ギャンブルに依存する配偶者。ギャンブル癖を理由に離婚はできる?
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神戸大学医学部附属病院では、2018年5月にギャンブルを含めた依存症の専門相談外来を開設し、カウンセリングなどによる治療を始めたという報道がありました。ギャンブルは、合法の範囲で娯楽として楽しむ分には問題ありません。しかし、ギャンブルの恐ろしさは、のめり込むと依存症になってしまう可能性があるということです。ギャンブルへの過度な執着は病気である、という認識も広まってきています。
ギャンブル依存症になってしまうと、本人はもとより、家族は大変苦しむことになります。夫婦関係が破綻し、離婚を考えることもあるでしょう。そこで、ギャンブルを理由に離婚ができるのかと、ギャンブルによってできた借金があった場合の対応方法などについて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
1、恐ろしいギャンブル依存症
ギャンブルへのめり込むのは、当人の自由意思の問題だと思われるかも知れません。しかし、ギャンブルに深くはまり込んでいる人は、もはや自分の意思では止められない「依存症」になっている可能性があります。
厚生労働省が公開している依存症対策に関するホームページによると、依存症とは脳内のドーパミンという快楽物質の刺激に脳が慣れてしまった結果、より強い刺激を求めるようになり、行動がコントロールできなくなる病気だと説明しています。また、本人は症状を自覚していないことが多いため、周囲の人間がいくら止めても聞く耳を持たず、自らの意思でギャンブルを止めることが難しいというのも、依存症の恐ろしい点です。
そのままにしておくと、ギャンブルのために借金を重ねるなどのトラブルを引き起こし、周囲から孤立してしまいます。そして、さらにギャンブルにのめり込むという悪循環に陥ってしまいかねないのです。
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(1)ギャンブル依存症の問題点
ギャンブル依存症の問題は、ギャンブルへ執着すればするほど、ギャンブル以外の生活や人間関係を顧みなくなる点にあります。もちろん、ギャンブルは確実に利益を上げられるものではありません。勝てばさらなる勝利が欲しくなり、負けてしまうと取り返そうと躍起になります。そうして散財を繰り返した結果、借金に手を出してしまう場合も多く見受けられます。
中には、ギャンブルの資金を集めるために、生活費や家族の貯蓄を使い込んでしまうことや、もっと深刻なケースでは、会社の金銭を横領するといった犯罪に手を染めてしまうこともあります。
こうなってしまうと、本人だけの問題にとどまらず、家族や周囲の人を巻き込んだ問題に発展してしまいます。何よりも、夫婦間の信頼は損なわれてしまうでしょう。 -
(2)依存症の治療法について
ギャンブル依存症が疑われる場合は、心療内科や精神科を受診してください。ただ、依存症は一朝一夕に治るものではありません。自分の行動を見つめ直し、時間をかけてギャンブルへの熱を抑えるための治療をしていきます。
治療は長期に及ぶことが多いので、根気強さが求められます。
2、ギャンブル依存症と借金
ギャンブル依存症の問題として、もっともトラブルになりやすいのが借金です。生活費や養育費を使い込んでしまうケースもあれば、家族にバレないように消費者金融などから多額の金銭を借りてしまうこともあります。いずれの場合も、すべてのお金をギャンブルに費やしてしまいます。そうして、またお金が必要になる……という負のサイクルに陥ってしまいます。
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(1)配偶者の借金が発覚したら
配偶者が勝手に借金をしていたことが発覚した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
原則として、正常な判断能力を持ち合わせている成人が、法定利率内で消費貸借契約を結んでいる場合は、返済義務が生じます。ただし、ここで返済義務を負うのはあくまでも借金をした本人です。ギャンブルの借金は、家庭生活を送る上での費用(生活費)の借り入れではないので、ご家族が返済義務を負う必要はありません。 -
(2)借金を返済する場合の注意点
配偶者が借金をしていた場合、本人に返済義務がありますが、結果的に家庭のお金から返済せざるを得ないこともあるでしょう。
借金を返済していく場合に、確認しておくべき注意点があります。
●連帯保証人になっていないか
連帯保証人になってしまうと、借金をした本人と同一の立場で返済義務を負ってしまいます。そのため、たとえ離婚したとしても返済から逃れることはできません。借金の内容を明らかにした上で、返済を進めていく必要が生じます。
●お金を借りた先が、違法金融業者だった場合
収入に見合わない貸し付けや法の規定を超えた金利、非常識な取り立てにあっている場合は、貸金業法に違反している業者の可能性があります。違法な金融業者から借金をしていた場合は、不法原因給付に当たり返済義務が生じません。しかし、たとえそのことを伝えても、業者側は簡単に引き下がらない可能性も考えられます。借りた先が貸金業法に違反した業者だった場合は、早めに弁護士へ相談すると良いでしょう。
自力での返済が難しいほど借金が膨らんでいた場合は、債務整理をする方法があります。債務整理することで、借金の減額や、返済計画を立てて分割で返済していくことを検討できます。債務整理の手続きに関しては、弁護士へ相談することで道筋を立てやすくなります。借金を返済する方法はいろいろとあるので、一人で抱え込まないことが解決への近道です。
3、ギャンブル依存症の配偶者と離婚したい
何度「ギャンブルはやめて」と伝えても繰り返しギャンブルに興じてしまう。あるいは、こっそりとギャンブルをしては、子どもの教育費や食費から、必要なお金を使い込んでしまう……。
こうした日々に疲れ果て、いい加減離婚してしまいたい、と思う方もいるかも知れません。
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(1)一方の意思だけで離婚は成立する?
離婚するには、原則として当事者双方の同意が必要です。しかし、法に定める一定の事由(法定離婚事由)がある場合は、一方の意思だけで離婚が認められる可能性があります。
民法第770条で定められている法定離婚事由では、離婚が認められる理由が5つ規定されています。
配偶者のギャンブル依存や度重なる借金などを理由とする場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項5号)に該当する可能性があります。 -
(2)ギャンブル依存症を理由とする離婚
配偶者のギャンブル依存が、婚姻関係を続けるのが難しいほど重大な理由と認められるかどうかは、裁判所の判断に委ねられます。
夫婦関係を継続できないと感じる理由は人それぞれ異なりますので、一定の基準やルールがあるわけではありません。そのため、婚姻を続けるのが難しいということを、第三者が客観的に判断できるように立証する必要があります。配偶者がギャンブルにつぎ込んだ金額や、ギャンブルの頻度などは証拠となりえますので残しておくと良いでしょう。 -
(3)トラブルなく離婚をするために
配偶者が離婚に同意しない場合、穏やかで円満な解決というわけにはいきません。話し合いで離婚できないときは、離婚調停や離婚裁判で決着をつけることになります。
離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員会が当人間の間に入ります。話し合いが円滑に進むように調整してくれるので、冷静に解決へつなげることができるでしょう。ただし調停は、調停がまとまらない限り強制力がないため、双方が納得する落としどころをみつけられるかがポイントになります。
調停でも話し合いがまとまらず不成立になった場合は、裁判によって離婚を認めてもらうことになります。
調停や裁判になった場合やなりそうなときは、弁護士に相談してください。離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士であれば、離婚を考えるに至った経緯から、何が法定離婚事由に当たるのかを適切に判断します。証拠集めなどについてのアドバイスをするとともに、あなたの代理人として交渉をするなど、スムーズに離婚が成立できるようサポートします。
4、まとめ
ギャンブル依存症になると、本人以上に家族が疲労してしまうことも少なくありません。繰り返し頼んでもギャンブルを止めてくれない、勝手に借金を重ねるといったことが重なると、夫婦間の信頼関係そのものが失われ、離婚という道を選ばざるを得ないこともあるでしょう。
配偶者のギャンブル依存に悩み、離婚を考えている場合は、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスまでご相談ください。ギャンブルに伴う借金があるときは、返済についても相談可能です。一人で悩まず、まずはお気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています