述します。 -
(2)養育費とは?
一方、養育費とは、子どもと同居しない非監護親が、同居する監護親(一般的には親権者)に対して支払う、子どもの養育のための費用です。
離婚により夫婦関係は消滅しても、親子関係が消滅するわけではありません。そのため、夫婦が離婚した場合であっても、民法第766条の規定により、親は子どもの監護に要する費用を分担することになります。
監護親は、子どもと一緒に生活する中で、子どもの生活費などを実際に支出することになります。一方で、非監護親は監護親に対して養育費を支払うことにより、監護親が支出している子どもの生活費などを分担します。
なお、養育費を支払う義務があるかどうかは、離婚について責に帰すべき事由があるか否かとは関係がありません。
したがって、たとえば自分の不貞行為が原因で離婚することになったとしても、監護親である場合は、相手に対して養育費を請求できます。
2、離婚慰謝料を請求できるケースと請求方法
前述したように、離婚慰謝料を請求できるのは、相手の行為が「不法行為」(民法第709条)に該当する場合に限られます。では、不法行為とは具体的にどのような行為が該当するのかをみていきましょう。
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(1)離婚慰謝料を請求できるケースの例
離婚慰謝料を請求できる典型的なケースとしては、次のような事柄が原因となり離婚に至った場合です。
- 相手の不貞行為
- 暴力や犯罪
- 相手が婚姻生活の維持に協力しない
- 合理的な理由なく、相手が長期間にわたって性交渉を拒否した など
これに対して、性格の不一致など、不法行為と評価できる具体的な行為が存在しない場合や一方に主たる責任があると言い切れない場合には、離婚慰謝料を請求することはできません。
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(2)離婚慰謝料を請求する手続き
離婚慰謝料を請求するための手続きには、主に協議・調停・訴訟の3種類があります。
① 協議
相手と離婚慰謝料について話し合い、合意の下で離婚慰謝料を支払ってもらう方法です。
離婚協議とあわせて話し合うのが一般的です。
裁判所に支払う手数料がかからず、比較的短期間で解決できるメリットがあります。
② 調停
家庭裁判所に調停を申し立てる方法です。
調停では、調停委員が間に入り話し合いを進め、最終的には調停委員会が提示する調停案に双方が同意すると、調停成立となります。当事者同士のみでの協議に比べると、第三者である調停委員の仲介があるため、冷静に話し合いをしやすい点が特徴です。
③ 訴訟
裁判所の公開法廷で当事者同士が主張・立証を戦わせ、言い渡される裁判所の判決に従って、離婚慰謝料を支払ってもらいます。
基本的には、離婚調停が不成立に終わった場合に、離婚訴訟において慰謝料の支払いが争われることになります。相手の不法行為や、自分に発生した損害額などを、証拠によって立証しなければならない点が、訴訟の難しいところです。
かかる期間も半年~1年以上と長期化する傾向にあり、根気強い対応が求められます。 -
(3)離婚慰謝料の相場
離婚慰謝料の金額に法的な決まりはなく、基本的にはお互いが合意した金額で決定することができます。
しかし、話し合いではまとまらず、調停や裁判に至った場合には、次のような要素を総合的に考慮して決定されます。- 行為の悪質性
- 精神的ショックの大きさ
- 婚姻期間の長さ
- 子どもの有無
- 不法行為者の反省の態度 など
調停や裁判において認められる慰謝料は、一般的には数十万円~500万円程度が相場であると考えられますが、実際には個々の状況に応じて判断がなされるため、ケース・バイ・ケースとなるでしょう。
3、養育費の相場と決定方法
慰謝料と同様に養育費の金額も、話し合いによって自由に決めることができます。しかし、慰謝料とは異なり、養育費の相場は裁判所が公表している「養育費算定表」を用いて算出するのが一般的です。
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(1)養育費の相場は「養育費算定表」に基づく
裁判所が公表している養育費算定表は、子どもの人数と年齢に応じて複数のパターンが用意されています。
たとえば、14歳以下の子どもが1人いる場合で、非監護親(義務者)の年収が400万円(給与)、監護親(権利者)の年収が200万円(給与)の場合、養育費の金額目安は以下のとおりです。- 子どもが満15歳になるまでの期間……2~4万円程度
- 子どもが満15歳以降の期間……4~6万円程度
ご自身のケースを確認したい場合は、ベリーベスト法律事務所で、算定表をベースにした養育費を簡単に計算できるツールをご提供しておりますので、ぜひご利用ください。
(参考:養育費計算ツール )
なお、扶養義務は未成熟子に対して生じるため、養育費の支払い終期は20歳までとするのが基本です。
ただし、養育方針などによって変更することも可能といえます。満18歳に達するまで、大学を卒業するまでなど、さまざまなパターンが考えられますが、原則として当事者間の協議によって決定し、協議がまとまらないときは裁判所がさまざまな事情を考慮して定めます。 -
(2)養育費を決定する手続き
養育費を決定するための主な手続きは、離婚慰謝料と同様に、離婚協議または離婚調停・訴訟です。
なお、離婚時に養育費を取り決めなかった場合や、離婚後に増額・減額を求めたい場合には、裁判所の養育費だけを取り扱う調停手続きを利用することができます。
ただし、離婚前の調停とは異なり、調停が不成立となった場合は訴訟ではなく非公開の「審判」手続きを通じて、裁判所が判断を行います。
4、離婚慰謝料や養育費の不払いで揉めないための対策
離婚慰謝料や養育費の支払い義務が確定しても、相手から一向に支払いが行われず、生活に困窮してしまうケースも、残念ながら一部には存在します。
離婚慰謝料や養育費の不払いによるトラブルを防ぐためのポイントを解説します。
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(1)できる限りしっかりと話し合う
不払いのリスクを抑えるためには、相手としっかりと話し合い、納得のいく落としどころを決めることがポイントです。
話し合うのがつらいからと一方的な要望だけを押し付けてしまったり、相手が納得していないまま強引に進めてしまったりするのは得策とはいえません。
しかし、離婚を決めた当事者同士が、落ち着いて話し合うのは簡単なことではないでしょう。直接交渉するのが難しい場合などは、弁護士に依頼し、代理人として交渉を進めてもらう方法をおすすめします。 -
(2)協議の場合は公正証書を作成する
調停や裁判によらず、協議のみで金額に合意ができた場合は、必ず離婚協議書を作成しましょう。また、万が一、離婚慰謝料や養育費の支払いが滞った場合に備えて、離婚協議書を公正証書化し、「強制執行認諾文言」を記載しておくことも大切です。
離婚公正証書の中で、離婚慰謝料や養育費について相手方の強制執行認諾文言を記載しておけば、もし不払いが発生した場合には、訴訟などを経ることなく、直ちに強制執行を申し立てることができます。
5、まとめ
離婚慰謝料と養育費は全く別物であり、それぞれを法的根拠にのっとって算出し、相手に対して請求することが大切です。
ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスでは、経験豊富な弁護士が離婚に関する総合的なアドバイス・サポートをご提供します。相手方に対して適正な請求を行い、より良い条件での離婚を成立させるためにも、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています