【前編】不倫相手と示談したい! 示談書の書き方や示談交渉の流れについて
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2017年に、元神戸市議会議員の男性が、ある衆議院議員の女性と不倫関係にあるとして大々的に報道されたことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか。
もし、夫(妻)に不倫されて、不倫相手と慰謝料を求めて示談をしようとする場合、どのようにすればよいでしょうか。また、示談書(誓約書)にはどのような内容を書けばよいのでしょうか。今回は、配偶者の不倫相手と示談するときの示談書の書き方や示談交渉の流れについて見ていきたいと思います。
1、不倫相手に慰謝料が請求できる理由
不倫された側は、不倫相手に慰謝料を請求することができます。しかし、そもそも慰謝料が請求できるのはなぜなのかをまずは考えてみましょう。
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(1)夫婦には貞操義務がある
婚姻関係にある男女には、双方に「貞操義務」と呼ばれる義務があります。貞操義務とは、配偶者以外の異性と肉体関係を持ってはならないという義務のことです。配偶者以外のだれかと浮気や不倫をしてしまい、浮気相手(不倫相手)と肉体関係を持ってしまった場合、貞操義務に違反した、いわゆる不貞行為をしたこととなります。
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(2)不倫は民法上の「不法行為」に
不貞行為は、民法上の離婚事由になっています(民法770条1項1号)。また、同時に「不法行為(民法709条)」にもあたります。不法行為とは、違法に相手方に損害を与える行為を言います。そのため不法行為を行うと、加害者は被害者に対してその損害を補填するために賠償責任を負うことになるのです。
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(3)不倫された側は慰謝料を請求できる
配偶者が不倫をした事実を知ると、多くの場合ショックを受けて落ち込んだり、逆に配偶者やその不倫相手に怒りをおぼえたりするでしょう。そのため、不倫された側は浮気・不倫によって精神的苦痛を受けたことを理由に、相手方に対し損害賠償としての慰謝料を請求できるのです。
男女の問題はお金で解決できる問題ではないかもしれませんが、法律上は被害者の精神的苦痛を回復させるために、金銭的な償いをもって解決するものとされています。また、不倫は「共同不法行為」にあたるため、配偶者に対しても慰謝料を請求することが可能です。
2、示談書に記載すべき項目とは
不倫相手に対して、慰謝料の支払い等を求める場合、口約束では信用できません。示談書を作成すべきでしょう。示談書のタイトルに決まりはありません。「誓約書」「合意書」「慰謝料請求書」でも良いでしょう。また、書き方にも特に決まったルールはありませんが、記載すべき項目はいくつかあります。示談書は契約書と同じ性質を持つため、作成時には誤字脱字がないように気をつけましょう。
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(1)不倫の事実
まずは、自分の夫(妻)が相手方と不倫をした事実を記します。書き方としては、「○○(不倫相手)は、××(自分)の夫(妻)である△△と既婚者であることを認識しながら平成○年○月から平成×年×月まで不貞行為に及んでいた事実を認める」などとします。
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(2)謝罪条項
謝罪条項とは、不貞行為を行ったことに対して謝罪の意を表明するために入れる内容です。具体的には、「自らの不貞行為によって××の気持ちを深く傷つけたことを謝罪する」などと入れます。
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(3)慰謝料の金額と支払方法・期限
慰謝料を支払う旨と金額、支払方法や期限を入れます。銀行振り込みを依頼する場合は、銀行名だけでなく、支店名や口座番号を入れるのを忘れないようにしましょう。金額は具体的に「示談金(または解決金)○万円」と記します。ただし、あまりに高額な金額を提示すると公序良俗に反するため無効となることがありますので注意が必要です。また、期限についても具体的に「○年○月○日までに」と指定します。
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(4)守秘義務
守秘義務とは、配偶者と不倫相手が不倫関係にあったことや、示談をしたこと及びその内容について、口外しないことを約束してもらうために入れる条項です。「不倫関係の事実や示談書に関する内容を方法の如何を問わず口外しないことを約束する」などと記しましょう。
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(5)「二度と会わない」等の約束
配偶者と不倫相手が再び不倫関係にならないよう、相手方に二度と会わないことを約束してもらうようにします。書き方としては、「××(自分の氏名)および△△(配偶者の氏名)と二度と接触しない(一切の関係を絶つ)ことを誓う」などとします。
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(6)清算条項
清算条項とは、示談書に書かれたこと以外に債権や債務は存在しないことを確認するために入れる条項のことです。後日、再び紛争が蒸し返されるなどして、相手方から金銭を請求されるトラブルを防ぐために記載します。
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(7)示談成立日と当事者の住所・氏名
最後に、「示談が成立したことの証しとして、本書を2通作成し、甲、乙各自署名押印の上、各1通ずつを保有する」などと結び、示談が成立した日と自分・相手方双方が住所や氏名を記して、捺印をします。
3、示談交渉の進め方
配偶者の不倫相手に慰謝料を求める際には、どのように示談交渉を進めていけば良いのでしょうか。ここでは、一般的な示談交渉の進め方について解説します。
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(1)証拠を集める
示談交渉を開始する前に、まずは配偶者が不倫をしていることを示す証拠を集めましょう。不倫の事実をきちんと確認しなければ、事実無根のことについて慰謝料請求をしてしまうことになりかねません。また、不倫相手がどこの誰なのかを確定させておかなければ、間違った相手に対して請求してしまうことも考えられます。配偶者が不倫相手とラブホテルに出入りしている写真や動画など確たる証拠をつかんだうえで交渉にのぞみましょう。
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(2)相手方と直接交渉する
証拠資料がそろったら、相手方にあらかじめ作成した示談書を示しながら交渉を行います。直接会って話し合いの場を持つ場合は、カフェやホテルのラウンジなど、落ち着いて話のできるところを選びましょう。居酒屋・バーなどで飲酒をしながら話し合いをするのは思わぬトラブルの原因になるため避けたほうが無難です。相手方に会いたくない場合は、不倫慰謝料を請求したい旨を記した内容証明郵便を送り、書面でやり取りをするという方法もあります。
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(3)示談書に署名・捺印をしてもらう
示談書を読んでもらい、内容について相手方が合意すれば、署名・捺印をしてもらいます。また、その後は公正証書にしておくとより確実に慰謝料を支払ってもらうことができるでしょう。
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(4)交渉がまとまらなければ調停や裁判へ
直接交渉をしても、相手方が納得できないとして署名・捺印を拒否した場合は、示談が不成立となります。そのときは「後日裁判にする」という旨を伝えてすみやかに立ち去りましょう。その後、弁護士に相談の上、裁判所での調停や裁判といった法的手段を利用することを検討します。>後編はこちら
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