年金分割でしっておきたい! 元夫が再婚したら支給額に影響はある?

2020年09月28日
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年金分割でしっておきたい! 元夫が再婚したら支給額に影響はある?

兵庫県が発表している平成30年保健統計年報によると、平成30年に神戸市で成立した離婚件数は2598件で、そのうち同居継続期間が20年以上のケースは493件にのぼります。
子どもが成人・独立したことを機に、長年連れそった夫と離婚するいわゆる「熟年離婚」は、近年よく耳にするようになりました。

離婚するにあたり、夫が納付してきた厚生年金記録を分割する「年金分割」をしたいと考える方も少なくないでしょう。では、年金分割とはどのようにすすめればよいのでしょうか。また、気になるのは、離婚後に元夫が再婚した場合や死亡した場合、もしくは自分が再婚した場合に、分割した年金の支給額に影響はあるのかという点です。

本コラムでは、年金分割の概要や手続き方法とあわせて、離婚した配偶者が、再婚もしくは先に死亡した場合の年金分割への影響について、神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚時に考えるべき「年金分割」とは

配偶者と離婚をする際、夫婦共有の財産をどう分割するか決める必要があります。その際に忘れてはいけないのが、年金分割です。
まずは年金分割制度の概要と請求期限について解説します。

  1. (1)年金分割の概要

    年金分割とは、夫が厚生年金制度(平成27年10月1日前の共済年金制度を含む)に加入していた場合、厚生年金記録を、夫婦で分割することができる制度です。

    厚生年金記録とは、「標準報酬(標準報酬月額・標準賞与額)」のことを指し、標準報酬は年金保険料を算定するときの基礎となります。
    つまり、単純に年金額を分割する、というわけではないのです。
    また、年金分割の効果は厚生年金に限られるので、国民年金の老齢基礎年金等には影響はありません。

    年金分割には、合意分割と3号分割の2つの方法があります。
    具体的な違いについて、確認していきましょう。

  2. (2)合意分割

    合意分割は、平成19年4月1日以降に離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を夫婦で分割できる制度です。

    どちらかが扶養に入っている必要はなく、夫婦が共働きだった期間も対象となります。婚姻期間中に標準報酬額が多かった方の標準報酬を少ない方に分割できます。分割割合は、最大2分の1です。

    当事者の一方から請求することができますが、合意分割の決定には夫婦の合意が必要です。話し合いで割合が決まらない場合は、年金分割の割合を定める審判又は調停を申し立てることになります。

  3. (3)3号分割

    3号分割は、次に掲げる条件に該当した場合に請求できる制度です。

    • 平成20年4月1日以降の婚姻中に3号被保険者の期間がある
    • 平成20年5月1日以降に離婚している

    3号被保険者だった期間について、厚生年金の標準報酬のうち2分の1を請求することができます。
    合意分割とは違い夫婦の合意は不要のため、国民年金保険第3号被保険者であった方からの請求のみで手続きを行うことができ、原則として一律2分の1の割合で手続きがなされます。
    ただし分割される側が障害厚生年金を受給する権利を有している場合は、この限りではありません。

  4. (4)年金分割請求手続きの期限

    年金分割請求手続きは、離婚が成立した日の翌日から「2年以内」という期限が設けられているため注意が必要です。

    熟年離婚の場合は、年金支給について身近に考える時期であるため、離婚にあたり年金分割について話し合われることが多いでしょう。
    しかし、若い年齢で離婚した場合は、子どもの養育費などに気を取られ、年金分割については何も決めなかった、という方も少なくありませんが、離婚成立から2年以内であれば申請することが可能です。

2、年金分割後に元配偶者が再婚・死亡した場合

年金分割が行われた後、元配偶者が再婚した場合や死亡した場合、受け取れる年金額に影響はあるのでしょうか。

結論からいうと、元配偶者が再婚したとしても、すでに合意された年金分割の内容には影響はありません。また、年金分割が合意された後に、元配偶者が死亡した場合も同様に、年金分割に影響はありません。

これは、年金を受ける側についても同様です。たとえ、年金分割を受ける側が再婚したとしても、受け取れる年金額に変わりはないのです。

3、年金分割の具体的な手続き方法

年金分割によって増える年金の支給額は平均すると、高くても月額数万円程度と高額ではありません。しかし、主婦として長年にわたり家庭を支えてきたケースでは、離婚後に就職することも簡単ではないでしょう。年金は離婚後の生活を支える重要な収入になるため、しっかりと交渉し請求することが大切です。

続いて、どのような流れで手続きができるのかを解説します。

  1. (1)年金分割のための情報提供請求書を年金事務所に提出する

    日本年金機構のウェブサイトから「年金分割のための情報提供請求書」をダウンロードし、夫婦双方の必要事項を記入したうえで、下記の必要書類を添えて申請者の居住地を管轄する年金事務所に提出します。

    • 請求者の年金手帳、基礎年金番号通知書
    • 婚姻期間を明らかにできる書類
      (戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書、またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書)
    • 請求日前1か月以内に作成された、双方(3号分割の場合、「相手方」)の生存を証明できる書類
      (戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書、それぞれの戸籍の個人事項証明書または住民票。なお、請求書に個人番号を記載すれば省略可。)
    • 事実婚関係にある期間の年金分割を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類
      (住民票等)
    • 離婚をしていないが、事実上離婚状態にあることを理由に3号分割を請求する場合は、その状態にあることを明らかにできる書類
    • 合意分割の場合、年金分割の請求をされる方(代理人を含む)の本人確認ができる書類

    なお、同手続きに関しては離婚前に行うことも可能です。

  2. (2)年金分割のための情報通知書に基づき按分を決める

    請求書が受理されると「年金分割のための情報通知書」が送られてきます。離婚前に請求していた場合は請求者宛てにのみ送付されますので、注意が必要です。

    合意分割の場合、話し合いによって按分割合に合意できれば、合意した内容を書面にまとめ、請求手続きを行います。書面は、離婚協議書に年金分割の按分割合について記載し、公証役場で公正証書として作成します。
    当事者で合意に至らなければ裁判所による調停・審判によって按分を決めます。

    3号分割のみ請求する場合は、第3号被保険者が請求手続きをすることで、年金分割が認められるため合意は不要です。

  3. (3)標準報酬改定請求書を年金事務所に提出する

    分割内容が確定したら、どちらか一方が「標準報酬改定請求書」と年金手帳や戸籍抄本などとあわせて、按分割合が記載された次のうちいずれかの書類を年金事務所に提出します。

    ●話し合いで合意した場合
    年金分割することおよび按分割合について合意している旨を記入し、自らが署名した書類
    合意した旨とその内容が記載された公正証書の謄本もしくは抄録謄本
    公証人の認証を受けた私署証書

    ●裁判所の手続きにて合意した場合
    審判(判決)書の謄本または抄本、および確定証明書
    調停(和解)調書の謄本または抄本

    年金手帳や戸籍抄本といった書類は、それぞれの状況によって必要なものが異なるため、確認したうえで対応する必要があります。

    なお、3号分割のみの請求の場合は、これらの書類は不要です。

  4. (4)標準報酬改定通知書の受け取り

    年金事務所で、提出された按分割合に基づき、厚生年金の標準報酬の改定が行われます。標準報酬が確定すると、当事者それぞれに対して「標準報酬改定通知書」が届きます。

    以上で手続きは完了です。
    それぞれの年金受給開始日から支給がスタートします。

4、年金の受給開始後に離婚した場合も請求はできる?

熟年離婚をした場合、すでに年金支給が開始されているケースもあるでしょう。しかし、その場合も、年金分割請求は可能であり、手続きも変わりありません。

ただし、すでに受給している年金に関しては、さかのぼって分割されることはありません。

5、まとめ

離婚に際し分割をした年金は、生涯にわたって受給することができます。元夫が再婚した場合や死亡した場合だけではなく、あなた自身が再婚した場合も変わりません。

年金分割請求をするには、複雑な計算が必要となるほか、各種書類や証明書などの提出も求められます。また、離婚という複雑な状況においては、話し合いがこじれることも少なくないでしょう。
しかし、離婚後の生活を支える、貴重な収入源となるので、しっかりと請求することが大切です。

離婚にあたり、年金分割をしたい場合や、年金の分割に関してトラブルを抱えてしまった場合は、弁護士に依頼して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。当事者間だけでは、折り合いがつかないようなケースにおいても、弁護士が介入することで交渉が進むことも少なくありません。

年金分割についてお悩みを抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスにご相談ください。
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