モラハラ夫(又は妻)と計画的に離婚するための知識7選
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モラハラを受けていると、毎日が非常に辛いものです。身体に対する暴力とは異なり、はっきりした証拠も残りにくいですし、そもそも離婚して良いものかどうか、迷ってしまわれる方も多いでしょう。
※なお,この記事では,夫がモラハラを行っているケースを前提として記述します。妻がモラハラを行う場合には,「夫」を「妻」と読み替えてください。
モラハラ夫と離婚するときには、慰謝料や養育費、財産分与の問題など、しっかりと知識を持って臨む必要があります。
今回は、モラハラ夫と計画的に離婚するための方法を、弁護士が解説します。
1、モラハラとは
モラハラとは、モラルハラスメントの略です。
具体的には、相手を認めない、貶める、異常に束縛する、極端に身勝手に振る舞うなどの行為です。言葉や態度による、精神的暴力と考えると良いでしょう。
単なる性格の不一致では、どちらか一方に責任があるとは言いがたいのですが、モラハラの場合、婚姻関係を破綻させた原因は、モラハラをした側にあると言えます。
2、モラハラ夫の特徴
モラハラは、身体的な暴力を伴いません。そこで、モラハラ被害を受けていても、「自分がモラハラ被害者かどうか、わからない」という方が多いです。
そこで、モラハラ夫の特徴をご紹介します。
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(1)相手を貶める
モラハラ夫は、妻を貶める言動を行うものです。妻に対し、毎日のように「お前は生きている価値のない人間だ」などという言葉を発することもあります。このような言葉を毎日聞かされていると、妻の方も気分が滅入ってきて、自分が本当に価値のない人間だと思ってしまいます。
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(2)何でも反対する
モラハラ夫は、妻の言うことやすることに何でも反対することが多いです。たとえば、妻が何かを褒めると「そんなレベルの低いものを気に入るから、お前は馬鹿なんだ」などと言ったりします。
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(3)異常に束縛する
モラハラ夫は、妻を異常に束縛します。しょっちゅう電話して、電話にでなかったらしつこく問い詰めることもありますし、1日のスケジュールシートを渡してきて、そのとおりに行動するように言ってきたりします。
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(4)自分だけのルールがある
モラハラ夫は、自分だけのルールを妻に強要することがあります。たとえば、朝起きる時間、昼食の時間、夕食の時間などはもちろんのこと、ゴミ袋は必ずいっぱいになってから捨てる、料理の内容や使う材料を細かく指定する、休日の過ごし方を一方的に決めてしまう、毎月1回決まった場所に行くよう求めるなど、細かいルールを定めていて、その通りにならないと怒ったり、機嫌が悪くなったりします。
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(5)人の話を聞かない
モラハラ夫は、人の話を聞かないことが多いです。妻だけではなく、周囲の人の話も聞かない場合があります。
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(6)外面が良いことが多い
モラハラ夫は、外面が良いことが多いです。周囲の評判が良いので、妻が離婚しようとしても「どうして離婚するの?贅沢」などと言われて、思いとどまってしまうこともあります。
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(7)けちであることが多い
モラハラ夫は、お金の使い方に関して、自分に甘く人には厳しい場合が多いです。妻や子どもには、極端なまでにお金を使いませんし、お金を使っていることがわかったら怒り出したりします。
以上のような特徴があるならば、モラハラ夫である可能性があります。辛い生活を我慢しているよりも、離婚を考えるべき時期かもしれません。
3、モラハラは離婚原因になる
そもそもモラハラは離婚原因になるのでしょうか?
民法の定める離婚原因の中で「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題となります(民法770条1項5号)。
モラハラの場合、程度や立証できるかという問題はありますが、度を超している場合には、離婚原因となるでしょう。
夫婦はそれぞれ家庭生活を維持すべき義務を負いますが、酷いモラハラによって相手を傷つける夫は夫婦関係を壊していると言えるからです。離婚原因があると認められる場合には、相手が離婚を拒絶しても、離婚訴訟によって離婚を認めてもらうことができます。
モラハラが酷い場合は、妻が心を病んで、うつ病などの精神疾患にかかってしまうこともありますし、子どもに悪影響が及ぶこともあります。
酷いモラハラを受けているならば、早めに見切りをつけて、離婚に向けて進みましょう。
4、モラハラで、慰謝料を請求できる
モラハラ夫と離婚するとしても、離婚後の生活が心配、という女性の方が多いのではないでしょうか?
特に、専業主婦だった方などが子どもを引き取って育てていく場合、きちんとお金が入ってこないと心配です。
まずは、相手に慰謝料請求することができるのか、考えてみましょう。
夫婦は、お互いに助け合って生活していかなければなりません。それにもかかわらず身勝手に振る舞い、相手を貶め、夫婦関係を破綻させた夫には大きな責任があると言えます。
そこでモラハラ夫と離婚するときには、慰謝料請求が認められる可能性があります。
慰謝料の金額は、婚姻期間やモラハラの程度などにもよりますが、だいたい50万円~200万円程度の範囲になると考えると良いでしょう。
協議離婚や調停離婚で相手が了承する場合には、より多額の慰謝料支払いを求めることも可能です。
5、モラハラ夫に請求できる慰謝料以外のお金
モラハラ夫と離婚するとき、慰謝料だけでは生活が心許ないものです。そこで、慰謝料以外にどのようなお金を請求することができるのか、ご説明します。
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(1)財産分与
まずは、財産分与を求めることができます。財産分与は、夫婦が結婚生活において築いた夫婦の共有財産を分け合うことです。
財産分与は夫婦それぞれが2分の1ずつもらうことができますので、きっちり財産の調査をして、確実にお金やその他の資産を受けとることが大切です。 -
(2)養育費
子どもの親権者となる場合には、養育費の請求をすることができます。子どもが20歳になるまで、毎月決まった金額を支払ってもらう権利があります。
養育費の金額については、家庭裁判所も用いている養育費の算定表(判例タイムズ1111号285頁~)に従って計算をするのが通例です。 -
(3)婚姻費用
離婚前に旦那と別居するときには、相手に対し、婚姻費用を請求することができます。婚姻費用とは、夫婦が分担すべき生活費のことです。
別居時に、相手と婚姻費用について取り決めができれば良いのですが、モラハラ夫が相手の場合、話し合いができないことも多いです。
そのようなときには、別居後速やかに家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てましょう。速やかに申し立てを行えば、婚姻費用の金額が決まる時期も早くなります。相手が決定に従わない場合には、給料などを差し押さえることも可能です。 -
(4)年金分割
相手が厚生年金や共済年金に加入している場合には、離婚時に年金分割を求めることも可能です。年金分割をしておくと、自分が年金を受給する年齢になったときに、年金を加算してもらうことができます。合意分割の部分については相手の同意が必要ですので、離婚の際にきちんと取り決めをしておきましょう。
6、モラハラ夫と離婚するときに親権を取れるか
モラハラ夫と離婚するときには、親権に関する問題も発生しやすいです。
モラハラ夫は、ふだんは子どものことなど関心がないように見えても、離婚となると、突然親権を主張してくることが多いからです。
モラハラ夫に子どもを取られないためには、子どもと絶対に離れないことが大切です。
夫と別居するときに、子どもを連れて行かれないように、注意しましょう。自分一人で子どもを置いて家を出て行ってもいけません。離婚前に、夫と子どもが一緒にいる常態が作り出されてしまったら、そのまま相手が親権者として認められる可能性が高くなってしまうからです。
モラハラをしていても、それは妻に対する行為であり、子どもには良い父親とみなされることがあります。そうしたら、相手に親権が認められてしまう可能性も十分にあるので、きちんと対策を執ることが重要となってきます。
7、モラハラ夫と離婚する手順
モラハラ夫と離婚するときには、以下のような手順で進めましょう。
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(1)証拠集めをする
まずは、相手のモラハラ行為や財産関係の証拠を揃えることが重要です。いったん離婚協議の話し合いに入ってしまったら、相手も警戒するので証拠を集めにくくなります。
そこで、相手がモラハラ発言をしているところを録音したり、詳細な日記をつけたり、相手から送られてきたメールを保存したりして、証拠を手元に残しましょう。
家にどのような財産があるか調べて、預貯金や生命保険証書、不動産関係の資料などを集めることも重要です。 -
(2)話し合いをする
証拠が揃ったら、相手と離婚についての話し合いをしましょう。
ただ、モラハラ夫が相手の場合、妻が直接話し合いを持ちかけても、離婚に合意しないことが多いです。ケースによっては、離婚話を持ちかけると、相手が感情的になって危険な状態が発生することもあります。そのような場合には、話し合いをせずに、まずは別居することも考えましょう。 -
(3)離婚調停をする
別居をしたら、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。離婚調停では、裁判所の調停委員が間に入って話を進めてくれるので、モラハラ夫と直接話をする必要がありません。
モラハラ被害者の妻が自分一人でモラハラ夫に対峙するのは難しくても、調停なら自分の意見も伝えやすいですし、調停委員から相手を説得してもらうことなどもできます。
相手は、「単なる夫婦げんか」「価値観の違い」などと言ってくるかもしれませんが、事前に集めておいた証拠を調停委員に見せて、モラハラの実態を理解してもらいましょう。 -
(4)離婚訴訟(裁判)をする
調停をしても相手が離婚や慰謝料の支払いに合意しない場合には、離婚訴訟をしなければなりません。
離婚訴訟では、きっちり離婚理由を証明できないと、離婚を認めてもらうことができません。ただ、法律上の離婚理由があれば、相手がどんなに強く拒絶していても離婚できますし、慰謝料支払い命令を出してもらうことも可能です。
まとめ
結婚生活において、モラハラを受けている場合、まずは自覚を持つことが大切です。
「何かおかしい」、「普通の夫婦とは違う」と感じたら、家族や友人など、周囲の人に相談をしてみましょう。家族に相談できない場合や、法的な判断を聞きたい場合には、弁護士に相談することが有効です。
モラハラを受け続けて耐えている時間は非常にもったいないです。一度しかない人生ですから、自分と子どものために、モラハラ夫と離婚して、やり直すことを考えましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています