二世帯住宅の相続でトラブル発生! 二世帯住宅の相続での注意点とは?
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平成27年度に行われた国勢調査を元に神戸市が公開した情報によると、神戸市で三世代が同居している世帯数は1万6643でした。前回行われた調査(平成22年)の結果では1万9831だったので、3世代の同居世帯数は減少傾向にあるといえます。
二世帯住宅は、建設コストを低く抑えられることや親が孫の面倒を見てくれることなどのメリットがあります。しかし、二世帯住宅で相続が発生した場合、遺産の配分はどうなるのでしょうか。
たとえば、親が亡くなった後、複数の相続人がいたとしても、親が所有していた二世帯住宅を、同居していた兄弟姉妹に全て譲ってくれるのであれば、何の問題もないでしょう。しかし、同居をしていない他の相続人が相続権を主張してきた場合、土地と建物以外の財産がなければ、住んでいた家を売却せざるを得なくなる可能性があるのです。二世帯住宅を建てるときは賛成していたとしても、いざ相続となったときには起こりうる問題です。
そこで本コラムでは、二世帯住宅の相続に関するトラブルの対処法について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
1、二世帯住宅の相続方法
二世帯住宅は、所有形態によって違いがありますが、大きく分けて次の3パターンが考えられます。
土地建物全体について親または子どもの単独所有にしている場合
②共有
土地建物全体について親と子どもの共有にしている場合
③分割
土地建物を分割してそれぞれが単独所有
では、それぞれのパターンにおいて、相続がどのようになるのかを確認していきましょう。
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(1)単独所有
二世帯住宅の土地も建物も親の単独所有になっている場合は、親の不動産を相続人でどのように分配するかを考えることになります。
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(2)共有(共有登記)
二世帯住宅の土地と建物を、親と同居している子どもとで共有している場合、親の持分について相続が発生します。同居している子どもは自分の持分を確保することができますが、自己の相続分を超える他の相続人の持分を当然にもらえるというわけではありません。
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(3)分割(区分登記)
二世帯住宅を完全に分割して登記している場合、それぞれ別の所有なので、親の所有している部分についてのみ相続が発生します。たとえば、土地と1階を親が所有し、2階は子どもが所有しているなどのケースです。
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(4)相続税はどうなる?
相続税については、通常の相続と同様、基礎控除が適用されます。
基礎控除額の算出方法は、次の通りです。3000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人の数が3名であれば、3000万円+600万円×3人=4800万円となります。つまり、不動産の評価額が4800万円以内であれば相続税は発生しません。
なお、二世帯住宅の場合には、小規模宅地等の特例が使える場合があります。
小規模宅地等の特例とは、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、相続が開始する直前まで被相続人等の居住の用に供されていた宅地等がある場合は、一定の面積部分について、評価額を一定割合減額するというものです。
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の場合、330平方メートルまでの部分については80%の減額となります。ただし、建物の不動産登記が「区分所有登記」となっている場合には、小規模宅地等の特例の適用が受けられないので注意が必要です。
2、二世帯住宅の相続でトラブルになる理由
被相続人が保有する資産が二世帯住宅の不動産以外に多数あるのであれば、遺産分割において同居していた子どもが不動産を相続し、他の兄弟姉妹などはその他の財産を相続することが可能なので、問題は生じにくいと言えます。
それに対し、二世帯住宅の不動産以外に財産がない場合、同居人以外の相続人が相続権を主張し相続分を相続財産以外の財産をもって支払うことができなければ、自宅を売却するなどする必要が生じます。
二世帯住宅にする場合は、兄弟姉妹などにも相談するのが一般的ですが、親と同居してくれる兄弟姉妹がいることは安心なので、反対されることはほとんどないと思います。ところが相続という場面になると、一転してトラブルになってしまうことも少なくありません。
不動産の所有形態がどのようになっているのかよっても変わってきますが、たとえば建物が子どもの名義で土地が親名義という場合、土地以外に相続財産がないと土地が同居人以外の相続人と共有になってしまうので、持分の買い取りを求められたり、賃料の支払いを求められたりする可能性があるでしょう。
3、二世帯住宅を相続したときの対処法
では、二世帯住宅を相続するにあたり、トラブルにならないようにするためには、どのような対処法が考えられるのでしょうか。相続開始前と、相続開始後に分けてみていきます。
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(1)相続開始前
①遺言
遺言がない場合、遺産は法定相続分に従っていったん共有財産となり、相続人全員で遺産分割協議を行った上で配分を決めることになることが多いでしょう。
同居している子どもに、二世帯住宅の不動産を相続させたい場合は、遺言書にその旨を記載しておく必要があります。ただ、その場合でも他の法定相続人の遺留分(相続人の最低限の取り分)を考慮する必要があります。
②保険に加入する
不動産以外に財産がない場合は、保険に加入し同居していない子どもを保険金受取人にするという方法が検討できます。
生命保険の死亡保険金は、原則として遺産には含まれません。この場合、同居していない子どもが確実に金銭を得られるので、同居していない子どもがある程度満足することで、相続トラブルを防止することが出来るかもしれません。ただし、この場合の死亡保険金は、原則として遺産に含まれないため、これだけでは遺留分に関するトラブルを未然に防止することができない可能性があります。
なお、死亡保険金の受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が、民法第903条の趣旨に照らし、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象とされ、死亡保険金が遺産とみなされる場合があります(最決 平成16年10月29日)。
しかし、共同相続人間の不公平が、民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しい場合というのが、どの様な場合を指すのかは必ずしも判然としませんので、同居していない子どもを死亡保険金の受取人に指定することは、遺留分に関するトラブルを未然に防止する直接的な解決策とはならない場合が多いことを理解しておく必要があります。
生命保険を活用する場合は、受取人を二世帯住宅に同居している子どもにし、受け取った死亡保険金から、遺留分を捻出するという方法も検討できるでしょう。不動産以外の財産の有無や、家族の関係などを考慮した上で検討することが重要です。 -
(2)相続開始後
①二世帯住宅の売却
相続開始後に二世帯住宅を維持する必要がなければ、不動産を売却して現金化し、相続人間で配分するという方法を検討できます。新たに家を探す必要はありますが、二世帯住宅に一世帯で住むのは無駄が多いというデメリットもあるので、売却するのもひとつの選択です。
現金化することによって価値が明確になり、配分もスムーズに進むことが期待できます。
②代償分割
二世帯住宅に同居していない子どもが相続権を主張しているものの、二世帯住宅は手放したくないという場合には、代償分割という方法があります。
代償分割とは、たとえば兄弟2人が相続人という場合に、1人が不動産を相続し、不動産を相続した相続人がもう1人の相続人に、不動産価格の半分に相当する金銭を支払うというものです。二世帯住宅は4000万円の価値があり、相続人が2人だったという例で考えてみると、一方が二世帯住宅を取得するかわり、取得しなかった相続人に対して2000万円の代償金を支払うことになります。
相続人の1人が不動産を欲しがり、残りの相続人は相続分の金銭をもらえればよい、という場合に有効な手段です。
4、共同名義にするのは避けたほうがよい?
不動産以外に財産がないものの、二世帯住宅を手放したくない場合や、話し合いがまとまらない場合、取りあえず共有名義にして相続すればよい、と考えるかもしれません。しかし、一般的に不動産を共有名義にすることは、権利関係を複雑にするので避けるべきと言えます。
不動産を共有名義にすることで、遺産分割はスムーズに進むことが期待できるでしょう。しかし、不動産を共有名義にしてしまうと、さまざまな不都合が生じる可能性があります。たとえば、リフォームをしようとした場合、住んでいる人の一存では決めることができず、共有持分権の過半数の同意が必要になります。また、売却に関しては、全員の同意が必要です。
兄弟姉妹の間であれば、これらの問題は話し合いで解決できるかもしれません。しかし、時が経過し、それぞれの生活が変化した場合や経済状況に差が生じた場合は、トラブルにつながる可能性は高くなります。また、兄弟姉妹が亡くなり相続が発生すると、共有部分はおいやめいの名義となり、利害関係はさらに複雑になるおそれがあります。
5、まとめ
本コラムでは、二世帯住宅と相続の関係について解説しました。
二世帯住宅は相続税において小規模宅地の特例が使える場合があるので、不動産価格が高い場合には有効な節税対策となります。また、家族関係が希薄になっているといわれる昨今において、親が孫の世話をしてくれることや、親に何かあったときに子どもが介護をできる環境であることは望ましい環境とも言えます。
しかし、相続が発生した際には、トラブルになるケースも少なくありません。親が健在の時点で、相続対策を講じておくのが一番ですが、相続が発生しトラブルに発展してしまった場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスには、相続トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しています。また、ベリーベストグループには税理士も在籍していますので、法律上の問題はもちろん、相続税などについてもワンストップで対応することができます。
相続について相談したい場合や、相続でトラブルになっていてお悩みの場合は、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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