神戸の家族がストーカーで警告・禁止命令・逮捕された方が知っておくべき手続き

2019年01月31日
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神戸の家族がストーカーで警告・禁止命令・逮捕された方が知っておくべき手続き

兵庫県神戸市やその近郊でも、ストーカー事件は起きています。好意を持っていた女性宅へ無言電話をしたり、ピンポンダッシュを繰り返したりしたことで逮捕されてしまったという件に関する報道がなされたこともあります。
もし、「神戸に住んでいる息子がストーカー容疑で警察から警告された」という連絡を受けたとしたら……。親として、どう対応したらよいのでしょうか。警告や禁止命令を受けるケースはもちろん、逮捕される事例は全国的に増えており、神戸も例外ではありません。

警告、禁止命令、さらには逮捕との違いや、ストーカー規制法特有の手続きなどについて、神戸オフィスの弁護士が解説します。万が一の際、ぜひ参考にしてください。

1、ストーカー規制法とは?

ストーカー規制法の正式名称は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。平成11年に起きた、ストーカー行為の末に殺人に至った「桶川ストーカー殺人事件」等の影響を受け平成12年に立法・施行されました。

また、平成28年に大きな改正が行われ、罰則の強化やインターネットを介したストーカー行為などが規制対象となっています。ストーカー規制法で規制される行為について知っておきましょう。

  1. (1)つきまとい行為がストーカーになる流れ

    ストーカー規制法では、前提として、「ある特定の人への好意の感情や恋愛感情を満たそうとし、それが満たされなかった場合に恨みを晴らす」目的で行われたケースのみ、ストーカー規制法による規制対象と定めています。

    そのうえで、問題になる行為を「つきまとい等」と「ストーカー行為」というふたつに分けて規定しています。

    具体的には、恋愛感情や好意がある(あった)相手やその家族などに「つきまとい等」の行為を繰り返すことにより、「ストーカー行為」とみなされることが規定されています。「つきまとい等」に該当する行為を1回だけ行ったというケースでは、「ストーカー行為」には該当しないということです。

    なお、恋愛感情や好意の感情に基づかず、つきまとい等の行為をしたときは、状況によってその他刑法や条例をもとに対応されることになります。

  2. (2)つきまとい行為とは

    ストーカー規制法では、次の8つの行為を「つきまとい等」として定めています。

    • つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき
    • 監視していることを相手に告げる行為
    • 相手の意思に反した面会や交際の要求
    • 乱暴、粗野な言動
    • 無言電話、連続した電話、ファックス、メール、SNSの送信
    • 汚物などの送付
    • 名誉を傷つける行為
    • 性的羞恥心の侵害


    具体的には、次のような行為をすると、つきまとい等とみなされる可能性があります。

    • 相手の家や職場、学校の近隣で待ち伏せたりうろついたりして実際に出向く行為
    • 帰宅を見計らって「今日もかわいかったね」などと電話するような行為
    • 相手が断っても交際を申し込んだり、プレゼントを受け取るよう強要したり、もしくは相手をののしる行為
    • 無言電話やわいせつな電話などに限らず頻繁に電話やメールを送りつける、動物の死体や汚物を送りつけるなどの行為

  3. (3)ストーカー行為とは

    ストーカー行為は、上記の「つきまとい等」にあたる行為を、「同一の相手」に対して、「繰り返し」することを指します。

    もしかしたら、あなたの家族も、ストーカー規制法に該当する行為をしていたとしても、自分はストーカーではないと考えている可能性もあるでしょう。実際ニュースになった事例でも、つきまとい等の行為自体は認めても、ストーカーであることは否定するケースが散見されます。

    もし、逮捕される前の状態であれば、まずは、正確に状況を確認する必要があるかもしれません。

2、ストーカー規制法に基づいた警告・禁止命令・逮捕の流れとは

ストーカー規制法に違反する行為をすると、警告、禁止命令を受ける手順を取る場合と、いきなり逮捕される場合の2つのケースが想定されます。

  1. (1)警告・禁止命令とは

    「警告」と「禁止命令」は、ストーカー規制法に定められた独特の手順です。

    ●警告
    つきまとい等の被害者から警告申込書が提出されることで行われます。事実「つきまとい等」があることと「加害者がその行為を繰り返すおそれがある」という2つの条件が満たされる場合は、警察署本部長等から「反復してその行為をしてはいけない」と「警告」を受けることがあります。

    なお、警告自体に罰則規定はなく、警告後につきまとい等を続けても、直ちに処罰を受けるものではありません。しかし、「つきまとい等」を繰り返すと「ストーカー行為」に該当するとみなされ、処罰を受ける可能性が高まります。

    原則、警告を受けた時点で、たとえ誤解であっても、どのような理由があろうと、相手とは一切接触しないほうがよいでしょう。

    ●禁止命令等
    警告を受けてもつきまとい等を続けると、被害者の申し出または都道府県公安委員会の職権で、公安委員会から「禁止命令」を受けることがあります。禁止命令に先立っては、聴聞という手続きで加害者の言い分を聞く機会が設けられていますが、緊急の場合は後回しになることもあります。

    禁止命令等が出されると、1年間効力が続きます。被害者の申し出または職権により、聴聞を経たうえで期間が更新されることもあるでしょう。

  2. (2)逮捕される場合とは

    原則、逮捕とは個人の身柄を拘束する、一種の強制処分です。よって、逃亡や証拠隠滅の可能性がある、被害者が危険にさらされているなどとみなされたケースのみ、逮捕されることになります。

    前述のとおり、ストーカー規制法では、緊急性が高いとみなされない限りは、ある程度の段階を踏んで逮捕に至ることになります。

    <段階を踏む場合>
    ストーカー規制法では、まずは警告、禁止命令と段階を踏まれることが普通です。しかし、警告や禁止命令を受けてもストーカー行為を続けると、逮捕されることになります。

    逮捕され、有罪になれば、状況によって、下記のとおり懲役刑を含む刑罰が規定されています。

    • ストーカー行為をした人……1年以下の懲役または100万円以下の罰金
    • 禁止命令等に違反してつきまとい等やストーカー行為をした人……2年以下の懲役または200万円以下の罰金
    • 上記以外で禁止命令等に違反した人……6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金


    <被害者が告訴したなど、緊急性が高いと判断された場合>
    ストーカーの被害者が、警察に被害届や告訴状を提出して受理されると、ストーカー規制法違反で逮捕される可能性が高まります。ただし、ストーカー行為は、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪なので、被害者の訴えがなくても罪を犯したことが明らかであれば、逮捕され裁判にかけられることもあるでしょう。

    また、つきまとい等やストーカー行為をする過程で、相手の住居に勝手に入る、相手を脅す、持ち物を盗むなど、刑法違反を犯すケースもあります。その際はそれぞれ、「住居侵入罪」や、「脅迫罪」、「窃盗罪」が成立することになり、ストーカー規制法違反容疑以前に、刑法違反として逮捕されることもあります。

3、逮捕されたらどうなるのか

逮捕されたときは、刑事訴訟法に基づき捜査を受け、罪を問われることになります。逮捕された者が未成年の場合は、男女問わず「少年事件」として扱われ、更生を目指した処分が下されます。ただし、14歳以上であれば未成年者であっても、警察での捜査は行われますし、事件の内容によっては刑事罰を受ける可能性があることを忘れてはなりません。

  1. (1)逮捕から勾留に続く身体拘束

    逮捕されると「被疑者」として警察の留置場に入れられ、取り調べを受けます。警察は逮捕から48時間以内に捜査を終え、事件と被疑者の身柄を検察へ送致するか否かを判断します。

    被疑者が検察へ送致されると、逮捕から72時間、もしくは送致から24時間以内に、引き続き身柄を拘束したまま取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」の必要性を検討されます。勾留が決定すれば、さらに最長20日間、身柄を拘束され続けることになります。

    なお、少年事件であっても、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間の間は、家族との面会(接見)は制限されます。被疑者と自由な接見を行える者は、弁護士だけに限られる点に注意が必要です。

    なお、ストーカー事件の場合は、被害者への働きかけや逆恨みが懸念されるケースが多く、勾留に至る可能性もあります。

  2. (2)起訴から裁判、判決に至る流れ

    被疑者が成人の場合、身柄を拘束された場合は勾留期間中に、検察官が今回の事件を不起訴にするか起訴するかを決定します。不起訴になれば、前科がつくことはありません。すぐに、釈放されて事件は終了します。

    起訴されたときは、刑事裁判に進みます。起訴にも種類があり、罰金を払って終わる「略式裁判」と、法廷に立つ「正式裁判」があります。いずれにしても起訴されると日本では99%有罪になり前科がつきます。

    被疑者が14歳以上の未成年者であれば、取り調べが終わった段階で家庭裁判所へ送致され、それぞれ更生を目指した処分が下ることになります。

  3. (3)刑罰の種類

    ストーカー事件で受ける刑罰の可能性としては、罰金刑か懲役刑があります。罰金は、指定された罰金を払えば釈放され、前科はつくものの事件が終了します。

    懲役刑は、執行猶予がつけば釈放され、執行猶予期間を無事にすごせば刑務所に入らなくても済みます。一方、執行猶予がつかない実刑判決を受けると収監されて刑務所に入ることになります。

    いずれのケースでも、被害者から損害賠償を請求されたら、応じた方が厳しい処分を免れることができる可能性が高まります。そこで、刑事裁判に至る前に「示談」を行い、被害者と和解することを目指すことができます。一般的に示談では、被害者へ示談金を支払い反省や今後についての約束を行う一方、被害者に罪を許してもらうことを指します。警察や検察は、被害者の処罰感情を非常に重視するため、示談が成立すると、勾留や起訴を回避できる可能性が高まります。

    ただし、示談は加害者本人やその家族が行おうとすると、被害者感情を刺激する結果となりがちです。弁護士に依頼し、適切な交渉を進めることをおすすめします。

4、まとめ

警察に逮捕されると、逮捕から勾留が決定するまでの期間中は家族であっても、面会や差し入れなどを行える「接見」が制限されます。逮捕された本人はもちろん、家族も不安にさいなまれることでしょう。特に、逮捕されてしまった家族が14歳以上の未成年者であればなおさらです。

しかし、弁護士であれば自由な接見が許されています。できるだけ早く弁護士を依頼し、接見を通じて現状の確認やアドバイスを行うことが最初の1歩となるでしょう。また、早期の釈放や起訴を回避するため、示談交渉をはじめとした弁護活動を検討することができます。

もし家族が、「ストーカー規制法違反容疑がかけられている」、「逮捕されてしまった」などの状況に陥っているのであれば、ベリーベスト法律事務所・神戸オフィスへ、いち早く相談してください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、将来に残る大きな傷が残らないよう、全力で弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています