未婚なら養育費を払わなくてすむ方法がある? ~認知と養育費の関係とは~

2020年04月07日
  • その他
  • 養育費
  • 払わない方法
  • 未婚
未婚なら養育費を払わなくてすむ方法がある? ~認知と養育費の関係とは~

神戸市が公表する「平成30年度 神戸市ひとり親家庭等実態調査」によると、母子家庭のうち8.6%が未婚のシングルマザーとされます。神戸市においても、未婚のシングルマザーが少なくない現状が浮き彫りになっています。

ある日突然、元交際相手から出産したことを知らされ養育費を請求されたとしたら、男性側としては戸惑い「どのように対処すべきか?」「払わなくてすむ方法はあるのか?」と悩むことでしょう。

本コラムでは、未婚の女性から養育費の請求を受けた場合、養育費を払う必要があるのか、また払わない方法があるのかについて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、未婚で養育費の支払い義務が生じるケースとは?

かつての交際相手から「あなたの子どもを産んだから養育費を払ってほしい」と言われたとしても、すべてのケースにおいて男性側に法的な養育費の支払い義務が生じるわけではありません。なぜなら、男性と子どもとの間に法律上の父子関係が生じなければ、扶養義務は生じないためです。
支払う義務が生じるのは、男性が子どもを「認知」したときにのみです。認知した場合は、法的に養育費の支払い義務が生じます。

そこで、自分が認知しなければ養育費を支払う必要はないと考えるかもしれません。しかし、認知は男性の意思に関係なく、裁判で「強制認知」することも可能です。
また法的に義務があるかという問題以前に、ご自身の子どもであることが明らかであれば父親としての責任を果たす必要が求められるでしょう。

なお相手の女性との養育費に関する契約を取り交わしたようなケースでは、認知をしているかにかかわらず、契約に基づいて支払い義務が生じることになります。

2、未婚で生まれた子の認知はどのように行われる?

未婚の男女間に生まれた子どもは、母との間には基本的に法律上の母子関係が生じます。しかし父の場合、何らかの方法で認知が認められなければ法律上の父子関係は生じません。

認知がなされると、子どもが生まれたときから法律上の父親であったことになります。また、子どもは父親が亡くなったときの法定相続人になります。
なお、一般的に養育費は、請求時以降の分を支払うのが原則です。ただし事情によっては、出生時からさかのぼって養育費を支払わなければならないと判断されることもあります。

  1. (1)任意認知

    「任意認知」は、男性が自らの意思で子どもを認知するものです。
    「任意認知」は、通常市区町村に「認知届」を提出する方法で行われます。また遺言書によって認知する方法もあります。
    女性との話し合いなどから、ご自身の子どもであることが明らかであれば「任意認知」を検討する必要があるでしょう。

  2. (2)認知調停

    話し合いで認知について合意ができないときや、話し合いを拒絶しているときなどには、子どもや母親が家庭裁判所に「認知調停」の申し立てを行います。

    調停では、調停委員を交えて当事者間の話し合いが進められ解決が図られます。調停が進められるなかで、仮に相手方に当たる男性側が認知を認めたとしても、DNA鑑定がなされることが多いと言えます。なお、DNA鑑定の費用負担について、明確なルールはありませんが、話し合いで男性側が費用を負担してくれないときは、申し立てた側が負担することになります。

    男性が自分の子どもであることに合意できないときには、調停や審判で強制的に認知がなされることはありません。
    なお、認知調停中に男性がご自身の子どもであることを認めるときには、調停での合意を待たず「認知届」を提出して、任意認知することもできます。

  3. (3)強制認知(裁判認知)

    認知調停で合意できなかったときには、相手の女性から「認知の訴え」を提起される可能性があります。DNA鑑定の結果で父子関係が判断され、その鑑定結果を覆すことができなければ、判決で「強制認知」されることになります。

    つまり認知することを男性が拒否し続けたとしても、DNA鑑定で父子関係が認められるのであれば、最終的には認知がなされることになります。
    DNA鑑定を受けること自体を拒否することも考えられますが、DNA鑑定を拒否すること自体を裁判所が父子関係ありと推認する事情になりえますので、拒否することはお勧めできません。

    したがってご自身の子どもであることが明らかであり、相手の女性から認知することを求められているときには、事態が深刻化する前に子どもに対する責務として認知を検討することも必要でしょう。

3、養育費を払わなくてすむ方法はある?

  1. (1)養育費を支払う義務は生じる

    認知して法律上の父子関係が生じた場合に気になるのは、養育費を支払わなければいけないのか、という点でしょう。父親は子どもの扶養義務があります。つまり、法律上は養育費を支払わなければいけません。

    自身の生活のことなどを考えると、養育費を支払うことに抵抗を感じ、払わなくてすむ方法はないのかと考えることもあるかもしれません。しかし、養育費を払わない方法は原則としてないのが現実です。弁護士に相談するなどして、養育費を減額できる方法を考えていくほうが得策といえるでしょう。

    ただし、偶発的な事情によっては、結果的に養育費を支払わなくてよくなることはあります。
    たとえば子どもの母親が結婚して、結婚相手と子どもが養子縁組したようなケースが挙げられます。このようなケースでは、養親が子どもに対する扶養義務を負います(民法第818条)。

    そして扶養義務は一次的には養親が負い、養親が十分に扶養義務を履行できないときに限り二次的に実親が負うとされます。
    つまり母親が十分に資力のある相手と結婚して、結婚した相手が子どもとも養子縁組をしたときには、実の父親であっても養育費の支払いを免れる可能性はあります。

    なお、母親が結婚しても相手の男性が子どもと養子縁組をしないときには、相手の男性には法律上の扶養義務は生じません。しかし、取り決めた養育費を減額する要素にはなると考えられます。

  2. (2)養育費の不払いで負うリスク

    養育費の取り決めをしたものの、養育費を払わないという選択を考えることがあるかもしれません。しかし、養育費の不払いはご自身にとって多大なリスクが及ぶ可能性があるため、賢明な選択とはいえません。

    取り決めた養育費を払わなければ、後に遅延損害金が加算された養育費を請求される可能性があります。また、養育費の取り決めをもとに、給与の差し押さえといった強制執行がなされる可能性もあります。給与に対して差し押さえをされた場合、最大で支給額の2分の1を差し押さえられる可能性があります。

4、養育費を減額できる方法とは

養育費の支払い義務があったとしても、男性側に失業や病気などの事情があり十分な養育費を払えないことがあります。
そういった場合、相手の女性と交渉して、調停などで減額を求めることになります。

  1. (1)当事者で交渉する

    通常は、裁判所が公表する養育費算定表をベースに、父母の収入などから養育費を算出します。しかし養育費の金額に法律上の決まりはないので、当事者間で合意できた金額が支払うべき養育費の金額になります。

    そのため話し合いで相手の同意が得られたときには、自身の支払える金額を養育費とすることができます。

  2. (2)調停で合意を目指す

    当事者間で話し合いをしても合意できなかった場合において、一度取り決めた養育費を減額したいときには、家庭裁判所に養育費の減額を求める調停を申し立てて解決を図ります。

    調停では、双方の収入や実際にかかる費用などさまざまな事情を把握した調停委員を交えて、話し合いが行われます。調停がまとまらなかったときには、裁判官による審判が行われることになります。なお、審判になった場合、基本的には裁判所が公表する養育費算定表を基準として養育費の金額を決定されます。

    調停での減額を求める際には、減額が認められるだけの事情が必要です。ご自身の経済、相手側の結婚や収入の変化などを、資料とともに減額する根拠として用意しておく必要があります。

  3. (3)弁護士に相談する

    養育費の金額を可能な限り抑えたいというときには、弁護士に相談することがおすすめです。
    弁護士は、ご相談者の代理人として相手の女性と交渉することが可能です。当事者間では感情的になってしまいがちな話し合いを、冷静に進めることができるでしょう。また、養育費の支払いは長期にわたります。その間に、双方の置かれている状況が変化することも考えられます。双方が合意した条件を書面に残すなど、後々トラブルになりそうな点についても、しっかりとサポートしてもらえるので安心です。

5、まとめ

本コラムでは、未婚の女性から養育費の請求を受けた男性が、養育費を払わなければいけないのか、払わない方法があるのかをテーマに解説しました。

子どもを認知することによって、法律上は養育費の支払い義務が発生します。
養育費の支払い義務が生じた際に、養育費を払わない方法は原則ありません。減額する方法を考えることが、現実的といえるでしょう。

未婚の男女間で妊娠や出産などが発生した場合には、養育費だけでなく慰謝料請求などのトラブルが生じることがあります。そのようなときには、ひとりで悩まず弁護士へ相談することがおすすめです。

ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスには、男女問題のトラブル解決の経験が豊富な弁護士が在籍しています。しっかりとヒアリングをした上で、最善の解決へ導けるように尽力します。相談だけでもお受けしておりますので、まずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています