リーガルオピニオンが必要になる場面や作成時の注意点を弁護士が解説

2020年09月09日
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リーガルオピニオンが必要になる場面や作成時の注意点を弁護士が解説

兵庫県三木市にあるゴルフクラブが、平成30年12月20日に全株式を他県に本社を持つ企業へ譲渡したことがありました。その際は、理事や顧問弁護士の了承があったと言われています。

このように、企業にとって転機となるような局面では、弁護士に相談に乗ってもらったり、リーガルオピニオン(法律意見)を得たりすることが非常に重要です。

本記事では、リーガルオピニオンはどのような場面で利用すべきなのか、またリーガルオピニオンを検討するのであれば顧問弁護士は必要なのかなどについて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、リーガルオピニオンとは

企業法務に従事する弁護士には、会社経営にまつわるさまざまな役割を求められていますが、その中のひとつにリーガルオピニオン(法律意見)を求められることがあります。

リーガルオピニオンとはどういったものなのでしょうか。

  1. (1)リーガルオピニオンとはどのようなもの?

    リーガルオピニオンとは、法律にかかわる問題や事案に関する、法的な意見のことです。リーガルオピニオンを書面として作成し、「法律意見書」や「鑑定書」などと呼ばれることもあります。

  2. (2)リーガルオピニオンはコンプライアンス経営に不可欠

    リーガルオピニオンは、コンプライアンス経営の一端を担うものでもあります。
    コンプライアンスは日本語で「法令遵守」と訳されますが、実務上は法令のみにとどまらず、広い意味でのルールや社会規範を守って公平・公正な業務を行うことであると解釈されています。
    もし企業の不祥事が発覚すれば、第三者調査委員会を立ち上げて弁護士に参加してもらい、第三者の立場から見解をまとめてリーガルオピニオンを形成し、書面化することが必要になるでしょう。

  3. (3)災害の復興にリーガルオピニオンが役立つことも

    リーガルオピニオンは、災害復興のための政策立案の際に、参考にされることもあります。

    『災害復興法学』の著書である岡本正氏によれば、2011年の東日本大震災の後、岡本氏らの調査で「住めなくなった家の家賃を支払い続けるべきか」「自宅の屋根瓦が落下して隣家の自動車を壊したが損害賠償責任を負うのか」「家も職も失い、住宅ローンが支払えない」といったリーガルニーズが判明したと言います。

    それらのリーガルニーズをまとめて各地の弁護士会や日弁連が政府に提言したことによって、被災者生活再建支援法や被災ローン減免制度などの新しい法律や制度が作られていったのです。

2、リーガルオピニオンを依頼する際の3つの注意点

リーガルオピニオンを弁護士に依頼する際には、注意点が3つあります。

  1. (1)会社側が事実調査を行う場合は弁護士にアドバイスをもらう

    リーガルオピニオンは、一定の問題状況や具体的事案を前提に法律的な見解を述べるものですので、リーガルオピニオンを検討する際には、事実関係や前提条件の事前調査が必要です。
    会社側が独自に調査を行う場合は、どういった調査が必要なのかについて弁護士にアドバイスを求めたり、必要な資料の類型や具体例について弁護士に確認したりしておくとよいでしょう。

    会社が行った調査で判明した事実関係だけをもとに、リーガルオピニオンを依頼した場合、後々、他の事実が発覚すれば、リーガルオピニオンの前提が失われ、その内容が妥当なものではなくなってしまうおそれがあるので注意が必要です。場合によっては、事前調査の段階から、弁護士に関与を依頼することを検討すべきでしょう。

  2. (2)前提条件をどこまで、どのように限定するかを弁護士と話し合う

    リーガルオピニオン作成にあたっては、どのような事実関係や資料を前提として意見を作成するのか、前提条件をある程度限定しなければいけません。前提条件を限定しないことには適切な意見を導き出すことはできず、前提条件が異なれば弁護士としての意見も異なることになります。
    そのため、前提条件をどこまで、どのように限定するのか、弁護士とよく話し合っておくことも必要です。

  3. (3)リーガルオピニオンの利用場面を事前に伝える

    リーガルオピニオンは、通常、依頼者である企業内部のみで閲覧されることを前提に作られることも多いと思われます。もちろん、リーガルオピニオンを紛争解決に利用する場合や、契約相手・金融機関に提出するなど外部に提示する場合も想定されますが、その場合は内容や表現について内部向けとは異なる配慮を要することがあります。

    利用場面について弁護士と認識が相違すると、予期せぬトラブルになる可能性もありますので、外部に提示する予定がある場合はその旨を事前に担当弁護士に伝えておくことが大切です。

3、リーガルオピニオンが必要になる場面

リーガルオピニオンは企業にとって重要な局面で求められるものですが、具体的にどのような場面で必要になるのでしょうか。

  1. (1)新規事業を始めるとき

    リーガルオピニオンが必要になる場面のひとつが、会社が新規事業を始めるときです。
    これから行おうとする事業に法的リスクはないか、コンプライアンス上の問題はないかの判断を行うときに、リーガルオピニオンを求めるとよいでしょう。

    リーガルオピニオンをもらっておくことで、後々トラブルが発生して会社役員の経営判断の是非を問われた場合にも、判断過程には不合理な点がないとして責任追及を回避できる可能性があります。

  2. (2)M&Aのとき

    M&Aを行う際には、買収される側の企業価値を計ることが重要になり、その一環として契約取引やコンプライアンスなど法務上の問題の有無を確認したりすることが必要です。

    買収される企業が一定の法的問題を抱えている場合、弁護士によるリーガルオピニオンによってその法的問題の大きさや見通しなどを明らかにすることで、適切に企業価値を計ることが可能になります。

    弁護士からのお墨付きがあれば、買い主側も安心してM&Aの手続きを進めることができるでしょう。

  3. (3)資金調達を行うとき

    金融機関でローンの借り入れ等の資金調達を行う際にも、リーガルオピニオンの提出が求められることがあります。金融機関側は、貸し倒れや回収不能リスクがないかを知りたいものです。

    借り手が一定の法的問題を抱えている場合には、状況や見通しに関する弁護士のリーガルオピニオンを提出すれば、金融機関からの信用も得られやすくなることが期待できます。

  4. (4)紛争が発生したとき

    取引先と何らかの法的トラブルが起きて紛争になったというような場合、弁護士が表立って交渉するとむしろ相手方との感情的な対立を強めてしまうケースもあり得ます。その場合、リーガルオピニオンを得て相手方と誠実に交渉することにより、法的理解を共有しつつ話し合いを進めることができ、スムーズな解決に至る場合もあります。

4、リーガルオピニオンを外部の弁護士に依頼したほうがいい理由

法務部がある場合や企業内弁護士(インハウスロイヤー)を抱えている場合、リーガルオピニオンは社内で対応できるとお考えの方も多いでしょう。しかし、リーガルオピニオンを作成するなら外部の弁護士に依頼されることをおすすめします。

  1. (1)法務部で対応するには限界がある

    企業の中に法務部を設けている場合は、リーガルオピニオンを外部に依頼する必要はないと考える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、法務部門には必ずしもリーガルオピニオンが必要になった分野に詳しい人材がいるとは限らず、あらゆる法律に対応していくには限界があると言えるでしょう。

  2. (2)第三者の視点で見てもらえる

    近年、コンプライアンスに対応するために企業内弁護士を雇用する企業も増えています。しかし、企業内弁護士はその企業の内部事情には精通していますが、その分、客観的な立場にはなりきれない可能性がありますし、それゆえに契約相手・金融機関などの外部者には疑念を持たれる可能性もあります。

    第三者的な立場で評価し、また外部者にも信用してもらうために、リーガルオピニオンは外部の弁護士へ依頼するほうがよいでしょう。

  3. (3)セカンドオピニオンとしても使える

    リーガルオピニオンを依頼する外部の弁護士としては顧問弁護士が有力候補になりますが、顧問弁護士から説明やアドバイスなどを受けた場合でも、さらに別の外部弁護士からセカンドオピニオンとしてリーガルオピニオンを得ることも考えられます。

    複数の弁護士から意見を聞いておけば、その分情報量も増え、より広い視野で判断や決断をすることができるでしょう。

  4. (4)訴訟になったときにも安心

    弁護士からリーガルオピニオンをもらっていれば、訴訟に発展したような場合において、そのまま紛争解決を依頼できるので安心です。リーガルオピニオンを作成した弁護士であれば、事情を把握できているので、スムーズに訴訟の準備を進められることが期待できます。

5、リーガルオピニオンを依頼するなら顧問弁護士へ

リーガルオピニオン作成の依頼を検討するなら、顧問弁護士を雇うことも併せて検討されるとよいでしょう。常に依頼している顧問弁護士がいれば、社内事情にも通じているので、リーガルオピニオンを作成するときに一から事情を説明する必要もなくなります。

  1. (1)企業内弁護士(インハウスロイヤー)との違い

    まず、理解しておきたいのが、企業内弁護士との違いです。企業内弁護士も顧問弁護士も同じ弁護士ではありますが、両者の役割には違いがあります。

    企業内弁護士は特定の企業に所属して、法的なトラブルを未然に防ぐ予防法務や、経営判断にかかわる戦略法務などが主な役割です。
    一方、顧問弁護士は、予防法務や戦略法務に携わることもありますが、問題が紛争になった際に解決する、臨床法務に重点を置いた役割を果たすことが多いでしょう。

  2. (2)顧問弁護士の役割

    顧問弁護士は臨床法務を担うことのほうが多いですが、日々の法律相談や契約書のチェック、取引先とのトラブル対応、社内のコンプライアンス研修や内部通報窓口に至るまで、法律に関するさまざまな役割を担うことも可能です。

    法務部門のアウトソーシングとして、顧問弁護士を利用する方法もあります。

  3. (3)顧問弁護士を依頼するメリット

    顧問弁護士を雇うメリットは、以下のようなものがあります。

    • すぐに相談でき
    • 自社の事情に精通しているため、自社に即したアドバイスを受けられる
    • トラブルの火種が大きくなるのを未然に防げる
    • 法改正などの最新情報をアップデートできる
    • 弁護士費用が割安になるケースが多い
    • 対外的に信頼できる会社であることをアピールできる
  4. (4)顧問弁護士を依頼するときの注意点

    顧問弁護士を雇うと、一度も利用しなかったとしても毎月ランニングコストが発生することが多いでしょう。法律事務所によっては、複数の料金プランを用意しているところもありますので、利用頻度に照らして適切なプランを検討することをおすすめします。

6、まとめ

新規事業を立ち上げるとき、新たな取引先と契約を結ぶときなど、リーガルオピニオンはさまざまな場面で必要になるものです。作成にあたっては、企業内弁護士ではなく、客観的な視点で評価ができる外部の弁護士へ依頼するとよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスでは、リーガルオピニオンのご依頼を承っております。また、ベリーベスト法律事務所では、さまざまなニーズに対応できるよう多様な顧問弁護士サービス用のプランもご用意しております。単発でのご依頼も、もちろんお受けしておりますが、顧問弁護士を依頼するかどうか迷っている場合も、一度当事務所までご相談ください。

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