離婚で財産分与したときに課税されるケースとかかる税金の目安は?
- 離婚
- 離婚
- 財産分与
- 税金
神戸市の発表によると、平成29年の離婚数は9113組で、1000人あたりの離婚率は1.68でした。およそ1時間にひと組が離婚している計算になります。
離婚の際にはさまざまなお金のやりとりが発生します。特に不動産についてのやりとりが発生すると税金がかかるのではと不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が、離婚の財産分与で課税されるケース、されないケース、また税額の計算方法を解説いたします。
1、離婚で財産をもらい受けるのに税金はかからない
原則として、離婚で財産をもらい受けても税金はかかりません。なぜならば、離婚の財産分与は、結婚をしてから別居又は離婚するまでに二人で築き上げた夫婦の共有財産を分ける制度であるためです。無償で財産を受け取る「贈与」には該当しないと考えられます。自分の財産を取得するだけでから、利益も出ていないので所得税も不要です。
ただし、分与された財産の金額が不相当に高額である場合などには、課税される可能性があるので注意が必要です。
-
(1)贈与税
贈与税は誰かが無償で金銭等を譲渡した場合に発生する税金です。基礎控除が110万円なので、110万円を超える金額を受け取ると贈与税がかかってしまいます。しかし先ほどお話ししたように、離婚の財産分与は贈与ではないので、原則として非課税です。
ただし、共有財産に対して不相当に過大な金額が分与された場合は贈与税が発生する可能性があります。相続税や贈与税を免れるために、偽装離婚していると判断されたら、贈与税がかかってしまうので気をつけましょう。
●贈与税の計算方法
贈与税の計算式は以下のとおりです。
「(受け取った金額-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額」
贈与税は、基礎控除のほかに、贈与を受けた金額によって控除額も定められています。
詳しくは、国税庁が公開している贈与税の速算表等をご確認ください。
国税庁ホームページ -
(2)不動産所得税
不動産取得税とは、不動産を取得した際にかかる税金です。
夫婦の共有財産を分与した場合は、不動産取得税は発生しません。しかし、過剰に分与されていると判断された場合には課税の対象となります。また、課税逃れのために財産分与を利用していると判断された場合にも、同様に課税されることになるでしょう。
不動産所得税がいくらかかるかについての計算式は以下のとおりです。
固定資産税評価額×(標準税率)
固定資産税評価額は年に1度市町村から送られてくる課税明細書、あるいは市町村から入手できる固定資産評価証明書によって知ることができます。また標準税率は市町村によって異なるため、ご自分の市町村に問い合わせる、または自治体ホームページを確認するなどして把握する必要があります。
加えて、名義を変更した場合は、登録免許税と固定資産税を支払わなければなりません。登録免許税とは不動産の所有権移転登記にかかる税金で、財産分与の範囲内で不動産を所得したとしても必要になります。
固定資産税は、不動産を所有していることに対して課せられる税金で、1月1日の時点で所有権を持っていれば支払いの義務が生じます。
2、財産を譲渡した側が払う税
税金は財産を受け取る側だけでなく、譲渡した側にもかかる場合があります。
-
(1)譲渡所得税
譲渡所得税は不動産などを売る、贈与する場合などにかかる税金です。どのような税金かというと、『モノの増加した価値』に対する税金だというとわかりやすいかもしれません。
たとえば、1000万円で購入した土地の価格が1億円にまで膨れ上がったとしましょう。すると、この土地の所有者は差額となる9000万円の所得を得たと考えられます。この新たな所得は、現金ではないにせよ所得には違いありませんから課税の対象になります。そしてこの所得を課税するタイミングが譲渡の時点なのです。
つまり、譲った不動産価格が、購入時よりも上がっている場合に譲渡所得税の課税対象になります。購入したときより価値が下落している場合は、支払う必要はありません。 -
(2)譲渡所得税の対象となる財産
課税の対象となるのは、たとえば不動産や有価証券、骨董(こっとう)品や金、ゴルフの会員権などです。現金については課税されません。
3、節税の方法
最後に、財産分与にかかる税金をできるだけ節約する方法についてご紹介いたします。
●現金で譲渡する
不動産の所有権を移転する形で財産分与を行うと、登記費用や譲渡所得税がかかってしまうというのは、ここまで説明したとおりです。そこで、財産分与の際にはできるだけ現金の形で受け取るようにすると、これらの費用や税金をかけずに財産を取得できます。
ただし、購入時よりも価値が上昇している土地や資産を売却した場合は、売却した時点で譲渡所得が発生していますので、譲渡所得税の課税対象になってしまいます。
●配偶者控除を受ける
20年以上婚姻関係を続けてきた夫婦間でマイホームを譲る場合、最高で2110万円分は税金がかかりません。これを超えた部分だけ課税されます。離婚前に2110万円を贈与して、それ以外を離婚後に贈与することで節税効果が高まります。
控除を受けるためには申告が必要なので、忘れずに手続きしましょう。
●マイホームを売って控除を受ける
マイホームを親子や夫婦以外に売却する場合、3,000万円の控除を受けることができます。売却して分割する場合は、この制度を活用すると大きな節税効果があります。
売却せず、片方に譲る場合も、離婚後に名義を変更することでこの制度を活用できます。
4、離婚で財産分与を行ったら書面に残しておく!
夫婦の協議で財産分与について合意できたら、慰謝料や子どもの養育費といったほかの項目を含めて離婚協議書を作成しましょう。離婚協議書の必要性について解説します。
-
(1)離婚協議書を作成するメリット
離婚協議書を作成しておけば、日時がたってから「内容についてもめる」という事態を防げます。さらに、相手が約束を守らず裁判になったとき、離婚協議書は強力な証拠となります。のちのちのトラブルを防ぐためにも、離婚協議書の作成は欠かせないといえるでしょう。
-
(2)公正証書ならさらに強い法的効力がある
離婚協議書を強制執行認諾条項のついた公正証書にすることによって、さらに強い法的効力を発生させることができます。
万が一、相手が金銭に関する約束を守らなかった場合、前述のとおり強制執行をかけることになります。しかし、個人的に取り交わした離婚協議書のみであれば、強制執行をするために裁判を起こさなければなりません。しかし、強制執行認諾条項のついた公正証書を作成していれば、裁判を起こさなくても強制執行手続きに取り掛かることができます。
5、離婚の財産分与についてベリーベスト法律事務所に相談するメリット
お互いが納得する形で財産分与を行うのは非常に難しいものです。特に不動産など多額となる財産がある場合は、法的リスクの洗い出しや譲渡にかかる税金の算出など、専門家に相談したほうがよいことが多々あります。完璧に分配したと思っても、抜けがあったり、申告を忘れたりしたばかりに想定以上に課税されてしまうケースは少なくありません。
ベリーベスト法律事務所では、まずは法律の観点からアドバイスを行います。また、同グループの税理士を交えることで、法律だけでなく税の面からも検討し、平等に財産分与を行えるようサポートすることも可能です。まずはお気軽にご相談ください。
6、まとめ
離婚に伴う財産分与は非常に手間がかかるものです。税金だけでも状況によって複数の種類があり、多くの判断を求められます。
特に『何に』『どんな税金が』『どれくらい課せられるのか』、というのは判断が難しいだけでなく、取り返しのつかないミスにつながる可能性もあります。専門家への相談をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所神戸オフィスでは、離婚に伴う財産分与に対応した経験が豊富な弁護士や税理士が、あなたの状況に最適な分割方法、節税方法をアドバイスします。取り返しのつかないことなる前に、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています