旦那が盗撮? 逮捕後の流れと家族が取るべき行動とは
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スマホの普及によって、簡単に写真や動画を撮ることができるようになりましたが、他方、スマホが悪用され、盗撮の道具となる例が散見されます。神戸でも、勤務する中学校の女子トイレ内で盗撮したとして男性教諭が逮捕された事件がありました。男性教諭はわいせつ目的ではなく、ストレス発散が目的だったと供述したようです。この事件で有罪判決を受けた教諭は、平成30年6月に懲戒免職処分となったと報道されています。
本人にとってはストレス解消であろうと、被害者にとっては大変深い心の傷になることでしょう。
一方で、「盗撮の容疑で旦那を逮捕した」と警察から連絡が来たら、家族は、目の前が真っ暗になったかのような絶望感に襲われるのではないでしょうか。
そこで今回は、家族が盗撮で逮捕された場合の家族が取るべき行動について、弁護士が解説します。
1、盗撮で問われる可能性のある罪と罰則は?
盗撮の容疑で逮捕されるケースでは、罪に問われる行為がひとつだけではなく、複数に渡る可能性があります。犯行時の状況によって問われる罪は異なると同時に、問われる罪によって罰則も異なるのです。
もし、家族が盗撮で逮捕されたとき、問われる可能性がある罪と罰則について理解しておきましょう。
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(1)迷惑防止条例違反
まず、もっとも該当する可能性が高い罪は、「迷惑防止条例」違反です。
「迷惑防止条例」は、住民生活の平穏を保持することを目的とした迷惑行為を防止する条例です。地域によって、名称や条例内容が少しずつ異なり、兵庫県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称で運用されています。
冒頭で述べたとおり、巧妙な盗撮の増加を兵庫県公安委員会も認識していたことから、これまでの条例が改正されました。平成28年7月より、盗撮禁止の場所や状況などを明文化されています。
盗撮は、同条例3条の2第1項に挙げられている「ひわいな行為等の禁止」にあたり、盗撮行為や、正当な理由なく盗撮目的の写真やビデオカメラその他これに類する機器の設置行為を禁止しています。
特に、盗撮の取り締まり可能な場所が拡大され、「公共の場所」・「公共の乗り物内」のほかにも、公衆が利用できる浴場やトイレ、更衣室など、さまざまな具体的箇所が挙げられています。まとめると、不特定多数の目に入る可能性のある場所での盗撮が禁止されているという内容の条例に進化しているのです。
<迷惑防止条例違反の罰則>
6か月以下の「懲役(ちょうえき)」、または50万円以下の「罰金(ばっきん)」
※盗撮に常習性が認められる場合は「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」 -
(2)軽犯罪法違反
軽犯罪法においても、盗撮が規定されています。具体的には、第1条23号の「正当な理由なく人の住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」にあたります。「のぞき見た者」とありますが、盗撮もこれに該当すると解釈されている点に注意が必要です。
公共の場所での盗撮は「迷惑防止条例」違反に該当しますが、それ以外の場所でも盗撮事件が発生することもあるでしょう。そのケースにおいては、「軽犯罪法違反」で逮捕される可能性があるということです。
具体的には、個人宅の室内や、ホテルの個室、職場などのトイレや浴場などは、本来、関係者以外は立ち入ることはできません。つまり、これらの場所は「私的な場所」であることから、問われる罪が軽犯罪法違反になるのです。
<軽犯罪法違反の罰則>
「拘留(こうりゅう)」または「科料(かりょう)」
なお、拘留は30日未満の身体拘束です。判決確定前の勾留期間のうち、一定程度の期間は既に刑に服したものと評価する場合があるため、30日未満の身体拘束がさらに短くなる可能性もあり、懲役や禁錮と比べると軽い自由刑であるといわれています。一方で、科料は1万円未満の財産刑です。科せられる量刑だけを見ると、迷惑防止条例のほうが重いと考えられますが、軽犯罪法違反の場合は、次の項目で説明する、その他の刑法犯違反に該当する可能性が高まります。
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(3)その他の刑法
軽犯罪法違反が問われる盗撮のケースでは、多くが「私有地での盗撮行為」によるものとなります。よって、軽犯罪法違反に加えて、刑法第130条に規定されている「住居侵入等」の罪についても問われる可能性があります。
たとえば、被害者の自宅内に許可なく侵入したケースもこれに該当しますし、ホテルの個室に忍び込んで盗撮した場合も該当します。住居の窓からのぞき込むように盗撮した場合も、私有地を盗撮する行為となるため、「住居侵入等」の罪が適用されます。
<住居侵入と建造物侵入罪の罰則>
3年以下の懲役または10万円以下の罰金
刑事裁判だけでなく、民事訴訟を並行して起こされる可能性もあります。つまり、罪に問われるだけでなく賠償金の請求もされる可能性もあるということになります。
2、旦那が盗撮で逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れ
もし旦那が盗撮で逮捕されてしまったとき、帰りを待つ妻としては、これからの流れを知っておきたいところでしょう。知らなければ、少なくとも家族が受ける影響を最小限に抑えるため、適切な行動をとることは難しいものです。
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(1)取り調べ
逮捕後、盗撮をした疑いがある者は「被疑者」と呼ばれる立場となり、警察署に連行されて取り調べを受けることとなります。実は誤認で盗撮していなかったケースや、盗撮を証明する物品がなかった場合には、厳重注意で解放してもらえることもあるかもしれません。
また、現場で取り押さえられずに、警察から「任意での取り調べ」という体裁で呼び出されることもあるでしょう。任意ですから、取り調べ自体を拒否することもできますが、あまりおすすめできません。状況によっては、「逃走や証拠隠滅の可能性がある」などとみなされ、逮捕状が発付されてしまうケースもあります。取り調べに協力することそのものに不安がある場合は、任意聴取に同行してくれる弁護士を頼ることも一案です。 -
(2)送致・勾留
警察署は、48時間以内に取り調べの結果を検察に送るかどうかを判断します。事件を検察に送ることを「送検(そうけん)」と呼びます。
検察官は、被疑者が送致されてから24時間以内に、引き続き身柄を拘束して捜査する「勾留(こうりゅう)」を行う必要があるかどうかを判断します。
勾留が決定すると、最大20日間、留置施設で身体拘束されることになります。勾留しない場合は、「在宅事件」となり、身柄は解放されますが、引き続き捜査に協力する必要があります。 -
(3)起訴・不起訴の決定
捜査の結果によって、検察は事件を「起訴」するか「不起訴」にするかを決定します。
「不起訴」の場合は、刑事罰を受けることはありません。
「起訴」された場合は、統計上約99%が有罪となっていますので、前科がつくことを覚悟してください。なお、同じ起訴でも、「略式請求」されるか、「公判請求」されるかによって、その後の展開が異なります。略式起訴の場合は、すぐに身柄が解放されますが、公判請求のときは、約1か月後に刑事裁判が開かれることになり、保釈の請求が認められる場合は別ですが、原則、判決が下るまで身柄を勾留され続けることになります。
3、少しでも早く旦那を助けるためにできる対応
刑事事件の流れでは、被疑者の身柄の拘束を解放できるタイミングが4回あり、起訴を避けるタイミングが2回あります。
- 警察が送検する前(在宅事件扱い)
- 勾留が決まる前(在宅事件扱い)
- 起訴が決まる前(不起訴)
- 起訴が決まった後(保釈)
- 逮捕から48時間以内(微罪処分)
- 逮捕から23日以内(不起訴)
それぞれのタイミングまでに、何らかの対策を行う必要があります。しかし、逮捕されてしまえば、勾留が決まる最大72時間までの間は、たとえ妻であろうと、逮捕されてしまった旦那と面会することはできません。
被疑者となった旦那との面接(接見)が許されているのは、弁護士だけです。逮捕という連絡が警察から来た時点で、弁護士に相談して、旦那の話を聞いてもらった上で今後の対応を考えていくことをおすすめします。
なお、少しでも早く、身柄の拘束から解放され、起訴を避けるための方法としては、「示談(じだん)」が重要視されています。示談とは、事件の当事者同士で話し合い、解決しようとすることを指します。示談では、被害者へ謝罪を行うとともに賠償金を含めた示談金を支払い、その代わりに、被害届を取り下げてもらう約束をするケースが一般的です。
しかし、この示談交渉は当事者同士で行うと示談が成立する可能性は低いものです。特に盗撮事件の場合は、被害者の連絡先を知らないケースも多く、加害者自身はもちろん、加害者の家族が直接示談交渉することは難しいと考えたほうがよいでしょう。公平な立場である弁護士に示談交渉を依頼することによって、示談交渉が始められ、成立する可能性が非常に高まります。
4、まとめ
旦那が逮捕されたとき、家族が、将来への影響を最小限に抑えるためにできることは、逮捕後、すぐに弁護士に相談することです。逮捕後は時間との勝負になります。タイミングを逃すと、長期にわたる身柄の拘束につながり、仕事などへの影響を避けられない事態になりかねません。自分だけで解決することは難しいと考えましょう。
ベリーベスト法律事務所・神戸オフィスへ、あらかじめ相談をいただいていれば、万が一逮捕されたときも、すぐに弁護士が警察署へ駆けつけ、接見することが可能です。任意取り調べの際の対応方法などもアドバイスいたします。お気軽に相談してください。
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