後妻の子どもの相続権について知りたい! 先妻の子どもとの相続関係は?
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相続に伴って生じる問題にはいろいろなものがあります。中でも離婚した両親が再婚をしていた場合は、先妻と後妻、およびその子どもたちの立場が絡むため、少々複雑となるでしょう。厚生労働省の「人口動態調査」によれば、兵庫県神戸市の離婚件数は平成30年末時点で2598件にも上っており、そうした相続トラブルも少なくないと考えられます。
離婚して再婚した実父が亡くなった場合、先妻の子どもが長男だというケースではどうすべきなのか、後妻やその子どもとの相続関係はどうなるのか、気になる方もいるでしょう。今回は、後妻がいる場合における相続についての疑問に、神戸オフィスの弁護士が回答します。
1、相続権は誰にあるのか
民法上、相続の場面において登場する「被相続人」とは死亡した人を指します。「相続人」とは、「被相続人」の死亡により、「被相続人」の財産を相続する人のことを指します。なお、財産にはマイナスの財産もプラスの財産も含まれます。
具体例として、被相続人が生前2回結婚をしていて、それぞれ子どもがいた場合における、子どもの相続件について解説します。
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(1)先妻、後妻と子どもの相続権
最初にまず知っておいていただきたいことは、被相続人と血を分けた子どもの相続権は、基本的には失われないということです。
親が離婚をしても、再婚をしても、血のつながりがある限り親子である事実は変わらないことはご存じのとおりです。したがって、後妻がいる場合でもいない場合でも、離婚した後に親権者とならなかった親が他界した場合でも、すべての実子には相続権があるといえます。
ここに、後妻の子どもかどうかという視点は一切関係ありません。先妻と後妻(以下、先夫と後夫を含みます)の子どもにとっての実父が亡くなった場合、双方とも相続権があります。
もし、後妻の子どもがいわゆる連れ子であり、亡くなった被相続人との血のつながりがない場合は相続権がありません。ただし、実父と後妻の連れ子が養子縁組をしており、実父と後妻の連れ子が戸籍上の親子となっている場合は、相続権があります。 -
(2)原則としての法定相続分
民法第900条以降には、相続人が相続をする場合の割合について、原則が定められています。民法第900条第1項の規定をみると、子どもと配偶者が相続人であった場合の相続分(相続割合)はそれぞれ2分の1です。
まず、配偶者は、2分の1の割合で相続をします。残りの2分の1を、子どもが相続します。
たとえば1000万円の遺産があり、子どもが1人だった場合は、配偶者と子どもが500万円ずつ相続します。子どもが2人だった場合は相続分が等しくなるので、配偶者が500万円、子どもが250万円ずつとなります。
離婚や再婚がないケースでは、遺言で例外を指定しない限り、以上のように相続されます。 -
(3)離婚した場合
離婚した場合、夫婦は離婚により完全な他人となるため、元夫や元妻が亡くなっても、元配偶者には相続権はありません。
ただし、前述したように、親子関係は夫婦関係と異なります。両親が離婚したところで、子どもとのつながりは失われません。したがって、被相続人の子どもは相変わらず相続権を有します。 -
(4)再婚した場合
再婚した場合、離婚した配偶者(妻)は先妻という位置づけになります。そこで先妻と後妻、およびその子どもとの相続関係が複雑な問題になるケースは多々あります。
繰り返しになりますが、再婚をしていようがいなかろうが、先妻が離婚により他人となることに変わりはないため、相続権はありません。しかし、先妻の子ども(血縁関係がある場合)は離婚に影響されず、相続権を有します。
次に、後妻は相続の開始時点での配偶者、つまり法定相続人ですから、当然相続権を有します。また、後妻の子どもが実父と血縁関係にある場合、もしくは連れ子であっても養子縁組をした場合は、やはり相続権を有します。
整理すると、実父が亡くなった場合に遺産の相続権を有するのは、先妻の子ども、後妻、後妻の子どもという3名になります。
2、遺言書と遺留分侵害額請求
相続が法律で定められた相続権の有無だけですべてが決まり、相続人全員が合意すれば、トラブルは生じません。よくある問題として、故人が遺言に「後妻(後妻の子ども)にすべての財産を譲る」と記していたケースがあります。
このような場合、先妻の子どもは遺産を相続できないのでしょうか? 以下に詳しくみていきます。
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(1)最低限相続できる「遺留分」とは
故人は遺言という形で、自分の意思を死後に実現することができます。ただ、故人の意思は本人に確かめられず、また生者の意思との兼ね合いもあることなどから、遺言として有効になる内容は法律に定められた事柄に限定されています。
相続分についても遺言だけですべてが決められるわけではなく、遺留分というものが民法1042条で定められています。
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹や甥姪を除く法定相続人に対して認められる、相続財産における一定の割合のことです。相続人の期待や生活保障といった理由により、最低限の相続財産は確保されるように法律が定めています。この遺留分の範囲を超える遺言は、遺留分の侵害となり認められません。
先妻の子どもにも、この遺留分があるため、たとえ実父が「後妻にすべての財産を譲る」との遺言をしても、一定の割合での財産は相続できます。 -
(2)遺留分を請求するには
遺留分を請求することを、遺留分侵害額請求といいます。特別な手続きが必要なものではなく、遺留分侵害額請求を行うという意思を相手方(この場合は後妻)に示せば足ります。ただし、口で意思表示をしただけでは争いとなった場合に証明することができないため、内容証明郵便などによって示しておくことをおすすめします。
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(3)遺留分の計算方法
遺留分の割合は、民法1042条第1項で直系尊属(親や祖父母など)だけが法定相続人なら、相続財産の3分の1、それ以外は2分の1と定められています。
遺留分を計算する基礎となる相続財産は、相続開始時(被相続人が亡くなった時点)で有していた財産に、生前贈与などで失われた額を加え、債務を差し引いたものとなります。
たとえば相続財産が3000万円で、相続人が先妻の子ども、後妻、後妻の子どもの3名だとしましょう。遺留分の割合は全部で2分の1なので1500万円となり、さらにそれぞれの法定相続分の割合を掛け合わせます。
配偶者は2分の1なので750万円、先妻の子どもと後妻の子どもは共に子どもなので4分の1ずつとなり、最終的に375万円が先妻の子どもの遺留分となります。
3、相続と隠し財産
さて、いくら先妻や後妻の子どもであるあなた自身にも相続権や遺留分があるといっても、実父と疎遠だった場合、財産総額がわからないことも多いでしょう。
被相続人と身近な地位にあった後妻のほうが、遺産について詳しく、生前贈与なども受けているかもしれません。そういった場合には、他にも自分が知らない隠された財産がないかどうか注意を払う必要があります。
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(1)「隠し財産」とは?
「隠し財産」などというと、あえて隠しておいた財産と思われがちですが、現実には隠す意図がなくても隠れてしまうケースが多くあります。
たとえば被相続人が亡くなる前に、病院代や交通費、葬儀代などを賄う目的で被相続人の預金口座からお金を引き出しておくことは珍しくありません。あるいは、お世話になった相手へ被相続人が生前贈与をしていて、それに気づかなかったということもあるでしょう。
悪気がなくとも、このように財産が目録に表れずに隠れてしまう場合があるため、きちんと調査をしておきましょう。 -
(2)相続で問題が起きたら弁護士に相談を!
どのように遺産を分けるかについては、遺言書に書かれている場合もありますし、相続人同士で話し合い(遺産分割協議)をして決める場合もあります。少なくとも、法定相続人を1人でも欠いた遺産分割は原則として無効ですので、相続があったことを知らなくとも連絡がくるはずです。
いずれにしても、相続は実際の手続きをする前に何らかの話し合いを必要とすることがほとんどですし、金銭が絡むことなのでトラブルも起こりやすくなります。
このため、後妻やその子どもとの関係性を悪化させないように、相続トラブルが起こりそうな場合はあらかじめ弁護士に相談し、スムーズな相続を実現させるとよいでしょう。
4、まとめ
ご両親が離婚し、再婚していたというケースでは、後妻にあたる方やその子ども同士で面識がないことも珍しくありません。そうした中で相続問題が発生すると、すれ違いや不信感が生まれて深刻なトラブルになる場合もあります。また、遺留分を請求するにも最短で1年間の時効があるなど、相続手続き上の難しい問題も存在します。
遺産相続に関してお困りの方は、ぜひベリーベスト法律事務所 神戸オフィスまでお気軽にご相談ください。遺産分割協議への同席や各種手続きの代行など、相続問題の経験豊富な弁護士がサポートをします。
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