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成年後見人による横領は親族同士でも犯罪になる! 逮捕の可能性はある?

2020年10月06日
  • 少年事件
  • 成年後見人
  • 横領
成年後見人による横領は親族同士でも犯罪になる! 逮捕の可能性はある?

令和2年2月沖縄県で、成年後見制度の保佐人をつとめる女が、70歳代の女性の口座から現金122万円を引き出した容疑で逮捕されました。
高齢者が増加しているなか、認知症などによって判断能力が低下している方のために機能している成年後見制度が悪用された事例です。
神戸市では、神戸市成年後見支援センターが制度の仕組みや利用手続きの相談・支援のほか、後見人の養成・指導をおこなっていますが、同様のトラブルが発生しないとも限りません。

成年後見制度では、親族などが成年後見人に選任されるケースも少なくありません。
では、親族が成年後見人になった場合でも、財産の使い込みなどが発覚すれば、この事例のように逮捕されてしまうのでしょうか?

本コラムでは、成年後見人が横領した場合の罪について神戸オフィスの弁護士が解説します。成年後見人となった親族が横領した実際の事例も紹介しながら、逮捕の可能性にも触れていきます。

1、成年後見人による横領は「業務上横領」になる

内閣府が公表している令和元年版の高齢社会白書によると、平成30年10月1日時点におけるわが国の高齢化率は28.1%でした。昭和25年の調査では4.9%、平成2年でも12.1%だったことを考えると、高齢化率は急激に上昇していることがわかります。
高齢者の増加に比例して、認知症などを原因として適切な財産管理ができなくなってしまった方も増加しているため、成年後見制度が活用されることは非常に重要です。

ここではまず成年後見制度の概要や、成年後見人が財産を横領した場合の罪について確認しておきましょう。

  1. (1)成年後見制度とは

    まず、成年後見制度とはどのような制度なのか、改めて理解しておきましょう。

    同制度は、認知症や知的障害などが原因で判断能力が不十分になっている方のために、不動産や預貯金の管理、介護サービスの契約、遺産相続の協議などを支援する制度です。
    対象者の判断能力に応じて、後見・保佐・補助の3段階があります。後見人には裁判所の許可を要する行為もありますが、財産に関する全ての法律行為について代理権が与えられます。保佐人・補助人は一定の範囲内でしか代理権が与えられません。

  2. (2)横領罪と業務上横領罪の違い

    管理を任されていた他人の財産を使い込むなどの行為は、一般的には「横領」や「着服」と呼ばれます。
    これを法律に照らすと、刑法第252条第1項の「横領罪」にあたります。

    ●刑法第252条第1項(横領)
    自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。


    すると、成年後見人による横領行為は「横領罪になる」と考えてしまうかもしれませんが、それは間違いです。
    成年後見人が、支援の対象者となる人の財産を横領した場合は、刑法第253条の「業務上横領罪」に問われます。

    ●刑法第253条(業務上横領)
    業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。


    業務上横領罪といえば、銀行員や集金人が顧客から預かったお金を自分の懐にいれるようなケースが代表的です。このような例から、業務上横領罪は「お金を扱う機会のある職業に就いている人が対象となる犯罪」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

    成年後見人は職業ではないので「仕事でもないのに業務上横領罪になるのか?」と疑問を感じるかもしれませんが、業務上横領罪おける「業務」とは「仕事」という意味ではありません。ここでいう業務とは「社会生活上の地位に基づいて反復・継続しておこなわれる事務」を指します。

    成年後見人は、家庭裁判所から選任されて、一定期間被後見人の財産を管理し法律行為の代理などをするという継続的な事務を担当するため、業務とみなされます。

    それぞれの法定刑を比較すると、横領罪が「5年以下の懲役」であるのに対して、業務上横領罪は「10年以下の懲役」となっており、格段に厳しい刑罰が規定されています。
    財産管理などを任せるという強い信頼関係を裏切る犯罪であるため、厳しく処罰されると認識しておくべきでしょう。

2、横領した成年後見人が親族でも犯罪になるのか?

最高裁判所・事務総局家庭局の調べによると、後見人等による不正報告の件数や被害額は、平成26年をピークに減少しています。
平成26年には831件・約56億7000万円の被害が報告されていましたが、平成31(令和元)年には201件・約11億2000万円にまで抑えられているのです。
減少しているとはいえ、やはり年間にこれだけの被害が発生しているのが実情です。

ここで気になるのが、横領した成年後見人が成年被後見人の親族である場合でも、他人と同じように罰せられるのか、という点です。
この疑問を紐解くために注目したいのは「親族相盗例」です。
窃盗罪や詐欺罪など一部の犯罪については、家庭内の紛争には国家が干渉しない方がよいという法政策に基づき、一部の親族間であれば事件を起こしても罪には問われないことがあります。
横領罪も親族相盗例が適用される犯罪であり、業務上横領罪にも適用されると考えられますが、判例上、成年後見人が業務上横領した場合、親族相盗例の適用はないと判断されています。
養子の成年後見人となった養父による業務上横領事件の裁判で下された判決では、裁判所は次のように判示しています。

家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである

【最高裁 平成24年10月9日決定】


この判例では、親族相盗例の適用は認めないとしたうえで、親族関係だからといって刑罰を軽くする事情にはならないと結論づけています。
最高裁は、たとえ成年後見人と被後見人との間に親族関係があっても、成年後見人として公的な性格を併せ持つ以上、親族相当例の適用される家庭内の紛争の範疇を越え、親族相盗例の対象とはならない旨結論を下したと考えられます。

3、親族の場合も業務上横領で逮捕されるのか?

以上の通りたとえ親族だとしても、成年後見人が横領行為を働けば業務上横領罪に問われる可能性があります。では、業務上横領罪が成立してしまった場合、冒頭で紹介した事例のように逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)必ずしも逮捕されるわけではない|逮捕の要件とは

    業務上横領罪にあたる行為をはたらいても、必ず逮捕されるわけではありません。
    逮捕は「逃亡または証拠隠滅のおそれ」がある場合に限られます。つまり、逃亡するおそれも、証拠隠滅の心配もないようなケースでは、業務上横領罪にあたる行為があっても逮捕されないとするのが基本です。

    ただし、横領額が多額にのぼる場合は、事案の悪質性が高いことに加えて、厳しい刑罰が予想されるため逃亡・証拠隠滅を企てるおそれがあると判断されやすくなります。

  2. (2)逮捕を避けるための対策

    警察による逮捕を避けるには、示談交渉が有効です。
    示談とは、素直に罪を認め謝罪のうえで横領した金銭などを返還し、あわせて横領によって発生した損害や慰謝料を支払うことで許しを請います。
    示談が成立して被害者からの告訴が取り下げられると、警察が逮捕に踏み切る可能性も低くなることが期待できます。

    ただし、示談交渉の相手は、財産の所有者である被後見人ではなく、被後見人の財産管理権を有する人になると考えられます。
    親族間で起きたトラブルだからこそ、他人同士のケースよりも心情的に複雑で交渉が難航しやすいので、法律の専門家である弁護士のサポートを得るのが賢明でしょう。

  3. (3)逮捕は避けられても民事責任は追及される可能性がある

    逃亡・証拠隠滅のおそれが低いとして逮捕を避けることができても、財産を横領した事実が帳消しになるわけではないことに注意が必要です。
    親族が相手でも、横領金の返還慰謝料などの支払いを求めて民事訴訟に発展するおそれは十分にあります。

    民事裁判の決着までには相当な時間がかかるケースも多いので、精神的な負担は大きいでしょう。示談には民事的な賠償を果たす効果もあるので、示談が成立すれば逮捕だけでなく民事裁判に発展する事態も回避できる可能性があります。

4、逮捕された場合の刑事手続き|弁護士ができるサポートとは?

被後見人の財産を横領してしまい、警察に逮捕されたときは、弁護士によるサポートが必須といえます。

  1. (1)逮捕後の刑事手続きの流れ

    警察に逮捕されると、まず警察署で身柄拘束を受けて取り調べを受け、48時間以内に検察官へ送致されます。送致されると、検察官は24時間以内に起訴・釈放のどちらかを判断しなくてはなりません。
    ところが、この段階では取り調べが不十分で起訴、釈放の判断が難しいケースも少なくありません。その場合、検察官は裁判官に対して身柄拘束の延長を求めます。
    これが勾留請求です。
    裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長によってさらに10日間の合計20日間の身柄拘束を受けます。
    勾留が満期になる日までに、検察官が起訴・釈放を決定します。
    起訴されると刑事裁判に移行し、判決の日に刑罰が言い渡されます。

    一方で、検察官が不起訴処分を下した場合は、刑罰が言い渡されることも前科がつくこともありません。

  2. (2)逮捕後に弁護士ができるサポート

    逮捕されてしまった場合、勾留が決定するまでの72時間は家族であっても逮捕された本人とは面会ができません。
    この期間に外部と連絡を取るには、自由な面会が認められている弁護士に連絡役を依頼するのが唯一の手段です。

    また、勾留決定が下されたとしても、弁護士のサポートによって準抗告や勾留理由開示請求、勾留取り消し請求などで対抗することが可能です。
    不起訴処分の獲得を目指して、被後見人の財産管理権を有する人との示談交渉も一任できます。

    そもそも、逮捕されてしまった本人は身柄を拘束されているので、示談交渉も物理的に不可能です。現実的に考えても、逮捕されてしまった場合は弁護士によるサポートがなければ、示談交渉を進めることは難しいでしょう。

5、まとめ

成年後見人となった人が被後見人の財産を横領すると、横領罪よりも厳しい刑罰が規定されている「業務上横領罪」が適用されます。
たとえ親族だとしても業務上横領罪が成立して、厳しい処罰が下される可能性があるので、早い段階から弁護士に相談してサポートを受けましょう。
また、このような場合の示談交渉は、親族間だからこそ難航しやすいので弁護士に一任するのがベストです。

被後見人の財産に対する横領トラブルの解決は、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスにお任せください。
示談交渉のほか、逮捕されてしまった場合は、早期釈放や不起訴処分の獲得を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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