役所で職員に暴言を吐いたらどうなる!? 警察逮捕もあり得る公務執行妨害の話

2019年03月05日
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役所で職員に暴言を吐いたらどうなる!? 警察逮捕もあり得る公務執行妨害の話

平成29年10月、神戸市子ども教育センターの職員に対する公務執行妨害の疑いで無職の男が逮捕される事件が起きました。男は、虐待の可能性について聴取中に激高し、職員の胸ぐらをつかんだと報道されています。

冒頭の事件のように、ふとしたきっかけから役所の職員などと口論となったり、もめ合ったりすることは珍しいことではありません。しかし、業務中の公務員に対する暴言や暴行行為によって、公務執行妨害で逮捕されてしまう可能性があります。

役所の職員とトラブルを起こしたことをきっかけに、警察から連絡がきた、もしくは何らかの罪に問われるのではないかと心配になることは、家族として当然のことです。公務執行妨害の概要やその他の関連する犯罪、万一逮捕されたときの対処法について神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、公務執行妨害とは何か

  1. (1)公務執行妨害という犯罪

    公務執行妨害罪とは、冒頭の事件のように、業務中の公務員に対して暴行や脅迫をすると成立する犯罪です。
    公務執行妨害罪は、刑法第95条第1項に定められており、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた」場合に成立することになるため、捜査を受けることになります。

    なお、公務執行妨害罪を規定することによって守ろうとする対象は、「公務員個人」ではなく、「公務」そのものです。よって、休憩中や休暇中の公務員に暴行または脅迫をしたとしても、原則として公務執行妨害に問われることはありません。ただし、個人に対する暴行罪や脅迫罪が成立する場合があります。

  2. (2)公務員にあたる職種

    公務執行妨害罪における公務員の定義については、刑法第7条に定められています。

    代表例は警察官ですが、それ以外にも消防士や自衛官、議員や公立学校の教員など、国や地方公共団体に所属する公務員であれば広く該当します。したがって、市役所の窓口職員や児童相談所の役員、税務署員はもちろん、ゴミ収集車のドライバーまで、およそ官公庁の公務に携わる人が公務執行妨害罪における公務員に該当します。

    また、市区町村から委託を受けて公務を行う民間業者も、公務中であれば公務員とみなされることがあるため、その公務を暴行または脅迫によって妨害すれば、公務執行妨害が成立しうることになります。

  3. (3)公務執行妨害の刑罰はどの程度か

    公務執行妨害容疑で逮捕、起訴され、裁判で有罪が確定すると、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」となります。

    法定刑は幅広く設定されていますが、とっさに手を振り払ったケースや、意図的に突き飛ばしたケースなど、行為の悪質度に応じた刑を選択することができるようにするためと考えられます。最終的な量刑は、犯行内容と反省しているかどうか、前歴や前科はあるかなどによって判断されていきます。

2、公務執行妨害における暴行と脅迫

公務執行妨害罪が成立するのは、相手が業務中の公務員であることに加え、暴行または脅迫があるときです。この「暴行または脅迫」にあたる行為について、あらかじめ知っておく必要があります。

たとえば、役所の窓口で、あなたの家族が思っていたより年金受給額が少ないと知り、口論やもみ合いとなってしまったケースを考えてみましょう。

  1. (1)役所職員の腕を振り払ったら罪に問われるか

    公務執行妨害における「暴行」は、刑法犯の暴行罪よりも幅広くとらえられます。業務中の公務員に向けられた不法な「有形力の行使」と考えらえており、たとえ実際に業務を妨害する結果とならなくても、「暴行」に該当すると評価されることになります。

    たとえば、殴る蹴るなどの直接的な暴力だけでなく、手を振り払う、モノを投げる、証拠を壊すなどの行為が「暴行」と評価される可能性があります。相手の役所職員がケガをしても、していなくても、実際に業務の妨害となっても、ならなくても、公務執行妨害罪に問われ、逮捕されることがあるでしょう。

  2. (2)「殺す」という暴言は脅迫にあたるか

    もし、口論になった末、「殺す」と発言していたらどうでしょうか。脅迫罪や公務執行妨害にあたるのではないかと、後になって不安になるかもしれません。

    公務執行妨害罪における「脅迫」は、恐怖心を起こさせる目的で、他人に害悪を加えることを通知することであると考えられています。つまり、他人に害悪を加えるような内容であれば、脅迫が成立する可能性があるということです。

    つまり、公務執行妨害罪は、いわゆる暴言と言われるようなことを吐くことによって公務を妨害しようとした意図があれば、罪に問われる可能性があります。公務執行妨害罪そのものが、実際に公務の妨害をしていなくても成立するためです。

  3. (3)関連する他の犯罪との関係

    公務執行妨害罪は、ひとつの行為で複数の刑法に触れる可能性がある犯罪です。たとえば冒頭の事件では、公務員の公務を妨害した「公務執行妨害罪」と、職員個人に対する「暴行罪」が同時に成立していると考えられます。もし、該当の職員が負傷していれば、傷害罪が該当することになったでしょう。

    このように、公務執行妨害罪と同時にそのほかの犯罪が成立するときは、より刑罰が重い犯罪を基準に刑罰が決められることになります。

    たとえば、公務執行妨害罪と暴行罪に問われたときについて考えてみましょう。前述のとおり、公務執行妨害罪の刑罰は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。他方、暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(刑法208条)と、公務執行妨害罪より軽い刑罰が設定されています。よって、公務執行妨害罪で規定された罰則を基準に処罰を受けることになります。

    また、物を故意に壊したなど器物損壊罪の場合も「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料(刑法第261条)」のため、公務執行妨害罪が優先されます。

    したがって、役所職員に殴りかかった、窓口の椅子を投げ飛ばして壊した、といった場合は公務執行妨害罪で逮捕や捜査されることが多くなっています。

    一方、公務員ともみ合ってケガをさせてしまった場合は、傷害罪に該当します。傷害罪の刑罰は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法204条)なので、公務執行妨害罪ではなく傷害罪として捜査が進められます。

    さらに、脅迫罪は相手を暴言や罵声によって恐怖感を与える行為で成立する罪ですが、「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」(刑法222条)と公務執行妨害罪より軽い罪です。よって、「殺すぞ」などと公務中の役所職員に暴言を吐いて脅迫したというケースであれば、脅迫罪より重い公務執行妨害罪で逮捕されたり、捜査を受けたりする可能性が高くなるといえるでしょう。

3、家族が公務執行妨害で逮捕されたときするべきこと

釈放されるか、捜査の末に刑事裁判となるかは、逮捕後72時間以内が勝負といわれます。もし家族が公務員に脅迫行為をしてしまった場合、どのような流れが待っているかについて知っておきましょう。

公務執行妨害容疑で逮捕されると、そのまま警察に拘束されます。警察署では48時間以内の期限で身柄を拘束され、捜査や取り調べがなされます。警察はその間に釈放するか検察へ送致するかを判断します。

検察へ送致されると、釈放して在宅事件扱いとするか、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」の必要があるかどうかを、逮捕から最大78時間、送致から24時間以内に判断します。もし勾留が決定すると、さらに最長20日間、帰宅できなくなる可能性があります。

ここで大切なことは、逮捕から72時間は基本的に弁護士しか自由に接見ができないということです。家族や友人知人は、警察や検察を訪れても面会させてもらうことができず、本人から事情が聞けないため不安になることも少なくありません。

万が一、家族が逮捕されてしまったときは、本人の状況を把握するためには弁護士に相談して接見をしてもらう必要があります。

4、まとめ

公務執行妨害の容疑によって、あなたの大切な家族が逮捕されてしまったら、72時間以内の行動がその後の人生を大きく左右します。後日になってから逮捕される可能性もゼロではないため、できるだけ早く弁護士に相談することが大切といえます。

できるだけ早期に事件を解決するためにも、前科を付けないようにするためにも、心配な出来事が思い当たる場合は、できるだけ早急に弁護士に相談することをおすすめします。

身近な家族が逮捕されたときは、ベリーベスト法律事務所・神戸オフィスへ相談してください。刑事事件に対応した経験が豊富な神戸オフィスの弁護士が、依頼内容に適した対応を判断し、全力を尽くします。

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