相続財産の調査で要注意! 通帳開示請求とは
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2022年4月の神戸市内における死亡者数は、1444人でした。
親族が亡くなって相続が発生した場合、相続人の間で遺産分割を行うことになります。また、遺産分割を正しく行うためには、残された遺産を漏れなく把握することが必要です。
遺産のうち預貯金については、「通帳開示請求」を行うことで把握できます。被相続人の遺品のなかに含まれている通帳などを基にして、すべての金融機関に対して通帳開示請求を行い、遺産である預貯金の網羅的な把握に努めましょう。
本コラムでは、相続手続きにおける「通帳開示請求」の概要や必要書類について、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスの弁護士が解説します。
1、相続時の通帳開示請求とは
亡くなられた被相続人の預貯金債権は、共同相続人が相続します。
各共同相続人は、相続した預貯金契約上の地位に基づいて、被相続人名義の預貯金口座について「通帳開示請求」を行うことができます。
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(1)相続財産を把握するため、取引経過の開示を請求できる
「通帳開示請求」とは、被相続人名義の預貯金口座の取引経過(取引履歴・入出金履歴)に関する情報の開示を請求することです。
被相続人が亡くなった時点での預貯金残高は、その全額が相続の対象となります(民法第896条)。
預貯金口座の入出金履歴を見れば、被相続人の死亡時時点での残高がわかります。
また、相続発生の前後において、一部の相続人が被相続人名義の預貯金を使い込んでいるケースもよく見られます。
預貯金口座の入出金履歴を確認すると、相続人による使い込みを発見できる可能性があります。
このような理由から、遺産分割協議などを行う前提として、被相続人の有する預貯金口座のすべてについて、通帳開示請求を行うことが必要となるのです。 -
(2)通帳開示請求は各相続人が単独で行うことができる
個人情報保護の関係上、通帳開示請求を行うことができるのは、本来、金融機関と預貯金契約を締結している本人のみです。
しかし、相続が発生すると、被相続人の預貯金契約上の地位は、共同相続人全員に帰属すると考えられており、そのため、相続開始以降は各共同相続人が単独で通帳開示請求を行うことができます(最高裁平成21年1月22日判決)。
この判例で、最高裁は、「金融機関が預金契約に基づき、預金者の求めに応じて取引経過を開示すべき義務を負う」という前提を示しました。
そのうえで、民法における以下の条文を根拠としながら、共同相続人の単独による通帳開示請求が認められたのです。
(準共有)
第二百六十四条 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
預金契約上の地位は「所有権以外の財産権」にあたるため、共同相続人は預金契約上の地位を「準共有」する状態にあります(民法第264条)。
そして民法第252条の但し書きでは、保存行為は各(準)共有者が(単独で)行うことができる、と定められています。
最高裁は、預金口座の通帳開示請求を保存行為と位置付けて、各共同相続人が単独で行うことができると判示しました。
通帳開示請求には「正しい形で遺産分割を行う」「一部の相続人による預貯金の使い込みを防止する」「過去に行われた使い込みの被害を回復する」といった目的があります。
最高裁は、これらの目的を考慮したうえで、通帳開示請求が保存行為にあたると解釈したものと考えられます。
2、通帳開示請求に必要な資料等
通帳開示請求を行うためには、被相続人が死亡したことと、請求者が相続人であることを証明する必要があります。
したがって、通帳開示請求を行う際には、主に以下の書類を提出することが求められるのです。
- 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)
- 請求者と被相続人の続柄がわかる戸籍謄本(除籍謄本)
- 請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
具体的な必要書類については金融機関によって異なるため、各金融機関の窓口でご確認ください。
3、預貯金以外の相続財産を調査する方法
遺産分割を正しく行うためには、預貯金以外の相続財産についても、漏れなく調査して把握する必要があります。
特に不動産・金融資産・債務については、遺産額に大きな影響を与える可能性があるため、以下の方法を用いて徹底的に調査しましょう。
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(1)不動産の調査方法
遺産に含まれる不動産の情報を把握するには、まず不動産の所在地を突き止める必要があります。
遺品に以下の書類などが含まれていれば、その内容を基に不動産の所在地を確認しましょう。
- 権利証
- 登記識別情報通知書
- 固定資産税に関する書類
- 不動産売買契約書
- 不動産賃貸借契約書
また、市区町村では「名寄帳」が作成・保管されています。
名寄帳とは、固定資産税の課税対象である土地・家屋を、所有者ごとにまとめた一覧表です。
遺産に含まれる不動産が所在すると思われる市区町村や、被相続人に縁のある市区町村に対して名寄帳の写しの交付を申請してみましょう。 -
(2)金融資産(株式など)の調査方法
投資に関心の深かった被相続人であれば、株式・債券・投資信託・REITなどの金融資産を保有していた可能性があります。
上場金融資産であれば、証券会社の証券口座に保管されています。
遺品中に証券会社からの郵便物があれば、その内容を確認すれば、被相続人が口座を持っていたかどうかがわかる可能性があります。
一方、未公開株式などの非上場金融資産については、被相続人の遺品を頼りにしながら出資先に連絡を取って調べる、といった方法しかないのが実情です。 -
(3)債務(借金など)の調査方法
被相続人が借金などの債務を負っていた場合、債務についても相続の方法を決める必要があるほか、場合によっては相続放棄を検討しなければなりません。
特に相続放棄は、原則として相続の開始を知ってから3カ月以内に行う必要があるため(民法第915条第1項)、債務の調査は速やかに行うことが求められます。
まずは、借金に関する契約書や請求書などが遺産のなかに含まれていないかを確認して、もし含まれていたら債権者に連絡を取りましょう。
また、預貯金口座の入出金履歴を確認すれば、借金の存在や返済状況などを把握できる可能性があります。
4、財産調査が完了した後の相続手続きの流れ
相続財産の調査が完了したら、各相続人が実際に遺産を取得する手続きに移ります。
法的な問題が起きないように、以下の手順で手続きを行いながら、遺産相続を完了させましょう。
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(1)遺言執行
遺言書がある場合には、まずその内容に従って遺産を分けます。
遺言執行は原則として、共同相続人と受遺者が全員で行います。
ただし、遺言によって遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者が一人で遺言執行に関する事務を行うことになります。 -
(2)遺産分割協議
遺言書がない場合や、遺言で相続・遺贈先が指定されていない遺産がある場合には、遺産分割協議によって遺産の分け方を決定します。
遺産分割協議には、相続人と包括受遺者が全員参加しなければなりません。
一人でも欠けていると、遺産分割が無効となってしまう点に注意してください。
遺産分割について合意が成立したら、その内容を遺産分割協議書にまとめて、参加者全員で締結します。
一方、遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停・審判を経て遺産分割の方法を決めることになるのです。 -
(3)相続財産の名義変更
遺言書または遺産分割協議によって決まった遺産の配分に従い、実際に遺産の名義を被相続人から相続人へと変更します。
名義変更が必要な遺産は、預貯金・不動産・金融資産・債務などです。
それぞれ以下の機関等に連絡して、名義変更の手続きを行ってください。
遺産の種類 名義変更の申請先 預貯金 銀行 不動産 法務局 金融資産 証券会社 債務 債権者(銀行・貸金業者・取引先など) -
(4)相続税の申告・納付
相続財産の総額が基礎控除額を超えている場合、相続税の申告・納付が必要になる可能性があります。
基礎控除額の計算式は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
相続税申告にあたっては、膨大な分量の書類を作成して、提出しなければなりません。
また、相続税計算に関する税法のルールもかなり複雑です。
専門的な知識に基づいて税額を計算しなければ、後で追徴課税を受けたり、相続税を払い過ぎてしまったりする事態になるおそれがあるのです。
ベリーベスト法律事務所グループには税理士も在籍しており、遺産分割などと併せて、相続税申告についてもワンストップで対応しております。
相続の問題について、法律的な手続きと税務的な手続きの両方に対応できますので、お気軽にご相談ください。
5、まとめ
親族が亡くなって相続が発生したら、通帳開示請求を行って、被相続人の有した預貯金の残高や取引履歴を確認しましょう。
通帳開示請求は、各共同相続人が単独で行うことができます。
また、遺産分割を正しく行うには、預貯金以外にも不動産・株式・債務など、すべての遺産を網羅的に把握することが重要です。
ベリーベスト法律事務所は、遺産の調査から遺産分割協議・相続税申告まで、税理士とも連携のうえで、相続手続きを総合的にサポートいたします。
神戸市で遺産相続に関するお悩みをお持ちの方は、ベリーベスト法律事務所 神戸オフィスまで、お気軽にご連絡ください。
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