身内が投資詐欺で逮捕された?! 家族ができることを弁護士が解説します

2019年05月27日
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身内が投資詐欺で逮捕された?! 家族ができることを弁護士が解説します

神戸でも投資詐欺は後を絶ちません。平成23年、「出資すれば配当が1年で25%つき、元本も保証する」などと架空の投資話を持ちかける詐欺事件が起きました。自らの立場を利用して相手を信用させておよそ1300万円をだましとり、その金はギャンブルなどに充てていたと報道されています。神戸地裁は平成27年5月19日、男に懲役3年6ヶ月の実刑判決を言い渡しました。

詐欺容疑で逮捕された末、有罪となり、執行猶予がつかなければ、そのまま刑務所に収監されてしまいます。考えたくはないものですが、あなたの身内が詐欺で逮捕されたとしたら、どのような対応をとればよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、投資詐欺とは

投資詐欺は、端的にいえば「うまい投資話を持ちかけて出資させ、金銭を詐取する」犯罪です。これは刑法第246条に定められている詐欺罪に該当します。

  1. (1)投資詐欺で問われる罪と刑罰

    詐欺罪は、人を欺き、現金などの財産等をだましとった場合に成立し、有罪となった場合は「10年以下の懲役」が科されます。(刑法第246条)

    詐欺行為によって得た利益は、没収もしくは追徴される可能性があります。懲役刑のみが定められているため、有罪判決を受けたときは、窃盗罪(刑法第235条)などの場合と違い、罰金刑で済むことはありません。また、実際に詐欺によって金銭を得ることができなくても、未遂罪が設定されているため、処罰を受ける可能性があります。さらに、初犯であっても執行猶予がつかなければ、即刑務所に収監される可能性もあるのです。

  2. (2)投資詐欺事件の傾向

    投資詐欺は、一般的なパターンとして、「高配当を約束する」、「値上がり確実な未公開株を配分する」といったうたい文句で資金を集めます。そののち、しばらくの間配当金が約束通りに支払われるケースもあります。しかし多くの場合、集めた出資金をそのまま配当金の支払いに充てる自転車操業が実体で、次第に支払いが滞り、いずれ破綻します。

    また、会社ぐるみで行われるような組織的な犯行もしばしば発生します。本格的なパンフレットが用意されていたり、広告を見聞きしたりすると、実体のない事業であってもつい信じてしまうこともあるでしょう。組織的な詐欺事件では、被害額も巨額となるケースが多く、裁判においても悪質性が高いと評価され、量刑が重くなる可能性が高まります。

    組織的な犯行であれば、首謀者でなく、勧誘に関わった人物も、広く取り調べの対象となる可能性があります。

2、投資詐欺で逮捕! すぐに家族が取るべき行動

万が一、家族が逮捕された場合は、すぐに弁護士を依頼することをおすすめします。

逮捕後72時間以内という限られた時間で、適切な弁護活動が行えるかどうかで、その後の人生に与える影響が大きく変わる可能性があるからです。

  1. (1)逮捕後の流れ

    犯罪をおかした疑いがある者は「被疑者(ひぎしゃ)」と呼ばれ、逮捕される可能性があります。逮捕された被疑者は警察に連行され、最長48時間、警察において身柄の拘束を受けます。多くの場合で、その間、取り調べを受けることになります。そこで疑いが晴れなければ、逮捕から48時間以内に検察に送致されます。

    送致を受けた検察は、引き続き身柄拘束を続けて捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要かどうかを、逮捕から72時間、送致から24時間以内に判断します。検察官が必要と判断した場合、裁判官に対し「勾留請求」を行います。

    裁判所に勾留が認められると、最長でさらに20日間もの間、身柄が拘束されます。これだけの長期間、仕事や学校に行けないとなれば、仕事や人間関係への影響が出てしまう可能性を否定できないでしょう。

    それを避けるためには、逮捕直後から弁護活動を開始し、検察官が勾留請求することを防ぐことが非常に重要なのです。

  2. (2)早急に弁護士を依頼すべき最大の理由

    投資詐欺容疑で逮捕されてしまうと、勾留の決定が下されるまでのもっとも重要な72時間は、家族であっても原則として面会は許可されません。しかし、弁護士であれば、時間の制限や回数の制限を受けず、警察官の立ち会いなしで接見することができます。

    無料で利用できる当番弁護士制度はありますが、実際に弁護活動をしてほしいときは、改めて依頼する必要があります。また、当番弁護士が全員、刑事事件に対応した経験が豊富だとは限らない点にも注意が必要です。

    刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士を依頼することで、被疑者は家族を含め外部との連絡をとることができます。また取り調べにどのように対応するかについても相談することができ、精神的な支えにもなるでしょう。

    事態の早期解決のためには、取り調べの当初から不利な供述をしないためのアドバイスを弁護士から直接受けることが必要です。弁護士によるサポートは、今後の人生にとって、非常に重要となるでしょう。

    これらの弁護活動を早期に行い、検察官による勾留請求を阻止する可能性を高めるために、早急に弁護士に依頼することが必要になるのです。

3、逮捕後、弁護士が行う弁護活動とは

弁護士に依頼することで、勾留を阻止し、早期の釈放につながる可能性を高めることができるでしょう。前述の逮捕直後のサポートのほかに、具体的には以下のような弁護活動が検討されます。

  1. (1)捜査機関へ意見書を提出

    逮捕による身柄拘束は「証拠隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」がある場合にのみ認められます。逆にいえば、これらのおそれがないとする主張が通れば、身柄が解放される可能性が高まるのです。弁護士は、被疑者に代わって証拠を集め、逃亡のおそれがないことや、証拠隠滅がなし得ないことなどを主張する意見書を作成し、捜査機関へ提出します。

    検察官がこれ以上身柄を拘束する必要がないと判断すれば、72時間以内で釈放され「在宅事件扱い」として自宅に帰ることができます。以降は要請に応じて出頭し、捜査に協力することになります。

  2. (2)示談交渉

    示談とは、民事的な賠償責任を果たすとともに、事件を当事者同士で解決しようとする話し合いです。一般的には、加害者が被害の賠償を約束し、被害者は賠償してもらうとともに罪を許し処罰を求めないという「宥恕(ゆうじょ)文言」を示談書に記載してもらうことを目指します。被害者にとっても、民事裁判によって損害賠償請求などを行う時間や手続きの手間をかけることなく、賠償金を受け取ることができるというメリットがあります。

    示談が成立して被害者に賠償することができれば、事後的に詐欺の被害を回復することができたことになるため、有利な情状となります。また、宥恕文言つきの示談が成立すれば、被害者が処罰を求めないという理由から、情状を酌量される可能性が高まります。示談の成立が早ければ早いほど、事態の早期解決につながることでしょう。

    しかし、示談交渉を当事者間で行うことは、感情的になることもあり、難しいものです。また、交渉の難易度は被害人数や被害額にも左右されます。第三者であり、賠償金の相場や手続きに精通した弁護士に依頼することで、スピーディーに交渉を進めることができるでしょう。

  3. (3)勾留後の準抗告

    もし勾留が認められてしまったとしても、弁護士により「準抗告」という不服申し立てをする方法もあります。準抗告によって、その勾留決定の判断が正しかったのかどうか、3人の裁判官の合議体でもう一度判断してもらうことができます。

  4. (4)不起訴処分獲得のための弁護

    投資詐欺で逮捕された場合、前科をつけないためには不起訴処分を獲得するか、裁判で無罪判決を得るしかありません。日本においては、起訴後の有罪率は99%以上にのぼるため、第一に起訴を阻止することを目的とし、勾留の満期で釈放できるような弁護活動を行います。

    投資詐欺においては、事業の実態があってだましたわけではないことや、故意にだます意図がなかったことなどを主張する証拠を提示するなどの活動が考えられます。

  5. (5)起訴後の保釈請求、裁判での弁護

    詐欺容疑を認めているのであれば、起訴後の保釈請求手続きや保釈金の準備を行います。一刻も早い保釈を目指し、裁判が終わるまで自宅で過ごすことができるように働きかけます。

    また、裁判においては「悪質性」も量刑に大きく影響を与えます。重すぎる刑罰が科せられないように、悪質性の否定につながる証拠を集め、弁護活動を行います。

4、まとめ

投資詐欺は、時流に合わせてさまざまな形で行われる犯罪です。出資金を募るために人から人にもうけ話を広めていく過程で、知らないうちにあなたの家族が加害者側になってしまう可能性もありえます。組織的な犯罪とみなされてしまえば、その捜査には一定の期間が必要とされ、身柄の拘束も長期にわたるおそれがあります。

万が一、あなたの家族が詐欺容疑で逮捕されたのならば、まずはベリーベスト法律事務所 神戸オフィスで相談してください。刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士が、将来への影響を最小限にとどめるために力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています