贖罪寄付(しょくざいきふ)とは? 効果や手続きの方法・供託との違い
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神戸市役所の公表によると、令和1年における刑法犯の認知件数は1万1713件でした。年々減少傾向にはあるものの、いまだこれだけの犯罪が発生している状況です。神戸市では防犯カメラの設置を積極的に行っているので、防犯カメラの映像から犯罪が特定されたケースも少なくないと考えられます。
犯罪を行い警察で取り調べを受けることになった人は、反省を示し、処分を少しでも軽くできる方法があれば知りたいと模索することでしょう。
被害者がいる事件の場合は示談交渉が有効ですが、被害者がいない事件や示談ができないケースにおいて有効になり得るのが「贖罪寄付(しょくざいきふ)」という方法です。
ただし、贖罪寄付には、有効に働くことが期待できるケースと、必ずしもそうではないケースがあるため、ポイントを押さえおく必要があります。
本コラムでは、贖罪寄付を行うための方法や手続き、得られる効果について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
1、贖罪寄付の意味と効果
まず、贖罪寄付の意味や効果を確認しておきましょう。
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(1)贖罪寄付とは
贖罪(しょくざい)とは、善良な行いや金品を寄付するなどの実際の行動によって、自分の犯した罪や過失を償うことを意味する言葉です。簡単に言えば、罪滅ぼしとも表現できるでしょう。
贖罪寄付(しょくざいきふ)とは、罪を償う気持ちをもって公的な団体等に寄付をする制度です。
本来、犯してしまった罪を償うためには、被害者に謝罪し、生じた損害や慰謝料を含めた示談金を支払うことが何よりも優先されるべきでしょう。しかし刑事事件では、被害者のいないケースや被害者と示談ができないケース等があります。そういったケースでは、示談や謝罪という形で反省の意思を示すことができません。
その場合、犯罪被害者の救済活動を行う団体などに寄付をするという間接的な方法をもって、反省の意思を示すことができます。 -
(2)贖罪寄付で得られる効果
贖罪寄付をすると、寄付した先の団体から「贖罪寄付を受けたことの証明書」が発行されます。この証明書を裁判所に提出すると、情状のひとつとして考慮されます。
つまり、贖罪寄付をすることで有利な情状として考慮され、処分が軽くなるという効果が期待できます。たとえば、不起訴処分の獲得、起訴された場合は執行猶予の獲得や減軽を得られる可能性が高まるでしょう。
ただし、贖罪寄付はあくまで情状のひとつです。贖罪寄付をすることで、必ず処分が軽くなるというわけではない点は、理解しておかなければなりません。
2、贖罪寄付と供託
贖罪寄付と混同しているケースが多いのが「供託(きょうたく)」です。贖罪寄付と供託は異なる制度であり、その内容も異なります。
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(1)供託とは
供託は、法令の規定により、金銭や物品等を供託所または一定の者に寄託する(預ける)ことをいいます。中でも、弁済供託は、債権者が弁済の受領を拒み、またはこれを受領することができないとき、または弁済者の過失でなく債権者が誰であるかを確知することができないときにすることができます(民法第494条等)。
たとえば、被害者が示談金の受け取りを拒んでいるような場合、加害者は法務局に示談金相当額を供託します。被害者には、供託した旨の通知が届く様にすることができますから、法務局から通知を受けた被害者は、還付請求をすれば間接的に示談金相当額を受け取ることができます。
実際に被害者が供託金の還付請求をするかどうかは別として、供託したことを示す書類を裁判所に提出することで、被害回復に向けた活動をしたとして考慮される可能性があります。 -
(2)贖罪寄付と供託の相違点
贖罪寄付と供託では、主に次のような点において相違点があります。
●取扱機関の違い
贖罪寄付は、日本弁護士連合会や兵庫弁護士会といった都道府県の弁護士会や法テラスなどの団体のほか、交通遺児育英会や日本財団や日弁連交通事故相談センターなどでも申し込みができます。
このように、贖罪寄付は任意の団体が取り扱うのに対し、供託は国(法務局)でのみ取り扱われます。
●使途の違い
贖罪寄付の寄付金は、被害者個人のためではなく、犯罪被害者や難民のための法律援助事業といった公益のために使われます。一方、刑事事件の加害者による供託は、その犯罪行為における被害者へ間接的に示談金を支払うことを目的とします。
●被害者の氏名や住所の特定
供託では供託金を支払う相手(被供託者)を指定しなければいけないため、被害者の氏名・住所が必要です。しかし、刑事事件において、被害者の氏名や住所を加害者が教えてもらえることは通常ありません。基本的には弁護士を通して情報を入手することになります。
一方、贖罪寄付では、被害者を特定する必要がありません。そのため被害者の氏名・住所が分からない場合や、被害者のいない犯罪であっても可能です。
●金額の考え方
刑事事件において供託をする場合、被害者へ示談金を間接的に支払うことが目的のため、示談金相当額を供託します。しかし、贖罪寄付は示談金相当額を寄付する必要はなく、ご自身が決めた金額を寄付することができます。
それぞれのケースにおける具体的な金額は、弁護士などに相談して決めるとよいでしょう。
3、贖罪寄付が検討できるケース
贖罪寄付によって刑事処分を軽減できる可能性がある代表的なケースとしては、次の3つが挙げられます。
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(1)被害者がいない事件
覚せい剤や大麻使用などの薬物犯罪や交通違反、贈収賄事件など、被害者がいないケースです。
贖罪寄付によって反省の意思を示すほか、犯罪で得た利益があれば全額寄付し、手元に残らないようにすることがポイントです。 -
(2)被害者がいても特定できない事件
盗撮などの犯罪では、数多くの被害者がいるものの、個人を特定できないことがあります。
このような事件でも贖罪寄付が検討できます。 -
(3)被害者と示談できなかった場合
「被害者と示談しようとしたが処罰感情が強くまったく応じてもらえない」、「被害者が亡くなってしまった」といった場合も、贖罪寄付が有益になることがあります。
なお被害者と示談ができない場合、贖罪寄付でなく供託を選択した方がよいケースもあるので、弁護士に相談して適格な方法を選択する必要があります。
4、警察から取り調べを受けるときには弁護士に相談を
刑事事件では、初期の対応がその後の流れを左右するといっても過言ではありません。警察から呼び出されている場合や、被疑者として取り調べを受けることになったときは、できるだけ早期に弁護士へ相談することが大切です。
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(1)逮捕直後も面会が可能
逮捕された場合、逮捕後72時間は面会や外部との連絡は認められません。もちろん、ご家族や親族であっても同様です。しかし、弁護士は接見交通権が認められているため、逮捕直後であっても面会が可能です。
取り調べでの対応についてのアドバイスや今後の見込み、捜査状況を共有してもられるほか、家族への伝言を依頼することも可能です。 -
(2)被害者との示談交渉を依頼できる
被害者がいる事件では、示談の成立が処分に大きく影響することも少なくありません。しかし刑事事件においては、加害者が被害者と直接示談交渉をすることは難しいでしょう。
弁護士は代理人として、被害者感情に寄り添いながら示談交渉を進めることができます。
また、示談交渉ができないケースや、示談するべき相手がいない場合は、贖罪寄付や供託を検討するなど、情状を得るための活動を行います。 -
(3)社会的影響を最小限にとどめるための活動
逮捕されてしまうと、身柄を長期間にわたって拘束される可能性があります。拘束期間が長くなれば、社会的な影響が大きくなるのは避けられません。
弁護士は社会的な影響を最小限にとどめるために、早期釈放や勾留阻止に向けた活動を行います。 -
(4)不起訴獲得や減軽の可能性が高くなる
贖罪寄付や供託などのアドバイスのほか、弁護士は少しでも有利になる主張や証拠をあつめ、不起訴獲得に向けた弁護活動を行います。
起訴されたときも、執行猶予獲得や減軽に向けた活動を行い、最後まで徹底的にサポートを行います。
5、まとめ
本コラムでは、贖罪寄付の効果や方法、供託との違いを解説しました。
被害者のいない刑事事件などの場合、贖罪寄付を行うことで情状のひとつとして裁判所に考慮してもらえる可能性があります。
時間を巻き戻すことはできず、犯してしまった罪は消えないでしょう。しかし、反省を示し最善の結果になるよう可能な限り行動することは、刑事事件においては特に大切です。
ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスには、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しています。刑事事件は初動が重要です。刑事事件をおこしてしまい不安を抱えている方は、ご相談ください。神戸オフィスの弁護士が迅速に対応し、最後まで全力でサポートします。
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