親名義の土地を相続したら知っておきたい相続の流れや注意点

2021年10月28日
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親名義の土地を相続したら知っておきたい相続の流れや注意点

路線価は、相続税や贈与税を算出する上で大切な情報です。国税庁が公表する、令和元年分・都道府県庁所在都市の最高路線価によると、神戸市内においては『中央区三宮町1丁目三宮センター街』が最高路線価(1平方メートルあたり490万円)でした。

親が亡くなり親名義の土地を相続することになった場合、何から手をつければ良いのかがわからず、頭を悩ませる方は少なくありません。

本コラムでは、親名義の土地を相続する流れと注意点について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、親名義の土地を相続するまでの流れ

土地を所有する親が亡くなり、親名義の土地を相続する場合は、基本的には次のような流れで相続手続きを進めことになります。

  1. (1)遺言書の有無を確認

    亡くなった親(被相続人)が遺言書を作成している場合は、基本的にその内容に従って相続をすることになります。そのため、まずは遺言書の有無を確認します。

    自筆証書遺言の形式であれば、基本的には家庭裁判所の検認の手続きが必要ですが、例外的に法務局で保管されている自筆証書遺言であれば検認は必要ありません。また、公正証書遺言の形式である場合、検認は不要です。

  2. (2)遺産分割協議

    遺言書が残されていない場合などには、法定相続分に従って相続することになります。しかし相続人が複数いる場合には、遺産分割協議によって、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを具体的に決めることになります。

    なお、土地の分割方法には、次にあげる4つの方法があります。

    • 現物分割
      『土地をAとBで1/2ずつに分筆してそれぞれが取得する』といった形で現物である土地をそのまま分割する方法です。
    • 代償分割
      『Aが土地を取得する代わりに、Bに○○万円支払う』といったように、特定の相続人が土地を取得する代わりに、他の相続人に相応の代償を支払うという方法です。
    • 換価分割
      土地を売却してその代金を相続人で分割する方法です。
    • 共有分割
      土地を相続人全員の共有名義にする方法です。


    遺産分割は、相続人全員で話し合いによって決めるのが基本になりますが、協議がまとまらない場合や争いがある場合などには、家庭裁判所の調停や審判によって解決を図ることになります。

  3. (3)相続登記

    遺産分割によって土地の相続人が決まれば、登記の名義変更を行う必要があります。
    不動産については登記制度が採用されているため、「所有権移転登記(相続登記)」を法務局に申請して、土地の所有権登記名義人を親から相続人に変更します。

  4. (4)相続税の納付

    相続財産の価格によっては、相続税を申告・納付する必要が生じます。相続税の納付が必要になるのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合です。

    基礎控除額の算出方法
    3000万円+(法定相続人の数×600万円)


    なお、土地を相続した場合には、相続税を計算するにあたり土地をどのように評価するかという問題が生じます。
    土地の相続税評価額を算定する方法には、国税庁が公表する路線価にもとづく路線価方式と、地方自治体が定める固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる倍率方式などがあります。ただし、これらはあくまで目安であり、土地の状態や形状などによって評価額は変わります。個人で正しく評価額を算出するのは難しいため、専門家に依頼するのが良いでしょう。

2、生前贈与と相続は何が違う?

親名義の土地を相続する方法としては、「生前贈与」によって取得する方法も検討できます。
相続は、親が亡くなったときに発生しますが、親が生きている間に資産を贈与するのが生前贈与です。

生前贈与の場合、資産を贈与された人(受贈者)は、確実に資産を取得することができ、資産を贈与する人(贈与者)は、資産が贈与されたことを見届けることができます。確実に譲り渡したい財産がある場合は、有効な手段といえるでしょう。

ただし、贈与税の税率は相続税に比べて高く設定されています。そのため、生前贈与で土地を贈与しようとした場合、相続と比較すると費用がかさむ可能性があります。また、土地の名義変更の登記も、贈与を原因とする場合は相続よりも登録免許税額は高くなります。
このように、生前贈与にはメリットやデメリットがあるため、慎重に判断する必要があります

3、親の土地を相続する際の注意点

親の土地を相続するにあたり、覚えておきたい注意点を解説します。

  1. (1)土地の共有は避けたほうが良い

    親の財産を兄弟姉妹などの複数の相続人で分けるときには、土地や家などの不動産を共有するのは、できるだけ避けた方が良いといえます。

    たとえば親の土地について、兄と弟の二人で法定相続分である2分の1ずつ共有することになったとします。
    どちらか一方が土地を売却したいと思っても、売却は共有者全員の合意が必要です。兄弟二人の意見が合わず一方が反対すれば、土地の活用ができないばかりか、兄弟間でトラブルに発展する可能性もあります。
    また土地は維持管理も必要であり、固定資産税の負担もあります。これらも、明確な取り決めをしていなければ、トラブルの種になるおそれがあるでしょう。

  2. (2)遺留分を考慮しておく

    被相続人の兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺留分という最低限保証される遺産取得分があります。
    遺留分の権利を有する相続人は、遺留分を侵害する遺贈や贈与を受けた人に対して、原則として遺留分相当額の支払いを求めること(遺留分侵害額請求)が認められています。

    たとえば、主な相続財産が土地のみであるような場合に、相続人の一人だけが土地を相続するような遺言書が残されていれば、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。
    他の相続人から遺留分侵害額請求をされた場合、土地の相続人は多額の支払いを求められるおそれがあるので、その点を考慮しておく必要があるでしょう。

4、親名義の土地を相続したくない場合

親名義の土地が不便な場所にある、土地の価値が低いなどの場合には、利用することも売却することも難しいというケースがあります。土地を相続してしまえば、毎年固定資産税の負担をしなければなりません。また、維持管理も必要になります。
そのため、親名義の土地を相続したくないという場合には、相続放棄を検討することもひとつの選択肢です。

相続放棄は、相続が開始したことを知った後3か月以内に家庭裁判所に申述して行います。受理されると最初から相続人でなかったとみなされますので、土地を含む、すべての財産を相続する権利がなくなります。

相続放棄をした場合、相続財産は放棄によって相続人となった人に引き継がれることになりますが、その人が財産の管理を始めることができるまでは、自分の財産を管理するのと同一の注意をもって財産管理を継続する義務を負うので注意が必要です。
たとえば、土地が荒れ果てて近隣に迷惑をかけているのであれば、次の管理者が決まるまで、管理をする必要があります。

なお、すべての相続人が相続放棄をした場合、最後に相続放棄をした相続人が管理義務を免れるためには、家庭裁判所で相続財産管理人を選任してもらう必要があります。そのため、最終的な財産の管理者が決まるまでは、時間を要することになるでしょう。

5、まとめ

相続では、遺産分割や相続登記、相続税などの幅広い専門知識が必要になります。また、土地の相続においては、分割方法などで相続人がもめてしまうケースも少なくありません。
そのため、弁護士のサポートを得ることをおすすめします。
弁護士は、相続を全面的にサポートできるのはもちろん、代理人となれるので、遺産分割協議に参加し他の相続人と話し合いを進めることも可能です。

ベリーベスト法律事務所では、税理士や司法書士とも連携しているので、ワンストップで相続問題を解決するお手伝いができます
親名義の土地の相続についてお悩みをかかえている場合は、ぜひお気軽にベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士にご相談ください。しっかりとお話を伺い、最適な解決策をご提案します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています