飲酒運転の同乗者も同罪になる? 飲酒運転同乗罪の刑事処分と行政処分

2024年04月22日
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飲酒運転の同乗者も同罪になる? 飲酒運転同乗罪の刑事処分と行政処分

飲酒運転は、自分だけではなく他人の生命を奪うおそれのある危険な行為です。
一時停止違反や信号無視といった交通違反や不注意による接触事故などでは、運転手が単独で責任を負いますが、飲酒運転に関しては同乗者・車両提供者なども処罰の対象となることを心得ておくべきでしょう。

本コラムでわかることは、大きく以下の3つです。
・「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違い
・飲酒運転の同乗者が問われる刑罰について
・「車両提供」や「酒類提供」も罪に問われる

飲酒運転の車両へ同乗して逮捕されてしまった方などに向けて、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が詳しく解説します。


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1、飲酒運転とは|酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

自動車の運転免許を持っている人であれば、お酒を飲んだら車を運転してはいけないというルールは常識です。これは単なる交通マナーの問題ではなく、道路交通法によって定められた規制であり、違反すれば犯罪になります。

まずは、飲酒運転がどのような犯罪になるのかを確認しておきましょう。

  1. (1)飲酒運転とは

    道路交通法第65条1項は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定めています。
    一切の例外はなく、自動車や原動機付自転車などを運転するすべての人は、酒気を帯びた状態で車両等を運転してはならないという規定であり、同条が飲酒運転の禁止の根拠です。
    自転車も車両等に該当するため、酒気を帯びて自転車を運転すれば飲酒運転が成立します。

    「酒気を帯びた」とは、体内にアルコールの存在することが外観上(顔色や呼気などにより)認知できる状態をいいます。
    酒気を帯びる原因は、お酒を飲む行為に限定されません。アルコールを含んだ飲料・食べ物を体内に摂取する行為のすべてが酒気を帯びる原因となりえるので、たとえばブランデー入りのチョコレートやワインが染み込んだケーキなどを食べて運転する行為も飲酒運転となるおそれがあります。

  2. (2)酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

    飲酒運転は、体内に保有するアルコールの量や酔いの程度によって、酒気帯び運転と酒酔い運転にわけられます。

    ●酒気帯び運転とは
    道路交通法第117条の2の2第3号に規定されている「身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態」で車両を運転する行為です。
    政令とは道路交通法施行令を指し、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上、または呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを保有する状態を指しています。

    ●酒酔い運転とは
    道路交通法第117条の2第1号に規定されている「酒に酔った状態」で車両を運転する行為です。
    酒に酔った状態とは「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」を指し、アルコールの保有量を問いません
    支えがないと直立できない、まっすぐに歩行できない、質問に正常な受け答えができずろれつが回らない、顔が紅潮し目が充血しているなど、客観的にみても酒に酔っていることが要件となります。

2、飲酒運転に対する『刑事処分』と『行政処分』

飲酒運転をすると、刑事処分と行政処分の両方を受けます。

刑事処分とは、道路交通法に基づく刑罰です。
酒気帯び運転には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が、酒酔い運転には5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

行政処分とは、各行政庁が法令を根拠に下す処分です。
道路交通法を根拠とする場合は、各都道府県公安委員会がおこなう運転免許の取消・停止などの処分を指します。

酒酔い運転の違反点数は、35点です。
前歴および、その他の累積点数がない場合でも免許取消となり、新たに運転免許を受けることができない欠格期間は3年です。

酒気帯び運転では、呼気1リットルあたりのアルコール量によって次のように違反点数が加算されます。

  • 0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満……13点
    90日間、免許停止
  • 0.25ミリグラム以上……25点
    免許取消・欠格期間2年


なお、酒酔い運転に該当せず、さらに呼気1リットルあたりのアルコール量が0.15ミリグラム未満であれば、処分を受けることはありません。

ただし、道路交通法第65条1項は「酒気を帯びて車両等を運転する」という行為自体を禁止しており、アルコールの保有量などは問わないため、発覚すれば運転の継続は認められません。この場合は、車両の運転をやめてレッカーなどで移動させることになります。

3、飲酒運転の同乗者が問われる刑罰

飲酒運転に対する規制は、従来は運転手が単独で責任を負うのみでしたが、平成19年の法改正によって、飲酒運転の車両の『同乗者』も処罰の対象に加えられました。

  1. (1)同乗者の定義

    飲酒運転の同乗者の定義は、次の条文から読み解くことができます。

    【道路交通法第65条第4項】
    何人も、車両の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。


    重要なのは、運転手が酒気を帯びていることを知っていることであり、同乗者が酒気を帯びているのかは問われません。また、搭乗位置も問われないので、助手席に座っていようと、後部座席に搭乗していようと同乗者に含まれます。

    ただし、乗り合いのバスやタクシーのように旅客運送事業の用に供されている車両に同乗した場合は処罰の対象とはなりません。

  2. (2)飲酒運転同乗罪に問われる

    飲酒運転の車両への同乗は、前述した道路交通法第65条4項の規定によって禁止されています。自分が運転をしていなくても、たとえ運転免許を取得していなくても、同乗者は「飲酒運転同乗罪」が適用されて処罰を受けます

    同乗者の刑罰は、運転手が酒気帯び運転であったのか、それとも酒酔い運転であったのかによって変わります。

    • 酒気帯び運転の場合(道路交通法第117条の3の2第3号)
      2年以下の懲役または30万円以下の罰金
    • 酒酔い運転の場合(道路交通法第117条の2の2第6号)
      3年以下の懲役または50万円以下の罰金


    なお、同乗者が運転免許を受けている場合は、運転手と同じく違反点数が加算されます。
    酒気帯び運転の同乗であれば最低でも免許停止に、酒酔い運転に同乗すれば免許取消は免れません。

  3. (3)運転手が飲酒していることを知らなかった場合

    飲酒運転同乗罪は、運転手が酒気を帯びていることを同乗者が知っていた場合に成立します。つまり、実際に運転手が酒気を帯びていたことをまったく知らなかった場合は罪に問われません。

    ただし、飲酒運転の捜査では、どのような経緯で飲酒したのか、なぜ飲酒運転をしたのかといった点まで詳しく調べられます。また、飲酒をした店に対しても、伝票などをもとに確認がおこなわれるため、うそは通用しないと心得ておくべきでしょう。

4、飲酒運転周辺3罪|車両提供・酒類提供も罪に問われる

飲酒運転に関しては、同乗者だけでなく車両提供酒類提供も罪に問われます。
同乗罪・車両提供罪・酒類提供罪を「飲酒運転周辺3罪」といい、飲酒運転をした運転手と同様に処分されます。

  1. (1)車両提供罪

    道路交通法第65条2項は、飲酒運転をするおそれがある者に対して車両等を提供することを禁止しています。
    運転手が酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が、酒酔い運転の場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

  2. (2)酒類提供罪

    道路交通法第65条3項は、飲酒運転をするおそれがある者に対して、酒類を提供し、または飲酒をすすめる行為を禁止しています。
    運転手が酒気帯び運転をした場合は2年以下の懲役または30万円以下の罰金、酒酔い運転をした場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

5、まとめ

飲酒運転に対する厳しい規制が設けられているなかで、飲酒運転周辺3罪として同乗者・車両提供者・酒類提供者にも運転手と同様に処分が科せられます
懲役・罰金を受ければ前科がつくうえに、免許停止・免許取消といった行政処分を受けることもあり得ます。仕事などで車両を運転する機会が多い方は大きな不利益を被るのはもちろんのこと、社会生活への影響も避けられないでしょう。

飲酒運転に対する社会の目は厳しく、検察官が起訴に踏み切る可能性が高いため、発覚後は無用に重い処分が科せられないように対策を講じる必要があります。
飲酒運転の同乗者として罪に問われる事態になり、刑事処分・行政処分に不安を感じている方は、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所 神戸オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています