路上での強制わいせつで逮捕!? 前科がつくのを防ぐ被害者との示談交渉とは

2018年10月04日
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路上での強制わいせつで逮捕!? 前科がつくのを防ぐ被害者との示談交渉とは

神戸市内の居酒屋で開かれた取引先との会合で同席した女性と親密になり、帰宅中の夜道で、ついその女性に抱きついて胸をもんでしまったあなた。そのときはそれだけで終わったはずなのに、後日になって女性から「強制わいせつの被害届を提出します」という連絡が……!

被害届という言葉にあせるものの、もしかしたら、「それぐらいで大げさな……」と感じておられるかもしれません。しかし、そのまま放置すれば逮捕され、職を失う可能性があります。

強制わいせつ罪は非常に罰則が厳しい犯罪で、逮捕されたのち起訴されて有罪となれば、懲役刑を受ける可能性が十分あります。そのため、もし前科がつくことを避けたいのであれば、被害届を提出され、事件化されてしまう前に示談で解決することが重要です。

ここでは、強制わいせつ罪の概要や示談の方法などを神戸オフィスの弁護士が解説します。

1、強制わいせつ罪の定義や罰則を詳しく解説

あなた自身が被害届を出される可能性がある場合は、なによりも先に、自分の行為が犯罪にあたるのかを知る必要があります。そこでまずは、「強制わいせつ」罪の定義や罰則などについて解説していきます。

  1. (1)強制わいせつ罪の定義

    強制わいせつ罪は、刑法第176条に規定されている性犯罪です。個人の性的自由に対する罪であり、被害者の尊厳を踏みにじる性格をもつ犯罪でもあります。警察では、この「強制わいせつ」を、殺人や強姦などの凶悪犯に加えた「重要犯罪」のひとつであると定義し、検挙に重点を置いた捜査活動をしています。

    では具体的に、どのような行為をすると、強制わいせつ罪で逮捕されるのでしょうか。刑法第176条をひもとけば「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と記載されています。

    強制わいせつ罪に該当するか否かを判断するポイントは、「暴行・脅迫」と「わいせつな行為」の2点です。

  2. (2)「暴行・脅迫」と「わいせつ行為」とは?

    強制わいせつ罪でいうところの「暴行・脅迫」とは、傷害罪や脅迫罪に問われるような「殴る・蹴る・脅し文句をいう」などの行為のみにとどまりません。判例では「被害者の抵抗を著しく抑圧する程度」の暴行又は脅迫と示されています

    たとえば、「まったくその気も合意ない相手から、突然、欲情をあらわにした行動を起こされた」ケースについて考えてみてください。多くの方が、驚きや恐怖のあまり動けなくなったり、抵抗できなかったりするでしょう。それが、仕事やプライベートに関係する相手であればなおさらです。

    つまり、相手の合意なくわいせつな行為をすることそのものが、強制わいせつで明文化された「暴行・脅迫」に該当する可能性があるということです。

    「わいせつな行為」についてはどうでしょうか。判例では「他人の性的羞恥心を害する行為」と示されています。ただし、痴漢行為に適用する法令には都道府県が定める「迷惑防止条例」も存在するため、どちらの罪に問われるか、判断が難しいと感じる部分もあるでしょう

    しかし、強制わいせつ罪に問われるポイントは、法令が示すとおりです。つまり、「暴行や脅迫を用いて」「わいせつな行為をした」場合に、強制わいせつ罪に問われることになります。

    現在の判例では、おおむね以下のような行為がわいせつ行為であると判断されています。

    • 合意なく性器や体に性的な意図をもってしつように触る
    • 直接、胸や尻を触る
    • 着衣上からでもしつこく触る、密室内で触る
    • 無理やり抱きついたり押し倒したりする


    つまり、「痴漢です!」と捕まったとしても、状況によっては強制わいせつ罪の現行犯として逮捕される可能性もあるということです。

    また、強制わいせつ罪でいう「わいせつな行為」の中には、唇へのキスも含まれます。海外ではあいさつの行為としてとらえられますが、日本におけるキスは、恋人同士や家族間では情愛を示す行為であり、よほど親しくない間柄では許容されないものです。ましてや強引にキスをするなどの行為は、被害者との関係性によってはわいせつな行為と判断される可能性が高くなります。

  3. (3)強制わいせつ罪の罰則

    強制わいせつ罪は、個人の体や財産を侵害する可能性が高い犯罪であり、国民の脅威のひとつとして数えられています。そのため、強制わいせつ罪の罰則には、懲役刑のみが規定されており、罰金刑はありません

    具体的には、「6ヶ月以上10年以下の懲役」と定められています。つまり、起訴されれば必ず公開された場で裁判を受けることになりますし、有罪となれば、執行猶予がつかない限りは、刑務所に服役することになります。

    なお、日本の刑事事件では、統計的に見て、起訴されれば99%の確率で有罪となります。強制わいせつ罪の可能性がある場合は、まず起訴を回避しなければ、前科がつくことを避けられないでしょう。

  4. (4)13歳未満へのわいせつ行為も強制わいせつ罪が成立する

    強制わいせつ罪について定めた刑法第176条では、13歳未満の者に対するわいせつ行為についても「13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」と規定しています。

    つまり、13歳未満へのわいせつ行為は、暴行・脅迫の有無にかかわらず、かつ、相手が合意していたとしても、強制わいせつ罪が成立することを示しています

2、強制わいせつ事件の示談について解説

さて、冒頭のように強制わいせつ罪に問われる可能性があり、不安を抱えているという場合は、早急に相手との示談交渉を進めることをおすすめしています。示談を成立させることによって、起訴を回避できる可能性が高まるためです。

ここでは、強制わいせつ事件の示談について解説します。

  1. (1)強制わいせつ事件を示談で解決するメリット

    強制わいせつ事件を示談で解決するメリットは、逮捕・勾留・起訴の各タイミングで、それぞれの回避が期待できることです。

    相手が被害届を提出する前に示談が成立すれば、被害届の提出を防ぐことによって、事件発覚や逮捕そのものが回避できる可能性が高まります。逮捕されなければ、前科はもちろん残りません
    なお、逮捕されれば検察へ送致されるまでの48時間、警察署で身柄を拘束されることになります。その後、刑事事件としてさらなる捜査を行う必要があれば、検察に送致されます。

    もし逮捕・送致されてしまっても、示談交渉がまとまれば「勾留(こうりゅう)」を防ぐことが期待できます。勾留とは、検察で再び捜査を行う際、ひとつの事件につき原則10日間、最大20日間にわたり身柄を拘束することを指します。検察は、送致されてから24時間以内に、「勾留請求」を裁判所に対して行う必要があります。勾留が認められてしまうと、10日間の身体拘束が継続することになる可能性がとても高いので、仕事や学校も長期間の欠勤を余儀なくされるでしょう。事件後の社会生活を守るためには、勾留は何としてでも避けたいところです

    しかし、もし勾留されたとしても、この段階で示談が成立すれば、起訴を回避し、不起訴を勝ち取る可能性が高まります。検察官の仕事は、簡単にいってしまえば、犯罪の責任を裁判で問う必要があると判断した場合、起訴によって刑事裁判を提起することにあります。

    示談が成立し、被害者が「もう裁判で責任を問う必要はありません」という意思表示をすれば、起訴をしないという判断に至るケースが多いでしょう

    もし起訴されて有罪判決を受け、執行猶予が付かない場合には、懲役刑となる可能性が高いのですから、起訴の回避は重要です。

    なお、不起訴であれば、たとえ起訴猶予という理由であっても前科はつきません。ただし、強制わいせつの容疑で再び逮捕されることがあれば、同種の前歴があるとして厳しい判断を受ける可能性がある点に注意してください。

    また、起訴されてしまったとしても、示談が成立していれば、実刑判決ではなく執行猶予付き判決が下される可能性が高まります。

    先ほども登場した犯罪白書のデータによると、平成28年度における強制わいせつ事件の検挙率は68.0%です。また、これまで、被害者が被害届を出さなければ逮捕できない「親告罪」とされていたものが、2017年の法改正によって非親告罪になっています。よって、周囲の通報や防犯カメラの映像などの証拠から、被害届がなくても逮捕することが可能となりました。もしかしたら、さらに検挙率は上がるかもしれません

  2. (2)強制わいせつ事件の示談の方法

    強制わいせつ事件の示談は、弁護士に一任することをおすすめします。 まず、強制わいせつ罪をはじめとした性犯罪の被害者は「犯人やその関係者と会いたくない」と考えます。なぜなら、犯人やその家族などの関係者と会うことで、つらかった被害のことを思い出してしまい、心的障害を引き起こしてしまう可能性が高いためです。

    あなた自身が誰の力も借りず、個人で示談交渉を進めようとしても、門前払いされるケースが多々あり、示談交渉は難航します。また、知り合いであればなおさら、個人的な示談交渉そのものを圧力と感じ、脅迫されているような恐怖を感じる方もいるでしょう。逆に、あなたが法律の専門家ではなければ、個人だからこそ、法外な示談金を求められる可能性があることを忘れてはなりません。

    しかし、弁護士であれば、第三者という立場を守りながら、誠実な示談交渉を進めてくれます。事案の内容と過去の判例を照らすことによって、その事件において適当な示談金を提示すれば、過度の負担の強制を防ぐことができます。

    また、万が一あなたが逮捕されてしまったとしても、弁護士を依頼しておけば、警察所へ足を運び、面会などに対応することも可能です。警察に逮捕されてから送致されるまでの最大72時間は、外部にも連絡ができず、家族との面会も禁止されます。その間も、弁護士であれば面会が許されています。弁護士に頼り、捜査への対策のアドバイスを受けると同時に、示談交渉を進めておけば、できるだけ早い事件終結を目指すことが可能となるでしょう。

  3. (3)強制わいせつ事件の示談金の相場

    強制わいせつ事件の示談金額は、犯行の悪質性や被害者の感情、心身に受けたダメージなどによって上下します。犯行が悪質であれば、より高額な示談金が必要になる可能性があります。

    しかし、示談を成立させなければ、会社などを長期間休むことになるうえ、前科がつき、刑務所で服役することになります。将来のことを考えれば、示談のメリットは大きいといえるでしょう

3、まとめ

今回は、強制わいせつ罪の概要や被害者との示談交渉のメリット・方法などについて解説しました。強制わいせつ罪は非常に厳しい処罰が科せられる犯罪です。もし事件化されてしまえば、これまでの生活も、事件後の生活も崩れ去ってしまう危険性があります。

もし、強制わいせつ罪に該当する行為をしてしまい、事件化を防ぎたいのであれば、早急に弁護士に相談し、示談交渉を進めていくことをおすすめします。強制わいせつ事件の示談交渉は、ベリーベスト法律事務所・神戸オフィスにお任せください。神戸オフィスの弁護士が全力でサポートします。

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