不貞行為の証拠がないと慰謝料請求できない? 証拠の集め方や注意点も解説

2019年02月07日
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不貞行為の証拠がないと慰謝料請求できない? 証拠の集め方や注意点も解説

夫や妻の浮気・不倫を確信しているものの、確実な証拠となるものが手元にないというケースも少なくありません。

このような場合、「証拠が無くても慰謝料は請求できる?」、「不貞行為の証拠の集め方は?」というように、疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。

そこで、この記事では、不貞行為の証拠がないと慰謝料請求は難しいのか、不貞行為の証拠の集め方などについて解説いたします。

1、そもそも不貞行為ってなに?どこからが不貞行為になる?

不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつ」貞操義務違反のことをいいます。

  1. (1)配偶者以外の異性と肉体関係の事実があること

    不貞行為は、配偶者以外の異性と性的関係をもった場合です。
    そのため、配偶者のいる男女がSNSで頻繁にやり取りをしたり、電話をしたり、抱き合ったりしても不貞行為とはなりません。

  2. (2)婚姻関係のない男女の浮気は含まれない

    不貞行為となるのは、性交渉を行った当事者に配偶者がいる場合に限られます。
    そのため、婚姻関係にない交際相手に黙って他の異性と手を繋いだり、キスをしたり、性交渉をしたりしても不貞行為とはなりません。

  3. (3)脅迫されて肉体関係を持った場合は不貞行為にあたらない

    不貞行為は、浮気や不倫が当事者の自由な意志に基づいて行われた場合となりますので、配偶者のある者が脅迫されて、肉体関係を持った場合は不貞行為にあたりません(もっとも,脅迫によって肉体関係を持ったことの立証は難しい場合が多いと考えられます)。

2、不貞行為の証拠となり得るものは?

不貞行為の証拠となり得るのは、配偶者と浮気相手・不倫相手の間の肉体関係を裏付けるものです。たとえば、下記のようなものが証拠として有効です。

  1. (1)写真・映像

    裸の状態で抱き合っているツーショットの写真や映像など、配偶者とその浮気相手に肉体関係があることを直接示すものであることから、不貞行為の証拠となります。
    また、ラブホテルやお互いの家に出入りする写真や映像も不貞行為の証拠として有効です。

  2. (2)メール・SNSの通信記録

    たとえば、「昨夜はいちゃいちゃできて嬉しかった」などというやり取りがあった場合は、肉体関係があったことが推認されるため、不貞行為の間接的な証拠になります。

  3. (3)書面・音声テープ

    不貞行為を認める内容の書面や音声テープは、肉体関係があったことだけでなく、不貞行為自体があったことを直接示すものです。
    したがって、そのような書面や音声テープは不貞行為の証拠となります。

  4. (4)領収書

    ラブホテルの領収書は、肉体関係があったことが推認されるため、不貞行為の証拠となります。また、避妊具の領収書も不貞行為の証拠となる可能性があります。

  5. (5)第三者の証言

    「2人がラブホテルに入るのを目撃した」というような第三者の証言は、肉体関係があったことを示すものといえ、不貞行為の証拠となる可能性があります。ただし、裁判所は、第三者の証言を必ず信用する訳ではありません。

3、どうやって慰謝料を請求したらいい?

不貞行為は婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害するものです。

そこで、不貞行為を行った者に対して、不法行為責任として慰謝料を請求することができます。

  1. (1)話し合い

    慰謝料請求は必ずしも裁判や調停といった手続きによって請求する必要はなく、相手と直接交渉して請求することも可能です。

    当事者の話し合いで、不貞行為の事実の有無や慰謝料の額などに折り合いがつくのであれば、最もスピーディーかつ負担の少ない方法です。

    後に相手が翻意することも考えられますので、交渉記録や合意内容は必ず書面に残すようにしましょう。

  2. (2)内容証明郵便

    相手と直接交渉できない場合、内容証明郵便を利用して慰謝料を請求することができます。

    内容証明郵便は、「誰が、誰宛てに、いつ、どんな内容の手紙を出したのか」ということを郵便局が公的に証明してくれるものです。

    これにより、慰謝料を請求したという証拠を残すことができ、相手に行動を起こさせるプレッシャーを与えることもできます。

  3. (3)調停・裁判手続き

    話し合いや内容証明郵便で合意に至らない場合、調停や訴訟などの裁判手続きによって慰謝料を請求することになります。
    離婚を請求する場合には、いきなり訴訟を提起することはできません。必ず調停を経る必要があります。このことを、調停前置主義といいます。

4、不貞行為の証拠がないと慰謝料請求は難しい?

不貞行為の慰謝料請求の場合、不貞行為の事実を証明することができるかどうかが一番のポイントとなります。

不貞行為の事実を証明するためには、不貞行為の証拠となり得るものが必要です。
証拠がないのに慰謝料請求をした場合、慰謝料請求が認められる可能性は非常に低く、また、証拠がないまま慰謝料を請求すると、相手が怒って単なる言い争いに発展するでしょう。その後、調停や裁判に進んだとしても、証拠がなければ慰謝料を受け取れる可能性は低いと言えます。かえって相手から名誉毀損で訴えられるケースも考えられます。

このように考えると、不貞証拠の証拠がない場合は慰謝料の請求は難しく、また慰謝料請求をすべきではないということになります。

5、不貞行為の証拠の集め方や自分で集める場合の注意点

ここでは、不貞行為の証拠の集め方や自分で集める場合の注意点についてご説明いたします。

  1. (1)不貞行為の証拠の集め方

    ①探偵事務所や興信所に依頼をする
    探偵事務所や興信所に依頼する場合は、費用体系が明確であること、探偵業法に基づいた届出をしていること、悪い評判がないことなどをチェックしてから依頼するようにしましょう。ベリーベスト法律事務所にご依頼いただけた場合、これから証拠を集めたいという方には、提携先の探偵事務所をご紹介することが可能です。

    ②自分で証拠を集める
    不貞行為の証拠をご自身で集める方法もあります。
    多くのケースでは、不貞行為を行った配偶者と同居していることが考えられますので、不貞行為の証拠をつかむ機会も少なくないはずです。

    もっとも、不貞行為の証拠となり得るのはどのようなものなのかといったことや、不貞行為の証拠を集めるためにどこまでのことをやっていいのかということなど、判断が難しい場合もあります。
    ご自身で集めたい場合には、一度弁護士の無料相談を利用するなどして、アドバイスを受けた上で証拠を集めるというのもひとつの手でしょう。

  2. (2)自分で集める場合の注意点

    不貞行為の証拠を違法な手段で取得した場合、その証拠は裁判上で使うことができなくなるという可能性があります。
    特に、不貞行為の証拠を集めるときに気をつけなければならないのは、「不正アクセス禁止法違反」や「プライバシー侵害」です。

    ①不正アクセス禁止法
    他人のIDやパスワードを無断で利用し、インターネットを通じて情報を送受信するような行為を行うと、「不正アクセス禁止法」に違反する可能性があります。
    たとえば、パスワードが設定されていないLINEの中を盗み見ることは不正アクセス禁止法違反にはあたりませんが、LINEのパスワードを解除したうえでやり取りを盗み見たり、トーク履歴を自身のスマートフォンなどに転送したりすると、不正アクセス禁止法違反となる可能性があります。
    (最近のアプリは、アプリを起動した段階でデータの送受信が行われる場合もありますので注意が必要です。)

    ②プライバシー侵害
    配偶者のパソコンやスマートフォンの中の情報を無断で見る場合、「プライバシー侵害」となるおそれがあります。ただし、たまたま画面に表示されたポップアップを見ただけではプライバシーの侵害になるとはいえません。

    また、配偶者の財布の中のレシートを勝手に確認する場合や、配偶者の部屋に盗聴器を設置してその音声を記録する場合も、プライバシー侵害にあたる可能性があります。ご不安な場合は一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。

6、不倫の慰謝料相場はいくら?

浮気や不倫における慰謝料額の相場は、数十万円から300万円程度が一般的といわれています。
慰謝料額は、主につぎのような事項を総合的に判断して決められることになります。

①婚姻期間
婚姻期間の長さによって慰謝料の額が変わります。
たとえば、婚姻期間が長ければ浮気や不倫によって受ける精神的苦痛は大きいとされており、慰謝料の額が高くなるという傾向にあります。
結婚期間は5年以下であれば短く、10年以上であれば長いと一般的にはいわれていますが、個別の事情によって変わります。

②浮気・不倫による夫婦関係への影響について
配偶者の浮気・不倫が発覚し、結果として別居や離婚に至った場合は慰謝料額が高くなる傾向にあります。一方で、婚姻関係が破綻しなかったという場合には、慰謝料額は低くなることが一般的です。

③うつ病などの精神疾患を患った
浮気や不倫によってうつ病等の精神疾患を発症したという場合には、慰謝料の額は高くなる傾向にあります。

④夫婦間に未成年の子どもがいる
未成年の子供がいる場合は慰謝料の額が高くなる傾向にあります。

⑤浮気・不倫した側の支払い能力について
浮気・不倫した側の支払い能力や社会的地位によって慰謝料の額は変動します。
たとえば、不倫した側の支払い能力や社会的地位が高ければ高いほど、慰謝料の額は大きくなる傾向にあります。

⑥浮気・不倫関係の期間やその態様について
浮気や不倫関係の期間や、その態様が悪質だったかどうかによっても慰謝料の額は変わります。

7、不貞行為による慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

ここでは、浮気や不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリットについてご説明いたします。

  1. (1)適切な交渉

    弁護士であれば、適正な額で慰謝料の交渉をすることができます。
    そのため、本来請求できたはずの金額で慰謝料請求し損ねるといったことや、相手からの法的根拠のない減額の要求に応じるといったリスクを減らすことができます。

  2. (2)精神的負担の軽減

    浮気や不倫の問題では、不貞行為を行った配偶者やその相手とやり取りをする必要があり、精神的に辛い思いをすることもあります。
    弁護士に依頼すれば、相手とのやり取りは弁護士が受け持つことになるため、交渉過程で生じる精神的負担の軽減が期待できます。

  3. (3)不要なトラブル回避

    浮気や不倫の問題では当事者が感情的になりやすく、当事者間のトラブルが発生する事も少なくありません。
    弁護士が間に入ることにより、当事者間でのトラブルを回避することができ、安全かつスムーズに交渉を進めることができます。

  4. (4)早期の解決

    話し合いのもと慰謝料の金額の合意はしたものの、親権や財産分与などで話し合いが難航してしまい、なかなか解決に至らないというケースもあります。
    弁護士であれば、第三者的な立場から交渉を前に進めることができるため、問題の早期解決を期待することができます。

8、まとめ

今回は、慰謝料をどのように請求したらいいか、不貞行為の証拠がないと慰謝料請求は難しいのか、不貞行為の証拠をどのように集めたらいいのかなどについて解説いたしました。

不貞行為の慰謝料を請求するには、何よりも不貞行為の証拠を集めることが重要です。証拠がない場合には慰謝料請求が認められる可能性は非常に低くなります。慰謝料請求をしたいのに、手元に証拠がない場合は、証拠を集める段階から弁護士に相談するのもひとつの手段です。特に、ご自身では不貞行為の証拠として十分と思っていても、実際にはその証拠では不貞行為を証明できず、二の足を踏んでしまうことがあります。不貞行為の慰謝料請求をするのであれば、早期に弁護士に相談することが望ましいです。
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