【前編】離婚の際に会社名義の資産は財産分与の対象になる? 請求方法とは?
- 離婚
- 離婚
- 財産分与
- 会社名義
「俺の財産は全て会社名義だから、分与できるようなものはない」。離婚に向けた話し合いを始めた際、会社を経営している夫がそう通告してきたら、それを信じますか?
一般的に夫婦が離婚する際には、財産分与を求めることができます。ですが夫婦どちらか、または両方が会社経営者の場合、一部の資産が会社名義になっていることがあります。
平成28年の神戸市経済センサスによると、神戸市内の民営事業所数は約7万にものぼります。ではこれらの会社の経営者が離婚する際、会社名義の資産はどのように扱ったらいいのでしょうか?分与の対象になるのでしょうか?
神戸オフィスの弁護士が詳しくご説明します。
1、会社名義の資産は財産分与請求できる?
財産分与とは、夫婦の財産を離婚の際に分配することです。慰謝料や養育費とともに、離婚の際に決めておく必要があります。では夫や妻が会社を経営している場合には、どこまでが分与の対象となるのでしょうか?
-
(1)分与の対象となるのは原則、個人名義
一般的に財産分与の対象となるのは、結婚後に夫婦が協力して築いた財産です。たとえば現金や預貯金、自宅不動産、車、家具といったものが挙げられます。ローンなどの生活のために必要であったと認められる負債も含まれる場合があります。
なお預貯金や不動産などは夫や妻どちらかの単独名義になっていることも多いと思いますが、婚姻後に築いた財産であればどちらの名義であっても分与の対象となります。 -
(2)会社・法人名義の資産は対象外
夫や妻が会社を経営している場合、預金や不動産など資産が会社名義となっているケースがあります。
これらについては、原則として財産分与の対象外です。
会社と経営者は、法律的にはまったく別の人格とみなされます。会社名義の資産は、あくまで会社の資産なのです。
そのためたとえ経営者であっても、離婚時に勝手に会社の資産を分けたり処分したりすることは基本的にはできません。それが許されてしまうと会社の経営に対してはもちろん、株主や従業員にも大きな影響を与えてしまうでしょう。
ただしそうなると、夫や妻に分与をさせないために全ての資産を会社名義とするといった悪質なケースもでてきてしまう可能性があります。
そのため次のような例外が認められています。 -
(3)会社名義となっている財産のうち分与の対象となり得るもの
個人経営や規模の小さい会社においては、事実上は個人で使用しているものであっても会社名義となっていることがあります。
また夫婦だけで経営している個人商店などでは、会社名義でも、会社と家庭の会計がきちんと分けられていない場合など、事実上は夫婦の共有財産と考えられることもあります。
そのほか税金対策などを目的に活動実態のない会社を作り、個人の財産を会社名義にしていることもあるでしょう。
こういった場合であることが立証できたには形式的には会社名義であっても、実質的には夫婦の共有財産ととらえられる余地もあるため、財産分与の対象となる場合もあります。 -
(4)経営への貢献度が大きいと分与の可能性も
家族だけで経営している同族会社などでは、夫または妻が会社の経営を長年サポートしてきたというケースもあるでしょう。
こういった場合には会社の成長に対する貢献度が大きいと考えられるため、会社名義の資産も分与が認められる可能性があります。
ただし同族経営だからといって必ず認められるというわけではなく、あくまで大きな貢献があった場合のみです。
2、会社名義で財産分与の対象となる資産、ならない資産
会社名義の資産でも財産分与の対象となる場合がありますが、対象外のものもありますので注意してください。
-
(1)基本的には全てが分与の対象
事実上の個人資産と評価できる会社名義の資産は車や預金、不動産など、基本的に全てが財産分与の対象となります。
-
(2)分与の対象外の資産とは
会社の従業員や特許、許認可などは個人ではなく、会社に専属的に帰属しているため、そもそも分けることができません。そのため分与の対象外です。
また個人資産と会社資産がきちんと分けられている場合については、個人商店などであっても、明らかに会社のものと判断される部分については分与の対象外となります。 -
※夫婦で共同経営していた会社の株式について
離婚後に相手が経営に関与しないような場合、株式を分与してしまうと会社の経営に影響がでてしまう可能性があります。また相手としても株式よりも現金で分けてほしいと思うこともあるでしょう。
その場合には分与の対象となる分の株式を、一方が買い取るという方法があります。そうすることで経営の安定につながるほか、相手としても使いやすい財産を受け取ることができます。
>後編はこちら
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています