盗品の転売と窃盗罪の関係を解説! 盗品と知らなかった場合も捕まる?
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新型コロナウイルスの影響で品薄になっているマスクが、神戸市内の病院から大量に盗まれたというニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。盗んだマスクは自分が使うためではなく、転売目的の可能性もあり、兵庫県警が窃盗事件として捜査を進めているそうです。
盗むという行為自体は、犯罪であると容易に判断ができるでしょう。マスクの転売が違法となったことは記憶に新しいかもしれませんが、どのようなものであったとしても、転売は罪に問われるのでしょうか。
また、もし自分が販売した商品が盗品だった場合は、盗品だと知らなかったとしても、罪に問われる可能性があるのでしょうか。
この記事では、盗品の転売行為で問われる可能性のある罰則について、神戸オフィスの弁護士が解説します。転売行為自体にも注意点がありますので、あわせて確認してみましょう。
1、転売は違法? 該当する法律・条令とは
転売行為は、すべてが違法になるわけではありません。
あくまで法律に違反した場合のみ、処罰の対象となります。前述したマスクのように、法律で転売自体を禁止されているものもありますが、ルールを守り個人が楽しむ範囲で、オークションやフリマサービスを利用することは、何ら問題はありません。しっかりと、転売に関する法律知識をもっておくことが大切です。
まず、どのような転売が法律で禁止されているのか、罰則とあわせて確認していきましょう。
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(1)迷惑防止条例
兵庫県は、迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)を定めており、第5条で、入場券等の転売目的での入手や売却といったダフ屋行為を禁止しています。条例で定められていますので、違反した際には刑事罰に問われる可能性があります。罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
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(2)チケット不正転売禁止法
令和1年6月には、チケットを高額で転売することを規制する法律「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(通称、チケット不正転売禁止法)が施行されました。
芸術、芸能、スポーツイベントなどのチケットのうち、一定の要件を満たすものが対象です。違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、あるいはその両方が科されることになります。 -
(3)古物営業法
転売を営業行為として行った場合には、古物営業法違反に当たるおそれがあります。古物を営業として扱う場合には、管轄の都道府県公安委員会の許可が必要となるからです。
「古物」には、いわゆる中古品のほか、使用するために購入したものの使用しなかったものつまり実質新品の物品も含まれますので、注意が必要です。
無許可営業違反の罰則は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
2、盗品の転売は窃盗罪に当たるのか
商品を納品した者がその商品を盗んで入手していた場合には、その者が窃盗罪に問われるということはイメージがつくでしょう。窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
では、自身は窃盗行為をしておらず、あくまでも転売行為にのみ関わった場合は、どのように取り扱われるのでしょうか。
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(1)盗品だと知って転売すれば罪になる
売った商品が盗品だと知っていた場合は、刑法256条の盗品等関与罪に該当するおそれがあります。盗品の譲り受けや運搬、売買行為のあっせんなどをすると問われる罪です。
盗品を無償で譲り受けた場合の罰則は3年以下の懲役、有償で譲り受けた場合や、運搬、保管などの行為は10年以下の懲役および50万円以下の罰金です。
また、売る役割のみだったとしても、商品を盗み出す段階から窃盗の実行犯に協力したり犯行計画に関与したりしていたなどの事情がある場合には、窃盗罪の共犯として立件される可能性も否定できません。
さらに、転売目的であることを隠してチケットを購入する行為は、刑法の詐欺罪に当たるおそれもあります。
平成29年6月には兵庫県警が、人気アーティストの電子チケットを転売目的で購入した男に対し、全国で初めて詐欺罪を適用し逮捕しています。
詐欺罪の罰則は、10年以下の懲役です。 -
(2)盗品だと知らなかったら安心?
一方で、盗品だと全く知らずに購入したものを、適正な方法、価格で売った場合は、基本的に罪には問われません。
しかし、盗品だと聞かされていたわけではないものの、注意していれば盗品であることが容易に予測できたようなケースでは、「知らなかった」では通用しないことがあります。たとえば、「うまいもうけ話がある」などと聞かされていたような場合です。
バイトと称して、転売を依頼されているような場合も、捜査関係者から「なぜ売るだけでお金をもらえるバイトがあるのか疑問に思わなかったのか」と追及される可能性は否定できません。万が一取り調べを受ける事態になれば、本当に盗品だと知らなかったこと、盗品だと疑う余地もなかったことを、しっかりと伝える必要があります。
3、盗品の転売はどのように発覚するのか
盗品を、うまく転売したつもりでも、後日になって逮捕される可能性があります。
たとえば、依頼主の窃盗行為が発覚し、関係者として名前が浮上する、あるいは、買い取り業者や購入者個人が盗品だと気づいて通報するなどのケースが考えられます。
昨今では、窃盗の被害者がSNSなどを通じて被害状況を公開し、それを見た業者や購入者が気づいて通報するといったケースもあり得るところです。
4、逮捕されるおそれがあるときは弁護士へ相談を
盗品だと知らなかった場合でも、実際には盗品の転売に関与してしまったのであれば警察に事情を聞かれることがあるでしょう。
その際、「本当は盗品だと知っていたのではないか」「盗品であっても構わないと思って売ったのではないか」など厳しく追及される可能性があります。
取り調べを受けたときは、下手な言い訳やうそを述べず、しっかりと捜査に協力することが大切です。また、よく確認しないで、取り調べ調書にサインをすることも避けましょう。調書の内容によっては、不利に働くおそれがあるためです。
取り調べの対応は、事前に適切な方法を把握しているのか、把握していないのかで、その後の処分に大きな影響をおよぼします。
そのため、少しでも逮捕のリスクがあり不安に感じているのであれば、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが得策と言えます。
逮捕された場合は、最長で72時間にわたって、面会はもちろんのこと、外部と連絡することもできません。その期間、唯一面会できるのは、弁護士だけです。また、逮捕される前に相談しておけば、事前に取り調べの対応についてアドバイスを受けることも可能です。警察へ同行してもらうこともできるので、非常に心強いでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、転売行為を規制する法令や、盗品を転売したケースにおいて、該当するおそれのある罪や罰則を解説しました。転売行為は、正しい方法でおこなわなければ罪に問われる可能性があります。ましてや盗品を転売した場合は、窃盗などの罪に問われる可能性もある非常にリスクが高い行為です。
盗品の転売は、盗品である事実を知っていたかどうか、容易に気づくことができたかどうかが重要なポイントとなりますが、その主張を適切におこなうことは簡単ではありません。早いタイミングで弁護士に相談し、ご自身の行為が罪に問われる可能性があるのか、逮捕のおそれはどの程度あるのかといったアドバイスを受ける方が良いでしょう。
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